49 魔王の戦闘スタイル
その日は一番歳下のマリージュ・シトリージュ親娘がマサオと一緒に床についた。
「あのね、あのね父様。私ずっと父様を思い浮かべて絵を描いていたの。んとね、これがね…」
べたべたと幼児返りしたかのようにマサオに纏わり付くマリー。注意しながらも反対側に寝そべって腕を絡めて離さないシトリー。マサオは俺の助言を聞き入れてなすがままの様だ。
ちなみにマリーの父様の似顔絵は2、3歳の頃からあり、ずっと想像の絵だった。ヒレがあったりツノがあったり色々である。俺に会って俺が親父に似てると聞いてからは俺そっくりの絵になっている。うん可愛い。
次の日、朝からグッタリとソファに沈み込むマサオとその周りでキャイキャイはしゃぐ妹年少組。その年少組にリィカが混ざってるのが何だかなと思うが。お前本当は8歳くらいじゃないのか?
そうやってどんどんコミュニケーションを重ねてくれ。今までの関係を取り戻すように。
年長組はべったり甘えるような事はないが…
「父上‼︎アリエルとひと勝負して下さいまし‼︎」
「ああ、あたしもいっぺん戦ってみたい!」
「あ、私も…最優秀取ったし…」
魔王とぶつかり隊結成である。まあこっちもジャレ合いみたいなものか。
すると親父は俺に振って来た。気分転換したかったのだろう。
「ユート。一丁やってみるか?本気で。」
魔王と本気の模擬戦。うむ、やってみたい。俺正直自分がどれだけの強さなのかわかってないんだ。自信がある時もあるが全然弱いと感じる時もある。
「やる!」
「おし!サークライ、グラウンド借りるぞー。」
みんなも一斉にわっと沸いてぞろぞろグラウンドに移動する。ミヤマさんとジルベルトが皆のベンチを、ミカさんとマーサさんが飲み物と摘むものを用意する。完全に見世物だ。
「「「父上ーがんばえー‼︎」」」
「「「兄様ーやってしまえー‼︎」」」
もちろん全力でぶつかるよ。俺はハイエルフになって間髪入れずに五大精霊を降ろす。
10m程離れた位置の魔王マサオの武器はどうやら二丁のオリハルコン製の銃。剣は使わないのか。実弾?魔法弾?細かいことはやってみないとわからない。
まずは遠距離から魔法を投げてみる。土魔法の岩礫。
避けもせずマントで受ける。ノーダメージのようだ。風の刃を飛ばす。これもマントで受ける。どうやらマントに魔力を流して防御出来るようだ。
足元を泥沼しかも底無し沼に変える。
沈まない。足元に力場というか空気中に足場を作ってる。俺が風魔法で作る奴だ。風魔法ではないようだが。どういう原理なんだ?
沼化した地面に足がつく事なく俺に駆け寄って来る魔王。
俺は【ボックス】からショートソードを抜き魔王に振り抜く。銃で受け止める魔王。ギャリンと火花を散らす。オリハルコンの七色の火花だ。
観客のお母様方から歓声が上がる。
しかし戦術がよくわからない。得物が銃なら遠距離戦を挑むだろうに…と思った瞬間、銃から光線剣が伸びてくる。凶悪な武器だ。レーザーブレードかよ⁉︎
咄嗟にショートソードに魔力を走らせ風魔法で振動刃を纏わせる。噛み合う刃。
どうにかレーザーの威力を押さえているが気を抜くとオリハルコンの刃もへし折られそうだ。近接戦闘ヤバい、超ヤバい‼︎
土壁をバシバシ作って距離を取る。水流弾をシャワーの様に魔王に浴びせる。案の定マントで防ぐ。
それが狙いだ‼︎
間髪入れず上空に用意した積乱雲から稲妻を打ち落とす‼︎
「エルフブレイク‼︎」
白光が魔王を包む。死なないまでもしばらく痺れて動けないはず…
いや!いやいや‼︎笑ってるよおっさん‼︎
「いやあ、息子だと知っていても希少なムチムチのハイエルフなんて相手にするとつい顔がニヤケちまうな。」
余裕かましやがって。しかし近距離はヤバいし動きは止められないし遠距離はダメージを与えられない。どう倒せばいいんだ。
ークスクス。面白い事やってるじゃない。手伝おうか?ー
この声。うーむ世界樹様じゃありませんか。このピンチに何の御用ですかね?
ーあたしもアイツにちょっと一矢報いたいんでね。少し手助けするわ。ー
急に見覚えのない精霊が近寄って来る。白く光り輝くキラキラのお姉さんと深い群青の衣を纏って静かに佇むお姉さん。どちらも俺ににこりと微笑んで同化する。同化して理解する。光と闇の精霊。日と月の精霊だ。
俺の意識に七大精霊の意識が溶け合う。
月(闇)火水木(風)金土日(光)。ハイエルフが七つの精霊と一体化する時…もう一つ上のエルフに進化する。
空気が変わったのを魔王が察したのかオリハルコン銃を連続で放って来る。魔王の銃は右が実弾、左が魔力弾の様だ。嫌らしい。
だが全ての弾が俺を擦り抜ける。ギョッとして近接戦闘に切り替える魔王。だがしかし。
レーザーブレードすらも俺を擦り抜ける。まるで違う位相にいるようだ。魔王の攻撃は当たらない。
高位のハイエルフ…エンシェントエルフは肉体が既に精霊化していて物理攻撃は通用しないのだ。
お互いの攻撃が通用しない、こうなると純粋に保有魔力のぶつけ合いが勝負を決める!
驚いた事に魔王の魔力が満ち溢れた腕が精霊化していて掴めない筈の俺の身体を掴む!なんで掴めるんだよ⁉︎常識外れ過ぎんだろ⁉︎
俺の両腕を掴んで離さない‼︎なんだこの魔力⁉︎
俺は渾身の魔力を込めてヘッドバットをかます‼︎
魔力と魔力がぶつかり合って閃光が走る‼︎
光が収まると荒れたグラウンドの真ん中…額を押さえ屈んでる魔王。
「痛え…超痛え…」
コブになってるようだ。あんだけ魔力ぶつけてコブひとつかよ…
俺の方は降ろした七大精霊はいつの間にか霧散していた。どうやらここまでらしい。
負けを認めて宣言しようとしたら
「はい、ダメージ食らったのはマサオの方だな。ユートの勝ち。」
グリュエラ母ちゃんが宣言する。わぁっと歓声が起こり妹達が俺と魔王に駆け寄る。
「父さん、大丈夫?」
魔王の額に回復魔術を施すレン。嬉しそうだなマサオ。デレデレしてるぞ。
「何て技じゃ⁉︎あの透き通った奴は⁉︎」
「ズルいぞ兄上、あんな事出来るのなんて‼︎」
バトル狂妹ズが興奮して俺にまとわり付く。うん、コレはコレで可愛い。
でも正直世界樹様の横槍が入った段階で俺の負けだった。魔王の攻略難し過ぎるだろこれ。
サークライとジルベルトが複雑な顔してこっち見てる。なんか言いたそうだ。こっち見んな。
グリュエラさんが俺を見て溜息をつく。
「お前な、あんまり世界樹に好き勝手させんじゃないよ。アイツはアイツでヤバい奴なんだからな。」
母ちゃんどういう事?何を知ってるの?
次回更新は水曜日の予定です。




