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39 マーサさんからの急報

 リィカとレンをクラスメイトに託し、俺は俺で対勇者戦に向けて対策を練る日々、そんな中勇者の母親で聖王国の中でレジスタンスをしているマーサさんから連絡があった。スマホに。


「あ、お久しぶりですマーサさん。どうしましたか?」

「ユート君?お久しぶり。こちらに動きが出たのでお知らせするわ。」


 聖王国では勇者の出陣と共に聖王国軍を国王の名の下に出撃させる事にはなったようだ。

 国王と第三王子は穏健派なんじゃなかったっけ?


「聖教会と王弟、第一王子派に押し切られた様ね。それと…申し訳ないけど私のせいだと思うわ。」

「?なぜ…」

「前勇者は一人で魔王の元に戦いに行って折伏されて聖王国を裏切ったからね…二度と同じテツは踏まない決意なんでしょう。折角育てた勇者を奪われてたまるかって思ってるんでしょ。護衛のつもりで軍を駆り出して来たのよ。」


 マーサさんは続ける。


「私が本当に申し訳なく思うのは…もしかしてユート君に人殺しをさせてしまうかもしれない事よ。」


 冗談じゃない。戦争も人殺しもごめんだ。だから抗う。出来るだけの抵抗を見せてやる。


「そちらに行きます。」

「何をする気なの? もうこの規模になっては個人ではどうにもならないわよ。」

「俺は諦めが悪いんです。笑って妹を愛でる日の為に出来るだけの事をします。」



 通話を切ると真顔のジルベルトが側に居た。


「…どこへ行こうって言うんだい?僕の職務上君を魔王国から出す訳にはいかないよ?」


 やはりか。俺の護衛とか言って近づいたのは俺を止める為か。軍属のやりそうな事だ。


「ちょっと親父の奥さんに会って来る。」

「何を今更。こうなる事など爺様は想定済みさ。聖王国がどれ程の規模で押し寄せようとも人間如きに魔王軍は負けない。必ず蹴散らす。後は私達に任せろ。」


 人間如きか。そうなんだ。人間は弱い。そんなの骨の髄まで身に染みて知ってる。

 獣人・亜人に比べると人間は運動能力も劣るし弱い。だから獣人・亜人に恐怖する。徒党を組んで排除しようとする。自分達を守ろうとする。聖王国は人間が弱い中知恵を使って作り上げたシステムの結果なのだ。


「戦争はあんたらに任せるさ。」


 外に出ようとするとジルベルトに手を掴まれる。


「離せよ。」

「嫌だ離さない。」


 二人の間に緊張が走る。

 と同時に俺にまた電話がかかって来る。今度はカナコからだ。


「こっちにもマーサさんから連絡が来たわ。手を出すつもりなんでしょ?兄さん。」

「まあね。お前も止めるのか?」

「止めないわよ。てかさ、攻めるならいいアイテムがあるんで行く前にこっちに寄ってって。」

「?」


 取り敢えずカナコのいる魔王都庁内の住居区へ行く。家族のプライベートルームだからお前は来るなよジルベルト。いや付いて来るな。マジで。



 3日後。俺は聖王国の入口の街マービンにいた。魔王国側の街タンザにはカナコと…何故かジルベルトが待機していた。ジルベルトは悔しそうに言う。


「ちくしょう、僕が人間になれたら絶対ユートにくっ付いて行ったのに…」


 カナコはジルベルトがちょっと怖いので話しかける事は無かった。



 俺はマービンに入る前にマーサさんの組織と連絡を取り、マービン内の補給倉庫の位置を把握する。補給倉庫はマービン郊外の牧草地にあった。武器・弾薬もここに固まっている。

 マービンは魔王国進軍に置ける前線基地だ。進軍する兵士とその補給品は全てここに集められる。

 その位置をスマホでカナコに知らせる。彼女の地図はドワーフの打ち上げたGPS衛星でまったく誤差のないもの。その地図上に光点で倉庫の位置が表記される。


 人気のない深夜が作戦の時間だ。

 地図の光点を目標にカナコの【ボックス】から次々と黒い物体が現れマービン上空に向けて飛び立つ。どこ製かわからないがミサイルを積んだ軍用ドローンだ。

  

 あっという間にマービンに着き魔道兵の魔法も届かない高高度に浮かぶドローン達。そして全機補給倉庫に向けてミサイルを発射する。


ガガーン ズガガーン‼︎


 建物ごと吹き飛ぶ物資。慌て逃げ惑う見張りの兵士。何が起こったかまるでわからない様だ。

 サイ型の魔獣厩舎もここに近いので運搬用のサイも暴れ回って四方八方に逃げ去る。


 地味(?)で嫌らしい作戦だが軍隊が進軍するには武器・弾薬・兵糧・水とそれらを運ぶ魔獣車の車体が重要になって来る。それらをチクチクと潰す。


 派手にやり過ぎると足りない物資を一般国民から接収し始めるので見切り時が大事だ。


 セコいやり方だが派兵をさせない、それが大事。


 それからも物資は中央から送られて来る。郊外の倉庫は吹き飛ばされたのでマービン町内の一般の倉庫に分散されて運ばれて来る。

 流石に街中にミサイルをぶち込む度胸はないのでマーサさんの組織の情報を借りてひとつひとつ場所を把握。

 夜中に忍び込んで自分の【ボックス】に物資を詰め込んで去る、というのを繰り返した。

 ただの盗っ人である。ル◯ンル◯〜ン♪


 掠め取った物資はマーサさんの組織の人達に預ける。この国も貧しい地域が点在している様なので返しておく。


 こうして地味に工作活動を続けていたら再度マーサさんから連絡が入った。


 勇者アベリアパーティーが聖王国軍とは別に出撃したとの知らせだった。

 


 


 

 

 



 

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