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55 笑う司祭長

コロナ騒動が早く終りますように。皆様の健康をお祈りします。

 勇者アベリアがマービンに到着したとの知らせに盛り上がる聖王都市民とは裏腹に未だに王宮の一部と聖教会は戸惑いを隠せないでいた。

 彼らは元々勇者を尖兵に魔王国に戦争を吹っかけるのが目的だった。では戦争を仕掛ける理由は?王宮の連中は豊かな魔王国土への憧れ。富の掠奪であったが

聖教会は違った。彼らの目的は虐殺。ただひたすら臣民を虐殺する事だったのである。




 その為に数百年かけてじわじわとこの国を支配して来た。人間種に差別意識を植え付け自分達以外の種族の人類を迫害し虐殺するように仕向けて来たのに。

 てかさ。戦争が欲しいの。戦争が。大人数がさ、殺し合うでしょ?ぶっちゃけ死ぬなら獣人だろうが人間だろうが構わないの。何十年か振りのパーリィチャンスだったのに。

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああムカつくムカつくムカつくうううううう‼︎‼︎

 どうしたらここから大虐殺に持っていける?考えろ私。どうしたら希望を絶望の渦に変えられる?…やはりそうだねアレだね…勇者アベリアを惨殺するしかないか。惨たらしく殺して魔王国の仕業に仕立てる。さすれば憎しみの連鎖の完成だ。うんそうだ。そうしよう。


 延々と独り言を繰り返していた司祭長が歪んだ笑顔でもう動かない自室の【転移門】を撫で回していた。





 さて、第三王子の話によると俺達の地味な補給潰しによって王国軍派兵計画を潰された王弟一派は軍予算の食い潰しの責任を追求され今のところ大人しいようだ。だが、表面的には勇者アベリアの功績も勇者計画を推していた王弟一派や聖教会の物であるので勇者が勝手に行った和平に表立って文句が言えない、手が出ないという状況らしい。

 彼らとしては勇者アベリアを持ち上げてその威光を国の運営に利用するのが最善だと結論付けたようだ。

 少なくとも王弟派がアベリアの生命を狙うという事は無さそうだ。

 読めないのが聖教会である。何しろ前回大聖堂を破壊して去っているからなぁ。下手な挑発をしてしまって後悔している。敵の怒りの程度が読み取れない。ましてや司祭長が想像通りの人物であれば…沸点が何処にあるか判らない。危険過ぎる。


 一抹の不安もはらみながらマービンから聖王都に向けて勇者アベリア凱旋パレードが始まった。


 山車型の電動バスにアベリアとサークライ、マーサさん、第三王子と人間体の俺が乗り、前後を聖王国の護衛魔獣車が陣取る。後ろに聖王国の楽隊が続き、その後を歩兵がぞろぞろと歩く。

 魔王国で用意していた演出や音楽機器は慣れていない魔獣を驚かせる危険があるので王子に自粛を要請された。仕方ないネ。安全第一。


 間の人のいる集落では何処も大歓迎だった。

 本当に市民に大人気だなアベリア。そうアベリアに言うと恥ずかしそうに俯いてしまった。マーサさんが後ろから抱きしめる。うむ可愛い。


 パレードは無事聖王都グローザムに入った。王都民も大歓迎してくれた。山車の上には獣人は乗っていないので表面的なものかも知れないが。パレードは王宮前広場が終点でそこで勇者アベリアの帰還挨拶、王子による花束贈呈などを経てようやく王宮内へと案内された。

 王との謁見である。王は第三王子派なので当たりは柔らかい。柔らか過ぎて気が弱そうでこりゃ実権無さそうな王様だな、と感じた。てかどう見ても実務は隣で堂々と立っている王弟と第一王子っぽい。オーラが違う。そして。

 和かな微笑みを浮かべアベリアを迎える司祭長が居た。


「お帰り私の勇者。よくぞ使命を果たし戻って来たね。」


 無言で頷いて見せるアベリア。最も口も聞きたくない相手だろうが耐えてるのがわかる。


「魔王国使節団の皆も良くいらした。歓迎しますぞ。今宵は王主催の晩餐会があります。それまでは来賓の間にてお寛ぎを」


 王の宣言により謁見は終わり一堂は夜まで休む事となった。


 アベリアにも特別室が当てられた。ぐったりとベッドに雪崩れ込むアベリア。その頭を優しく撫でているマーサさん。俺もマーサさんの助手の体で部屋に入り込んでいる。部屋付きのお世話係はアベリアが小さい頃から身の周りのお世話をしている教会所属の巫女であるらしい。

 アベリアは気になっている事をお世話係の女性に聞いてみる。


「ブラド神官とドミニクは…元気にしてるかな?あの時は二人を振り切って一人で魔王国に行ってしまったから…謝らないと…」


 ブラドとドミニクとはアベリアのお付きの戦士…パーティーを組んでいた神官と魔道士だ。雪山で振り切って以来そのまま別れていたから気になっていたのだろう。

 お世話係は一瞬戸惑ったのを俺は見逃さなかった。


「え、ええ。お変わりないようですよ」


 曖昧な答えが返って来る。アベリアはちょっとホッとしている。

 それからそれぞれ晩餐会用のイブニングに着替えて晩餐会に出席した。貴族・軍属が多数いたので立食形式となっていた。助かる。事前にアベリアには会場の食物は口にしないよう言ってある。飲み食いできる物は俺が【ボックス】から提供する事にしている。もちろん使節団全員分だ。


 アベリアは会場を見渡すがブラドとドミニクの姿は見当たらない。もしかして彼らはペナルティでも受けているのではないか、とアベリアは思ったようだ。


 会場には相変わらずニヤついた笑いの司祭長がいたのでアベリアは思い切って聞いてみる事にした。俺もついて行く。


「司祭長様。ブラドとドミニクの姿が見当たらないようですが…彼らは何処に?一言謝りたいのですが…」

「ん?…ククク。もう無理ですよ。彼らには失態の責任を取ってもらいましたから」


「…え?」


「二人とも恐怖に震えながら貴女への怨みを募らせて死んで行きましたよ。可哀想にね。ククク。あははははははははははははははははは」


 目の前が真っ暗になり倒れそうになるアベリア。後ろで俺が支える。

 その前て心底嬉しそうに歪んだ笑顔を見せる司祭長。

 間違いない。こいつが【悪魔】だ。


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