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33 ギルドのお偉いさん

 あんまりカナコとアリエルがうるさいので二人に冒険者のクエストというものを一度見せてやろう、という事になった。

 冒険者ではない二人をクエストに連れて行くには冒険者ギルドに行って二人の名前で【魔王の眷族】に護衛指名依頼を出してもらう、という方法を取るのだ。そうすれば二人を守る名目でフィールドに出られる。


 早速手続きを取ろうと魔王都の冒険者ギルドに久しぶりに顔を出す。

 するとなんだか様子がおかしい。俺達がギルドに入るなり係員数人に取り囲まれる。


「?なんすか?俺らになんか用ですか?」


 やめろよ妹達が不安がるだろ。

いつもの受け付けのお姉さんが現れる。


「ごめんなさい、実はね、貴方達【魔王の眷族】に会いたいって人がいてね。」

「? 誰ですか?」

「ギルド統括庁長官よ。」


 …ギルド統括庁っていうのは冒険者ギルドを始めあらゆる職業ギルドを統括している省庁だ。…長官っててっぺんの人だよな?何の用だろう。

 どの道偉い人に呼び出される事にはいい思い出がないのだ。行きたくないなー。


 躊躇してるとさあさあと用意された馬車に押し込まれ統括庁まで案内されてしまった。歩いて10分くらいの距離を馬車だ。仰々しいな。



 統括庁はさすが全職業ギルドの統括らしく、魔王都庁の次くらいのでかい建物だ。てかよく見ると魔王都庁も統括庁もコンクリート製なんだよな。なんか色々異世界の技術入ってたんだなこの世界。


 三階の応接室に俺だけ通される。リィカ達は一階のレストランでギルドのお姉さんに歓待を受けてる。

 しばらくすると白い髭を蓄えた爺さんがやって来た。甲羅を背負ってる。亀仙…亀獣人だ。しかもなんだこの魔力量。めっちゃ強いのはわかる。しかも周りにケンカ売ってるんかというくらい溢れてる。

 爺さんは俺を見て呟く。


「驚いた。ハーフエルフがハイエルフにまで進化しておるのか。まあしかしここ止まりじゃろうな。」


 なんか微妙にディスられた気がするぞ…?


「あの?貴方どなたなんですか?いきなり呼び出して。」

「ああ、わしはギルド統括庁長官ジンギ。十傑の一人じゃ。すまんな。クソ迷惑なグリュエラの息子に文句のひとつでも言おうと思ってな。」

「は?」


 なんか俺迷惑かけたか?


「まずはお前さんが勝手に聖王国にケンカ売った事だな。魔王国はようやくギルド制度の拡充によって国内の運営が回って来たところじゃというに。今はあんな馬鹿どもの相手はしておれんのだぞ⁉︎」


 ジジイは続けて捲し立てる。


「サークライに呼び出されて国土防衛の為に聖王国からの侵入者を叩くから人を出せと言われた。そんな余裕あるかと突っぱねたわ。すると聖王国から勇者が攻めて来るという。しかも原因はお前さんがケンカを売ったからだというではないか。」


 あー。俺が原因ですね。

 でも後悔してませんよ。妹を取り戻す為です。

何か問題ありますか?

 

 「てかよ、なんでぽっと出のお前なんかが勝手にケンカ売ってんだよってこった。わしにやらせろってんだ‼︎」

「司令‼︎」


 冒険者ギルドの受け付けのお姉さんが激高するジジイを止めに入る。

 ん? 風向きが変わって来たぞ?


「とにかくな、お前さんに聖王国と正面切って戦える実力があるのか甚だ心配…いや疑問だ‼︎ なので確かめさせてもらう‼︎」

「確かめるって…」

「特別に三つのSクラスクエストを受けてもらおう‼︎実力でわしらを納得させてみろ‼︎」


 Sクラスクエストだって⁉︎ Cクラス冒険者にそれはないんじゃないの⁉︎

 余りの無茶振りに俺は呆れて物も言えない。その間にジジイは勝手に喋るだけ喋って勝手に決めてしまった。なんなんだこのジジイ…。


 その三つのSクラスクエストとは

 1、【世界樹の葉】の採取。

 2、【オリハルコン】の採掘、もしくは【オリハルコン】を加工した武器・防具の製作。

 3、【Sクラスモンスター】の討伐。

だという。

 ジジイのドヤ顔がすごい。


 俺はSクラスモンスターってどんな種類があるのか聞いてみた。するとお姉さんがモンスターリストなるものを見せてくれる。パラパラとめくると見覚えのある魔物を見つけた。


「このクラーケン倒した事あるんだけど。」


 ジジイが驚いた顔で俺を見る。


「な、なんだと?馬鹿をいうでない。そいつは軍隊単位で立ち向かうSクラスモンスターだぞ⁉︎しかも海に毎年出没し魚人の軍隊でも撃退するのがやっとだというのに‼︎お前如きに倒せるわけが…」


