51 パパとお出かけ
という訳で親父とおでかけする事になった。
家族のみんなが何で親父が外出するのを恐れるかというと、親父が自分用の【携帯転移門】を持っているからなのです。
常識としてはある程度の広さの空間の床面に細かい術式をびっしり描き込んであるのが【転移門】なのだが、それを親父とサークライ、サークライのお師匠様の大魔導王が持ち運べるほどコンパクトにしたそうな。
寮の庭、芝生に出て親父がオリハルコン銃にカートリッジを詰める。カートリッジには体育館程の広さに描かれた転移術式が収納されているそうだ。
銃を足元に向けて放つと光が地面に魔法陣を描きながら走る。なんか昔のアニメで見た光景だぞコレ。BG BGMは田◯公平が合いそうだ。
畳半畳程の光の魔法陣が出来上がる。
「じゃちょっと行って来るよ。晩飯までには戻る。」
俺の腕を掴んで親父と魔法陣に乗る。
次に見えた風景は何処かの洞窟。というか洞窟タイプのダンジョンか?来た事ないダンジョンだ。既に最下層なのだろうか?ラスボス部屋っぽい雰囲気。祭壇があり燭台に炎が灯っている。
「あの祭壇の上を見てみろ。」
祭壇に登る。古い魔法陣が砕かれている。転移門かこれ?
「俺がこの世界に最初に飛ばされて来た場所だ。この転移門は【召喚門】と呼ばれるタイプ。起動させると何処からか何がを召喚する。ランダムにな。」
ランダム。じゃあ親父は本当に偶然にここに召喚されたのか。俺みたいに実は半分エルフ、みたいな事もなく。本人の意思とは無関係に。
「きっかけはグリュ。お前の母ちゃんがな、このダンジョンを一人で攻略したんだ。でボスを倒して宝箱でもあるんじゃないかと祭壇の装置…魔法陣を起動させたんだな。…だがそれはたちの悪いトラップだったって訳だ。次行くぞ。」
そう言ってまた銃で【転移門】を作り潜る。
次の場所は草原。見た事のない風景だ。なんか空気が違う。もしかすると魔大陸ではない気がする。
「なんとなくわかったか? ここはこの惑星の北半球にある【ゴルディア大陸】の騎馬獣人国家【ドンヨル】の草原地帯だ。【転移門】カートリッジにはもう一つの魔術を付与してあってな。仕掛けられた古い【転移門】を探しては自動的にそこに転移してくれる。ちょっとそこらを探して見ろ。」
俺は風の探知魔法で周りを調べる。草原の中に人工的な柱を何本か見つける。そこを見ると…あった。魔法陣が描かれた石畳を見つけた。しかも壊れていない。魔力を通せば今にも起動するヤツだ。
「…これを壊せばいいんだな?親父‼︎」
俺は石畳を砕こうと土魔法で岩礫を放った。
「バカ‼︎早まるな‼︎魔力を使った攻撃をすると…」
魔法陣は俺の土魔法の魔力の流れを感知した。魔力を感知すると魔法陣は作動する。しまった、【転移門】が起動してしまった‼︎ こんな事で動いてしまうなんて‼︎
光り輝き何がが転移して来る。これは【召喚門】のようだ。
光が収まるとそこには身長3mくらいの全身黒い毛に覆われ…角が生え…黒い巨大なコウモリのような羽根を生やした生物…永◯豪とダイナ◯ックプロ作品に出てきそうなアレ…
【悪魔】がそこにいた。
「ぼおっとするな‼︎ このタイプは最下層、ケモノ以下の知能しか持たない殺戮者だ‼︎ 倒すぞ‼︎剣を持って構えろ‼︎」
慌てて剣を取り出すと同時に悪魔は鋭い爪を振りかざして襲って来た。
ガシィ‼︎
受け止めるが重い攻撃だ。魔熊以上の力で押して来る。
「受け止めるな、弾け‼︎ そいつは爪から猛毒を垂らすぞ‼︎」
ヤバい‼︎ 飛び退きながら手首を剣で切断する。飛び散る紫色の血液。地面に飛び散ると草が瞬時に腐って萎れていく。血液も猛毒か。ならば…
「焼け‼︎ 業火で焼き尽くせ‼︎」
クソ親父が叫ぶ。わかってるよ‼︎
風魔法で空間を閉じ込め灼熱の炎をぶち込み風を吹子のように送り込む。業火の嵐だ。
悪魔はあっという間に燃え上がり骨も何もかも蒸発して消滅した。
後は【転移門】の処理だが…魔力を通さずってどうしたらいいんだ?
「物理で壊すに決まってんだろ!ほれ!」
親父が自分の【ボックス】から破砕ハンマーを取り出してこちらに投げる。
「魔力を流さず使え。アレだ、ガン◯ムハンマーの要領でな。」
難しい事を言う。例えが古いし。取り敢えず力任せに振り回し石畳を砕く。
魔法陣は砕け起動する事は無くなった。
「バカ野郎‼︎」
親父がゲンコツで俺の頭をぶん殴る。ハイエルフの姿でも手加減無しだ。
「【召喚門】は絶対起動させちゃならねえ‼︎ 今回は最下層の悪魔だったからよかったものの、知能の高い高位魔族…いや最悪違う世界の善良な市民だって転移して来たかも知れないんだぞ‼︎」
冷や汗が出て来る。親父が辿った道を想像する。
この迷惑な【転移門】をひたすら潰して回る旅。恐らく試行錯誤の過程でいくつか動かしたに違いない。その中でも最もしたくない失敗。他の世界から犠牲者を引っ張り込む事だ。そして多分…やってしまったのだろう。
「…被害者がいたのか…? その人はどうなったんだ?」
「元の世界に返したさ。…三年かかったがな。」
やべえ。なんだよ魔王の仕事。重すぎるじゃねえかよ‼︎ そんな重い仕事俺が背負える訳がねーだろ⁉︎
ふざけた親父の背中にとてつも無く重い責任を感じてしまった。
「後2、3個潰して帰るぞ。次に移動だ。今度はしくじるな。」
「……‼︎」
思わず絶句した。鬼かクソ親父‼︎
次回更新は日曜日です。




