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41 ユートとアベリア(長男と四女)

 「お前のお母さんは生きてるぞ。」

「な…何を…」

「お前のお母さんは死んじゃいない。10年前お前と聖剣を聖教会に奪われてからずっと取り戻す為に聖王都で戦っている。」


 言葉も無く立ち尽くすアベリア。


「その折れた聖剣、悪かったな。お前の大事な物とは知らなかった。どれ、修理してやるから貸せ。」

「し、修理だと⁉︎王国の誰にも治せないのにお前如きが…」

「治せるさ。」


 俺はいつものように五大精霊を呼び寄せ自分に降ろす。鍛治の精霊がいるとはいえオリハルコンを加工するには五柱の力全部が俺には必要なのだ。その代わり物理的にハンマーで叩かなくても【空間炉】で加工が出来る。【空間炉】には土の精霊の力が満ちている。

 【空間炉】に折れた聖剣の柄と剣先を入れ高熱を加える。風と火の精霊の力で高高熱となる。聖剣が赤熱化し一つに融合する。そして金の精霊が力の限り叩く。叩く。叩く。

 水の精霊が冷やし金の精霊が叩く。磨き上がった剣はミカさんが作り上げた【マーサの聖剣】そのものだった。


「ほら治った。」


 呆然と剣を受け取るアベリア。

 素振りをしてみる。魔力を通す。元の聖剣そのものだ。思わず聖剣を抱き抱える。


「あ、ありがとう…」


 礼を言って慌てて向き直す。そもそも剣を折ったのはこいつだ。なんでお礼なんて…そんな感じで俺を睨む。


「まあまあ慌てるなって。さっきも言った通りアベリアのお母さんは生きてるしお父さんも生きてる。」

「お…お父さん⁉︎」


 考えた事もないらしい。まあそうだろうな。俺も生きてると聞くまでは考えた事もなかったっけ。


「さてアベリア、正直に言おう。俺はアベリアと戦う気なんてない。何故ならアベリアは俺の腹違いの妹だからだ。」

「はあっ⁉︎」

「驚くのも無理はない。ちなみに俺は長男。こんななりしてるけど男の子だ。アベリアには他に3人の姉と2人の妹がいる。全部で七兄妹だ。賑やかだろ?」

「はあああああああああああ⁉︎⁉︎⁉︎いやいやいやいやさっきからお前でまかせ言ってるだろ‼︎そんな話信じないぞ‼︎何が戦う気ないだ‼︎」


 立て続けの新情報に頭が付いて行かないのかアベリアがパニクり始めた。まあ落ち着け。


「お母さんと話してみるか?」

「え?ど、どういう事?」


 戸惑うアベリアに俺は【ボックス】からスマホを取り出して見せる。


「これは遠くにいる人と会話が出来る魔道具だ。この画面に相手の顔も映る。話してみるか?」


 あわあわししているアベリアを見ながら俺はマーサさんにカメラモードにして電話をかける。


「はいマーサです。どうユートくんアベリアは発見出来たの?あの子は無事?」

「今ここにいますよ。声を掛けてあげて下さい。」


 スマホをアベリアに見せる。画面の中の女性を見てアベリアが固まる。ほう、こうして見ると二人ともよく似ている。画面の女性が涙を流しながら語りかける。


「ア…アベリア…?」


 恐る恐る優しい声に応えるアベリア。


「母様…?」

「ええ…ええ。アベリアなの…?もっと声を聴かせて。」

「か、母様!母様‼︎母様ぁ‼︎‼︎」


 すでに涙声である。話せ話せ好きなだけ話せ。10年の隙間を埋める様に電池の続く限り話すがいい。…残量大丈夫だっけ?



 長い間随分いろんな事を話してたようだ。マーサさんと会話をするアベリアの姿は俺の知る妹の中でも1番幼く見える。…リィカとどっこいどっこいか?

 電話の内容で今マーサさんは聖王都グローザム内にいる事、△の月1日に魔王都にやって来る事、△の月1日は実は兄妹と七人の妻全員で揃って父親に初めて会う日だと言う事を知ったアベリア。フリーズしてる。頭が付いていかないらしい。


「とにかく△の月1日に魔王都でマーサさんに会えるって事だ。後二週間ほどだから聖王国に帰りたくないならこのまま俺と魔王都に行かないか?お前は俺達兄妹が絶対に守るから心配するな。」


 魔王軍からも聖王国軍からもだ。俺の大事な妹は誰の手にも渡さない。


 【ボックス】にエルフ石のペンダントをしまい、人間の姿になる。


「なっ…その姿⁉︎」

「俺は半分人間だからな。元はこの姿だ。エルフの神様が俺に仕事を押し付ける為にハイエルフにしたんだ。まったく迷惑なこった…。」

「…苦労してんだな…兄ちゃん。」

「この姿なら怖くないだろ?行こう。」


 差し出した俺の手を恐る恐る掴むアベリア。

 まあ移動の為にはすぐハイエルフに戻るんだけどね。ハイエルフになってアベリアをお姫様抱っこする。ちょっとビクッとするが浮かんで行くので首にがっしりしがみつく。このままタンザの街に一直線だ。






 一昼夜雪山の中を彷徨い勇者を探し回った従者達が項垂れてマービンの街に戻る。勇者が行方知れずになった報は極秘に極秘に聖王都の司祭長に届けられた。


「おのれ親娘揃って歯向かうとは忌々しい‼︎」


 そう吐き捨てた司祭長の貌は醜く【悪魔】のように歪んでいた。


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