 俺は【ボックス】からこないだクリイドの街でシトリージュさんから礼として戴いた巨大クラーケンの魔石を取り出す。直径50cmはあるでかい青紫の魔石だ。


「はい証拠。」


 ジジイは口あんぐり。お姉さんがモノクルを取り出しモンスターリストの魔石欄と見比べる。


「…間違いありませんわ。クラーケンの魔石です。」

「なんじゃとおおおおおお⁉︎」


 俺は念を押すように言う。


「お疑いなら魚人の里の女王陛下にでもお聞き下さい。あ、それから…」


 続けて【ボックス】からエルフの里で拾っておいたアレも出す。


「はい、【世界樹の葉】です。何枚いりますか?」

「な、何枚持ってるの?」

「ポーションの材料になるってんで世界樹様から大量に貰ったんで。5、60枚はあるかな?」 

「なんじゃとおおおおおおおおおおおおおおおお⁉︎⁉︎」


 聞いた所によると【世界樹の葉】は回復薬系の最上位の材料で市場に滅多に流れてこない希少素材なんだそうだ。…知らなかった。道理でやたら効能の高いポーションが作れるなあと思ったわ。


 1枚でいいと言うので1枚渡す。これで2つ目クリア。最後のひとつ。【ボックス】から愛用のショートソードを取り出す。


「これ、俺が打ったショートソードだけど【オリハルコン】使ってるよ?」


ジジイはもう白目剥いて倒れてる。お姉さんは一瞬止まるが気を取り直してショートソードに魔力を通しながら鑑定する。


「…間違いありません。七色に光るこの魔力伝導率。オリハルコンです。」

「バカなバカなバカな‼︎ ひ、百歩譲ってこの剣がオリハルコン製だとしても‼︎ お主なんぞに作れる訳がなかろう‼︎し、証拠があるのか⁉︎」


 みっともなくジジイが叫ぶので仕方無く鍛治を見せてやる事にした。


 【ボックス】から余ってる鉱石素材を取り出す。ほんの少しミカさんに貰ったオリハルコンが余ってた。

 そして全身に精霊を降ろす。火水風土、そして向こうのとそっくりな金の精霊。こちらの金の精霊も力を貸してくれるようだ。よかった。

 五大精霊の力を借りてオリハルコンに魔力を通す。激しく七色に光るオリハルコン。

 魔力で窯にあたる空間を作り精霊の魔力で高熱を加え【ボックス】から愛用のハンマーを取り出し力を込めて鍛え上げる。やがて小さめの籠手が焼き上がる。レンが使うといいかな?


「ほら、オリハルコン製の籠手の出来上がり。」


 目の前で全作業を見たジジイとお姉さんはもう何も語らず、ただソファーに深く沈み込む様に座ってこちらを見ていた。

 ジジイは一気に老けた顔をしながらポツリと話す。


「…なんでお主の様な奴がCクラスなんじゃ…?」


 知りませんよ。ん、多分冒険者になって一年足らずだからじゃないですかね?

 

 これで納得してもらえたかな。そう思って部屋を出ようとしたら少し待ってろと呼び止められる。そろそろ妹達の所へ行きたいんだけどな…


「ギルド登録証を出してください。更新しますから。」

「あ、はい。」


 お姉さんが俺のライセンスを持って行った。なんか事務所が騒がしい。ジジイは疲れ切って座ったまんまだ。心なしか真っ白に燃え尽きたスタイルだ。


 お姉さんが戻って来る。何か前のライセンスと色が違うぞ?キラキラと輝いている。オリハルコンの輝きだ。渡されたライセンスを見る。


…冒険者スキルがSクラスになっとる。 鍛治師スキルも同じくSクラス。採集師スキルもSクラス。魔術師スキルもSクラス。なんだこの大盤振る舞い…



 俺はこの日Sクラス冒険者に昇級した。


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