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57 アベリア暗殺計画

  晩餐会で激しくショックを受けたアベリアは早々に会場を後にして貴賓室に引き篭もった。

 例え聖教会の監視役だったとしてもブラド神官と魔導師ドミニクは幼い頃から自分をサポートしてくれた大事な仲間だったのだ。…まさか処刑されるほどの責任を負わされるとは思わなかった。こんな事ならあの二人も一緒に魔王国に連れて行けば良かった。アベリアは泣いてマーサさんにすがりつきながら言うのだ。

 マーサさんは黙って静かにアベリアを撫でている。

 俺はゆっくり眠れるようにホットミルクを入れる。


 正直俺の怒りは爆発寸前である。悪逆非道な聖教会の司祭長の所業や戦争しか考えなかったこの国のクズ共に対する怒り、ではない。


 俺の妹を泣かせた。


 俺の妹を悲しませた奴は万死に値するのだ。

 いわゆる某闘う女児アニメの◯ュアメ◯ディ言うところの『絶対許さない‼︎』略して『絶許』である。


 俺とカナコとマーサさんはアベリアを寝かせて貴賓室から出た。



==============


 あの顔。いい絶望の瞳だった。まだまだもっと絶望の中で殺したい。


 ワイングラスを燻らしながらアベリアの表情を思い出し悦に入る司祭長。


 司祭長が【転移門】を開いてここにやって来た時はこの土地に国などまだなかった。現地の知的生命体が里ごとにバラバラにその日暮らしをしていた、この世界に来たのは失敗した、と思った。とにかく生命体の数が点々と散ってしかも数が少ない。

 好き勝手に蹂躙するにはカタルシスがないのだ。だからとにかく生命体を増やす事にした。獣人は匂いで司祭長が異質なのか判るらしくことごとく嫌われるので凡庸だが群れたがる人間種を集めて村を作った。農耕を教え狩猟を手引きし織物産業を起こし、行政組織が育ち支配階級が生まれやがて国が出来た。

 そうなると司祭長の独壇場である。好きなようにランダムに国民にストレスを加え恐怖や絶望を与え続けた。大量には殺さずチクリチクリと自分の快楽の為に好き勝手に不幸をばら撒いて来たのだ。

 【転移者】が全てこの様な邪悪な存在という訳ではない。ただ悪意を持った者も転移して来る、というだけだ。聖王国が建国された土地にやって来たこの男が飛び切り邪悪であった、不幸な偶然であるだけなのだ。



 「収穫の時間だ」


 アベリアが王都に入って5日目。司祭長が行動を起こした。昼間に王妃主宰のお茶会が開かれた。普段はお付きの侍女からしか飲み物・食べ物を摂らなかったアベリアだったが初めてそれ以外を口にする機会が訪れたのだ。それを司祭長は見逃さなかった。王妃の侍女を操りお茶に催眠効果のある魔法薬を混入させたのだ。


 深夜、操られたアベリアは貴賓室を抜け出し、迎えに来た教会からの侵入者達に連れられて王宮を出る。

 お付きの者どもの部屋には催眠魔法が発動しているので朝まで気が付かない。


 そして聖教会内部の自室でグラスを燻らす司祭長。横にある大聖堂はユートに破壊されて未だ再建中である。苦々しく大聖堂を横目に見るがやって来た催眠状態のアベリアを目にしてほくそ笑む。


「よく帰って来た私の下僕よ。私の最大の楽しみ、戦争を台無しにした報いをこれから受けて貰おう」


 アベリアを椅子に拘束させた後人払いをする。そしてアベリアの催眠を解いた。椅子に縛り付けられて動けないアベリア。目の前の司祭長を見るなり暴れるが椅子が横倒しになり更に動けなくなる。


「私の可愛い勇者よ。お前はじゃじゃ馬で何一つ言う事を聞く様な奴ではなかったが最期に私の役に立って貰うぞ」


 人間の絶望・恐怖が自分のご馳走。司祭長は人間に絶望を与える方法を熟知していた。まずは見たルックス

 司祭長の首がゴキリと音を立てて曲がる。曲がってはいけない方向まで曲がる。ヒッと思わず悲鳴を上げるアベリア。全身をゴキゴキ音を立てながら黒い体毛を纏いながら膨れ上がっていく司祭長。既に人間ではなかった。黒い巨大な角が生え、牙が生え、羽根が生える。人が物語上で想像するいわゆる【悪魔】の姿。これこそが人類に絶望と恐怖を与えるには最も適している姿だと経験で学んだのだ。


 さあ泣け!喚け!助けを求め命乞いをしろ‼︎その絶望の中お前を八つ裂きにしてしかばねを王宮広場に晒してやろう‼︎

 ニヤつきながらアベリアに顔を近づける【悪魔】になった司祭長。

 アベリアの恐怖に打ち震える眼が早く見たかった。



 アベリアは笑っていた。

 笑いを押し殺していた。何だ?もう気が違ってしまったのか?早過ぎるぞ⁉︎


「ようやく姿を現したな化け物!この時を待っていた‼︎」


 台詞と共に四方八方からドローンが司祭長にライトを当てる。


「な、何⁉︎」


 すると何も無い空間に光が一閃し、アベリアの拘束具を切り刻んだ。立ち上がるアベリア。その後ろに隠遁魔法で姿を隠していたマーサとユートが現れる。


 憎き裏切り者の前勇者と大聖堂を破壊したハイエルフ。誰よりもぶちのめしたい三人を眼の前にして司祭長は歓びに打ち震え悪魔の咆哮を上げる。雄叫びは教会内に響き渡り教会内の神官、下僕達は大恐慌を起こす。知った事か!お前達も巻き添えだ‼︎


 さあ殺してやるぞ‼︎ 勇者親娘にハイエルフよ‼︎

【悪魔】神官長に内包する魔力が膨れ上がって教会全体を包み込んだ。


「真のパーティーの始まりだ‼︎」

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