34 魔王軍の大将
ジジイの癇癪に付き合ってたらいつの間にか冒険者クラスがSランクになっていた。
それはそれとして当初の目的の『兄妹みんなでクエストをこなす』をやってみた。
割と難易度の低めのサバンナの魔物退治を受注する。ダブルサーベルタイガーの素材を残して15体討伐だ。
「素材は巨大な四対の牙と魔石な。毛皮も売れる。肉は食用には不向きなんで解体したら埋めて処理する。わかった?」
カナコはようく話を聞いて肯く。アリエルは相変わらず人の話を聞かない。カナコ、アリエル見張っててくれ。俺は狩り方のポイントを説明する。
「毛皮に傷を付けずに狩るには眉間を狙い脳の活動を止めるのがベスト。だけど攻撃力に気を付けろ。強過ぎると頭が吹っ飛んで牙までボロボロになるぞ。」
カナコのサブマシンガンなどもってのほか。アリエルのビームも精度次第だな。今回は肉は食用じゃないからレンの毒も使い様がある。レンの麻痺毒で動きを止めてから二人が手を出すのがいいな。リィカはタンクな。俺と二人で後衛の三人を守る。では始めようか。
無事に狩りを終え魔王都に戻って来た俺達。
初めの何頭かは上手く頭を狙えなかったカナコとアリエルだが段々と慣れて行った。まあ解体は俺とレンがかかりっきりでしたが。五人いて解体が出来るの俺だけでレンが辛うじて助手が出来るというね…相変わらずバランスの悪いパーティーだよな。
しばらく遊んでアリエルは迎えに来たガブリールさんと一緒に天使族の里に戻って行った。カナコはミカさんと一緒に魔王都庁内にあるホテルみたいな部屋に長期滞在してる。あいつ学校は平気なのかな…?
粛々と学院生活を送る俺にまたもやいきなり呼び出しがかかった。
今度はなんと魔王軍だ。
まあ魔王軍なら多少は文句を言って来る理由はわかる。聖王国の端の国境の町マービンにセ◯ム仕掛けたのでタンザに駐留する警備兵の数が跳ね上がっていると聞いた。その上で勇者が魔王都にやって来るのだ。都市防衛を考えると気が気じゃないだろう。
この魔王国は組合…ギルドシステムによって社会生活が機能しているが魔王軍は治安維持、災害救助、国土防衛に特化する言わば警察と自◯隊を合わせた様な機関だ。なので割りかし魔王国民にはフレンドリーに愛されてる。
そんな魔王軍が俺に何の用だというのだろう?
魔王軍省庁に顔を出す。当然と言うか魔王都庁の隣にある。いかつい系の獣人の門番が目印だ。
魔王軍は比較的体力自慢の大型獣人が多い。象とかサイとかゴリラとか。あと鬼族も多いようだ。レンの親族も何人か魔王軍に勤めているそうだし。
ここでも一応応接室に通された。お茶を出してくれる分ギルド統括庁よりは扱いはよさそうだ。
しばらくするとすらりとしたスタイリッシュな紳士がやって来る。4、50くらいの老紳士だ。こめかみの辺りから二本の特徴的な角が生えている。鹿…?いやあれはビールの瓶で見た事があるぞ。…麒麟だ。麒麟の獣人なんているのか…。まあ龍もいるんだから幻獣系もいるか。そういやもしかするとギルドのジジイ、あれは亀じゃなく玄武だったのかも知れない。
「待たせたねユート=モンマ君。私が軍司令をやっているミューラーだ。君の母上にはお世話になっているよ。」
スタイリッシュな老紳士がやわらかな口調で語る。
「身構えなくていいよ。君のやった行為は褒められはしないが向こうの最強のコマを引き受けてくれると言うのだから我々はそれに最大限に協力しようと思う。」
ミューラーさんが言うには、勇者がやって来るのを大前提としても、最低パーティー、最悪王国軍を引き連れてやって来る可能性まで考える必要があるとの事。その場合どう勇者と軍を分離させるか俺との連携を考えなければならないと。
正直邪魔なだけなんだけどな…。
俺の見立てではあの賢者と魔道士を連れたパーティーでやって来ると思ってたがそうか物量で来る可能性もあるか。それでも俺には対処方法はあるので余り心配してなかった。…説明するの面倒くさいな。
「俺には万の軍勢を無力化出来る魔法攻撃があるので足を止めますからその後の各個対処をお願い出来ますか?」
一瞬で空気が変わる。周りの軍のお偉いさんが一気に殺気をぶつけて来た。あ、こりゃやらかしたかな…?
しばらく黙っていたミューラーさんが口を開く。
「…なるほど。ではその攻撃方法を少し見せてくれないかね? これから修練場に兵を500人ほど用意する。全員で君を仕留めに来る。君がどう無力化するか見せてもらおう。」
静かにニヤリと笑うミューラーさん。ううむ、怒ってる?おこなの?
心ならずも魔王軍相手に模擬戦を行う羽目になってしまった。
案内された修練場は魔王都郊外の広大な緑地内にある。うむ、向こうの世界の自◯隊の駐屯地みたいな感じ。
ミューラーさんが説明をする。
「騎兵50、重装歩兵100、弓兵50、猟兵200、魔道兵100を用意した。向こうは全力でやって来る。死なぬようにな。それと出来るなら殺さないでくれると助かる。」
どうやら漏れて来た話によると下の兵からは俺に対する良くない感情が吹き出していたそうだ。
『突然現れて魔王の子を勝手に名乗るハイエルフがパフォーマンスで聖王国にケンカを売った』って。
あのアマ俺達を差し置いて好き勝手にやりやがって、という不満が溜まっていたらしい。
「あ、それから私も参戦するからよろしく。」
「は?」
やばい、目的はそれか。どうやらこのおっさんどうしても俺と一戦交えたかったらしいぞ…。




