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42 家族のおもてなし

 アベリアを連れてタンザの街に入る。タンザの詰所のそばに最早ミカさんの別荘とも言える屋敷がありそこでカナコ達が待っていた。

 カナコはドローンを通じて俺の様子を見ていたので安心してアベリアの身を任せる。アイコンタクトでどうやら察してくれている事がわかる。カナコは本当に頼れる長女だな。


「ユートくん、君…」


 色々言いたそうなジルベルトが口をつぐむ。わかってる。これから迷惑をかけるだろうからお前さんにも少しは優しく接してやろう。


「これからアベリアに甘い物でも食わせてやろうかと思うがお前も何がリクエストあるか?」

「僕は余り甘くない紅茶のシフォンがいいな。」

「兄さんあたしはプリン・ア・ラ・モードね。」

「ぷ、ぷりんあ、らもー?」

「アベリアも同じ物にする?」

「…うん。」


 よしまかせろ。屋敷の厨房で早速支度に入る。その間にカナコは冷えたアベリアの身体をお風呂で温めてやっている。アベリアの方が身体は大きいのでカナコが14歳だと中々信じられないようでカナコがドワーフは幼く見えるんだと何度も言い含めているのが聞こえる。…カナコには可哀想だが微笑ましいいつもの光景だ。

 俺は渡してあるスマホでリィカとレン、アリエル、マリージュ四人に連絡を取る。全員揃ったと聞いてみんな大喜びでタンザに駆けつけると言い出した。集合は魔王都でと思ってたけど妹達は気が早い。あいつらの分もスイーツを用意しなくちゃ。ん?来る頃には夕食の用意かな?


 厨房にミカさんが入って来る。


「お母さん達もみんな来るからあたしも料理手伝うわ。」


 え⁉︎ みんなここに来るの?それじゃアベリアだけお母さんいなきゃ可哀想じゃん。


「じゃあ俺マーサさん迎えに行ってきますわ。ここお願いしていいですか?下準備はして行きますから。」

「大丈夫、あたしも従業員の食事を一手に引き受けてるくらいだから料理は任せといて。早く行って来な!」

「よろしくお願いします!」


 バビュンと飛び出して聖王都グローザムに向かう。城壁を飛び越え瞬時に男に戻る。待ち合わせた旧キャラダイン屋敷跡の外れの森に向かうとマーサさんが立っていた。

 今離れる訳にはいかないのだけど…と戸惑っているが反乱軍の将校達が全力でマーサさんを説得したらしい。今会わないでいつ会うのだ、と。グッジョブですおっさん達。もしもの為にと将校のトップに連絡用のスマホの予備を渡しておく。


 俺はハイエルフに変身してマーサさんをお姫様抱っこして上空に舞い上がる。高高度に上がれば索敵も妨害も聖王国には不可能だ。

 寒いので風の精霊と火の精霊を纏いエアバリアーを貼りつつ高速でタンザにトンボ返りだ。

 


 タンザに戻ると妹達が母親と共にあらかたみんな来ていた。早いな。マリージュなんてよくこんなに早く来られたな。天使族のガブリールさんと家の母ちゃんを合わせるのは正直すっごい不安だが、母ちゃんは遅れて来るというので内心ホッとする。もしかして避けてるのか?


 お母様方はテラス席にちらほら、何人かは料理の手伝いに厨房にいるとの事。妹達はアベリアを囲んでリビングでなんかくつろいでる。険悪な空気じゃないようで安心する。若干ケンカ吹っかけそうな奴もいるからな。殲滅天使とか。


「アベリアお待たせ。お母さんを連れて来たぞ。」


 アベリアが立ち上がってこちらを見る。俺の横に立つマーサさんを潤んだ瞳で見つめる。マーサさんが膝立ちで腰を屈める。


「おいで、アベリア。」

「かあさま…かあさまぁ‼︎」


 感動の親娘の再会である。俺とカナコはほっとして微笑む。マリージュとレンは感極まって貰い泣きしてる。リィカは口一杯にタンザ名物リンゴ飴を頬張っている。また買い食いか。アリエルは勇者アベリアと一戦交えてみたくて仕方ない顔をしてる。懲りない奴だな。うちの妹は本当に個性的だなぁ。


 やがて夕食の支度が整う。


「ユートくん上座に座って。」


 ミカさんが言う。


「いや上座って俺…」

「いいのよあんた長男なんだから。それと挨拶任せたからね。」

「あ、挨拶⁉︎」


 全員が席に着く。子供達は親の隣に座ってる。挨拶どうしようと悩んでいたらうちの母ちゃんが遅れてやって来た。


「お、ちょうどいい時間だったな。」

「な訳ないでしょうが!息子ばっかり働かせて何やってるのかねぇこの極楽とんぼ。」


 殲滅天使ガブリールさんから早速の一言ありがとうございます。


「お、今日はミカのお手製か。ミカの食事も美味いぞ‼︎異世界仕込みだからな‼︎」


 気にせず言うだけ言って1番下座の席に着く。…代わって欲しかったのに…。


 皆をぐるりと見回す。異世界に身内が14人。ほんの一年弱まで二人っきりの母子家庭だったのが嘘のような光景だ。見てるだけで泣きそうになる。…ジルベルトは気を利かせて建物の外で警護している。


 俺は畏まりつつスピーチを始める。


「思いも寄らぬ突然の出来事でしたがようやく魔王モンマの家族が全員揃いました。とても嬉しいです。

 後は魔王を攻略するだけです。みんなそれぞれ親父に対する想いがあると思います。思い切りぶつけてやりましょう。」

「まるで魔王退治に行く前みたいじゃ‼︎」

「抱きついてもぶん殴っても自由だ。」

「駄目だぞ‼︎父上には正々堂々勝負を挑むのだ!」

「僕は魔術を習うんだ。」


 みんな好きずきでよろしい。親組は親組で中々変な空気だ。多分誰が先にベッドを共にするかの順番争いが静かに勃発しているのだろう。子供の知らぬとこでやって下さい。下世話なので…。


「では乾杯‼︎」

「「「「「「「「「「「「「乾杯‼︎」」」」」」」」」」」」」


 その日は夜遅くまで盛り上がった。

 妹達はみんなアベリアと話したがったが今日は親娘二人っきりにしてあげようとミカさんが二人を個室に案内した。

 マーサさんにべったりなアベリアを見てマリージュもシトリージュさんに甘え始める。魚人の宮殿では中々甘えるのが難しいらしい。ババア(女王)の目が気になるのだろうな。

 妹達を見てリィカもドレスティアさんの脚にしがみつく。


「あらあら。まるで幼児返りじゃの。仕方ないわ、大人の話し合いは明日にしよう。それで良いかな?」


 母親達は了承してそれぞれの子と一緒に寝る事にしてベッドルームに消えて行く。


 屋敷のリビングには俺とグリュエラ母ちゃんが残った。

 


 

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