47 マサオとユート(いっしよにお風呂)
俺の拳を頰にめり込ませて不敵に笑う魔王マサオ。
次の瞬間膝を着いて頰を押さえて悶える。
「さ、サークライ…痛いよ…回復呪文くれ…」
「やですよ。奥方の誰かにしてもらって下さい。」
マサオが見上げると子供達の後ろにそれぞれの母親達がニコニコ笑って立っている。
「では‼︎今年の最優秀生徒賞を表彰します‼︎レン=シュバリエ=モンマさん、学院長の前へ‼︎」
「はい‼︎」
入学時は気も弱くて何が出来るかもわからなかったレンだが今やクラスメイトを代表する最優秀生徒だ。おめでとう。本当に頑張ったなお前。
レンはちょっと腫れてる魔王マサオの頰に回復魔法をかける。得意の技だ。
マサオは優しく笑う。
「ありがとう。そしておめでとう。頑張ったな。」
「ありがとうございます。…お父様。」
灯りが全て点ると講堂には今年のギルド学院生が全員いた。みんなが拍手をしてレンを迎える。それを見てたまらず涙するレン。
「卒業生全員、学院長に敬礼‼︎」
ザザッと一斉に敬礼する生徒。壇上で微笑むマサオ。その両脇には獲物を捕らえて離さないかのような七人の奥方様方。溜飲が下がったかのような笑みのサークライ。
こうして感動的な本年度の学院卒業式は幕を閉じたのだった。
さて、家族の時間だ。
我々は粛々と魔王マサオを女子寮へ連行する。
卒業式が終わった今学生は全て退寮を完了し去っていた。
女子14人男2人なので女子が話しやすいテリトリーへという事で誰も居ない女子寮が選ばれたのだ。
「さて親父。なんか言う事はあるかな?」
親父は俺を見て感心する様に言い放つ。
「いい女になっちまったなぁユート!はっきり言ってしゃぶりつきたいくらいいい女だぞ!しかし最後に会った時は男の子だったのにエルフは成長したら女になるのか?」
全力でワンツーパンチを喰らわす。手のひらで全部受けるマサオ。やっぱり最初の一撃はわざと受けやがったのか。食えねえ親父だ。
その後ろでグリュエラさんが一発頭に入れる。綺麗に入る。
「そんな訳ないだろ。アイツは世界樹の罠であーなっちまうんだ。」
「へえ。世界樹ね。相変わらず何でもありだなあの【悪魔】。」
そんなやり取りの中カナコが言う。
「取り敢えず父さんも兄さんも埃だらけだから一先ずお風呂入って来て。ここの大浴場使えるから。貸し切りにしたから。」
親父は薄汚れたマントのままだし俺は先程アベリアに吹き飛ばされて怪我は治ったがボロボロだ。一丁入って来るか。
親父と一緒に大浴場に向かう。俺を見て鼻の下を伸ばすクソ親父。あ、ハイエルフの姿だった。すぐに男に戻るとあからさまに残念な顔をする頭の残念な親父。
女子寮の大浴場を男二人で貸し切りである。何を考えてるか判らないがその表情から残念な事に違いない。
ざぱーん ざぱーん ざぱーん。
ん?入浴音が三つ?
隣にサークライもいた。何なの?
「まあ気にしないで。見張りみたいなものだよ。」
改めて親父の顔を見る。成る程、歳食った俺である。アラフォーというところか。ナイスミドルにも見えるがよく居る住所不定無職にも見える。憎々しいまでに俺に似てる。
「しっかしそっくりに育ったなぁ。マジで俺のコピーだなお前。」
もっと言い方があるだろクソ親父‼︎
俺の目に怒気を感じたのか冗談だ冗談と戯けて誤魔化す。俺は切り出す。
「さてクソ親父。あんな可愛い娘達を置いて10年近くもどこで何をやってたんだ?」
「…」
「あいつらはな、俺が親父にそっくりだと聞いて俺に抱きついて泣くくらい親父に会いたかったんだぞ。」
「…本当に…すまないと、…思っている。」
そんなジャック=バウ◯ーみたいな言い方すんな。マジか冗談かさっぱりわからん。
「マサオ、彼には何をやってるか話してもいいんじゃないですか?」
「…そういえばお前いつこの世界に来た?極力接点は無かったはずだ。詳しく話せ。」
親父が急に真面目な顔で質問をする。
「一年前ある日突然さ。いきなり下校途中にエルフの森に召喚されたんだ。召喚事故だと言われた。世界樹様は『ハイエルフを召喚する儀式』を行ったと言っていたから。人間の姿だった俺がエルフ石を触るとハイエルフになったんだ。そん時に何故か女になった。」
「何百年毎かに世界樹のコアに上位エルフが祈りを捧げる風習がある、とグリュエラに聞いた事はある。それだな。そして俺が知ってる中でハイエルフと言われるエルフはグリュエラ以外には会った記憶はない。」
「え⁉︎」
そんなに希少な存在だったの⁉︎ハイエルフ⁉︎
「お前の中の高純度のハイエルフの遺伝子が世界樹の召喚術に引っかかったって訳だ。やられたな。しかし女になるとは想像もしてなかったぞ。はは。まあ経緯はともかく、お前は転移してこの世界にやって来た。そして自分の身体を巡る魔力の存在を知った、だな?」
「あ、ああ。」
「覚えておくといい。転移してやってきた者が初めてその魔力に気付いた時、往々にしてその世界の住人と比べて莫大な魔力量を秘めている事がある。お前も身に覚えがあるだろう?」
確かに魔力残量を気にした事はまずない。一番最初にジャングルで遭遇したスタンピード、最後の最後に魔力切れを起こした、あの一度だけだ。あれも今ならもっと余裕を持って対処出来ただろう。未熟で魔法の使い方を間違っていた。
親父はその後とんでもない事を口にした。
「そうやって異界から【転移】して来た恐ろしい【魔力持ち】は俺達だけじゃない。厄介な事に【悪魔】という奴らが存在する。」
あ、【悪魔】ぁ⁉︎
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