32 魔導王サークライ ◯歳
本日二話目です。
いやまいった。あの問題児、ユート=モンマがまたやらかした。
戦争が終わって20年、出来るだけ関わらないようにして来た聖グローザムに真正面からケンカを吹っかけた。
聴いた瞬間気が遠くなったよ。まごう事なくアイツの息子だよ。何だね、異世界で育つとみんなああいう問題児に育つのかね⁉︎
思えばアイツ…マサオ=モンマも酷かった。
まだ亜人に国が無かった時代。亜人や獣人を恐れていた人間が王国というテリトリーを作り、徒党を組み集団で行動する事によって亜人を捕らえ虐待し奴隷として利用する事を覚えた時代でもある。
大魔法使いの弟子として育てられ亜人の生活のネットワークとして機能していた【ギルド】の管理をしていた僕の前に突然現れたのが彼、マサオ=モンマだ。元の世界に戻る方法を探す為旅をしてると言う。
奴は人間のくせに膨大な魔力と異界の知恵を持っていた。
奴が必要だった魔術は僕の師匠が秘匿していた術で是非師匠に弟子入りしたいので居場所を教えてくれとやって来た。ところが師匠はその肝心の【転移門】を使って居所が知れない。それから僕とマサオの師匠を探す冒険の旅が始まったんだ。楽しかったなあ。あの時が人生で一番楽しかった。
旅の中ではどんどん仲間が増えていった。ケンカを吹っかけて来たエルフ、ケンカを吹っかけて来た天使、ケンカを吹っかけて来た鬼、ケンカを吹っかけて来たドラゴン、ケンカを吹っかけて来たマーメイドetc、最後に…ケンカを吹っかけて来た勇者。
最後のはタチが悪かったなあ。
勇者を跳ね返して跳ね返して、仲間にしたら聖王国に勇者を倒したマサオは【魔王】呼ばわれされて人間の王国と戦争になったもんな。王国の亜人達を引き連れて魔王国まで作る羽目になって…未だに僕と仲間の九人は魔王国の運営に四苦八苦だよ。忙しいのに知らんうちに七人に種ばら撒いて貴重な人材に子育ての負担をかけておいて自分は転移門でまだ冒険を続けている。いい加減大人になって魔王国運営に専念しろっての。
で、ある時ギルド学院の新入生で【魔王の眷族】ていうふざけたパーティー名を見つけて隠れて見にいったのさ。僕は副学院長だからね。
驚いたね。ばいんばいんのオッパイのくっそエロいエルフに龍の娘、鬼の魔導師。体格はともかく構成にはめっちゃ見覚えがある。まさしく【魔王の眷族】に存在する構成だ。最初は【魔王国十傑】に憧れる子供がふざけてつけたんだろうと気にも留めなかった。
が、彼女らが南西部ジャングルで起こった魔物のスタンピードを食い止めたと聞いて驚いた。あんなの止められる新人冒険者などいない。慌ててSクラスのグリュを現場に送ったら大笑いして戻って来た。
「息子がwwww女の子になってたwwww」
なんですと…?
聞けばあのばいんばいんのエルフがグリュの息子、ユートだっていうじゃないか。マジかよ⁉︎ 男を女に変えるエルフ驚異のテクノロジー(?)‼︎
え?しかも彼もハイエルフなの?グリュ以外片手で数えるくらいしか確認されてないんでしょ?その辺は世界樹の陰謀?…ふうんそっちの事情はよくわからないけど。
俄然【魔王の眷族】に興味が湧いたので学院行事にはマメに顔を出す事にした。魔術大会では 見事な魔術を見せてくれた。特にユートは見事な精霊魔術を駆使して観客の度肝を抜いた。
ほんの数ヶ月前まで異世界で育ち魔力の存在も知らなかった人間が突然手に入れたこれ程の能力。嫌な未来しか見えない。あいついつかやらかすぞ。
で三人の母親を呼び出して子供の実情を聞いてみた。するとリィカとレンは多分父親に逢いたいというのが学院にいる理由らしいと判明した。ほら見ろマサオのバカめ。子供をちゃんと愛してやれ。
問題はユートだ。彼は強制的に世界樹によってこの世界に戻され、ハイエルフにされた。当初の目的は母親をほっとけないから一刻も早く異世界に帰る事で、その為に魔王都にある転移門を使える魔王に会う事だったらしい。そもそも魔王が父親だって事も知らないのだ。
ところがこちらで母親と会って目的が霧散してしまった。
強大なハイエルフの力を持った魔王の息子が目的も持たずこの世界を彷徨いているのだ。
危険すぎるでしょ。
だから僕は次々と『課題』を与える事にした。まず上には上がいる、と解ってもらう為【真・魔王の眷族】をぶつけた。妹二人を魔王に合わせる、というのでどうせなら兄妹全員合わせてあげて、とハードルを上げた。これは正直かなり高いハードルだったので全員揃わなくても構わなかった。勇者マーサの娘が行方不明だったからである。
なのに。ユートは想像の上を行った。
【災厄】と言われた勇者に単身で立ち向かいこれを撃退し、二十年交流の無かった聖王国の反乱軍と渡りを付け、勇者が行方不明の妹だと突き止めた。
恐るべし妹への執念。
ある意味あっぱれ。
だけどやり過ぎよね。ユートの奴、【災厄】である勇者を魔王都で待つって言っちゃった。この魔王都のど真ん中に勇者を招待しちゃった。勇者は戦うつもりで来るんだろうし、聖王国も勇者一人で寄越すとは限らないよね。大隊で来たらどーすんだこのヤロー‼︎
頭を抱えながら僕は役職に就いている残りの十傑を呼び寄せる。ギルド統括庁長官ジンギ翁と魔王軍司令ミューラー。最悪首都決戦になりかねない△の月1日に備えて。
今日もキリキリ胃が痛い。




