30 姉妹会議Ⅱ
私病持ちなのでたまに体調悪くなります。ご容赦を。
ギルド学院寮のテラスに冬の柔らかい陽が差し込んでいる。テーブルの上にはカステラ、パンケーキ、チーズケーキ、羊羹etc…アクセントに醤油せんべいに揚げあられ…甘いの辛いの取り揃えたスイーツがズラリ。
ここにいるのは俺達モンマ兄妹…とミヤマさん。
委員長始め同級生のみんなは気を利かせて俺達だけにしてくれている。
アリエルは俺に抱きついてまだ離れない。というかカナコ達が怖いらしい。まあ殺されかけりゃなぁ。世の中は広いって判ったろう。…この子は謙虚ささえ覚えればやって行けると思うよ。
「ねーなんであたしクエストに出ちゃダメなのー?」
「アレは殺傷力が高過ぎて間違えて冒険者まで殺しちゃいそうだからダメ。」
「それこそギルド学院に入ればその辺の塩梅も学べるでござるよ。」
「んー…検討してみようかなぁ。」
ギョッとするアリエル。
「や、止めてくださいお姉さん…お姉さんが同期になったら最優秀生徒賞なんか取れなくなる…」
あわあわするアリエル。最優秀生徒賞はアリエルの母ガブリールさんの願い…だっけ。
せんべいをポリポリ食べながらカナコが真面目に聞いてくる。
「そもそもさ、兄さん本当に今年度の最優秀生徒賞取れるの?そこが父さんに会える大前提なんだからさ。」
一瞬ぎょっとする。リィカとレンもこっちを見る。
【魔王の眷族】の戦歴だけなら多分充分だと思うんだよな。前代未聞の『半年でランクを4つ上げたパーティー』だし。最優秀パーティーは間違いないと思う。が、正直個人の最優秀生徒賞はどうだろうと思ってる。何となくだがアレは講師陣のファン投票みたいなとこがあるのだ。
そして何故か俺は学院の講師陣に嫌われてるみたいなんだよなぁ…
多少講師陣に好かれようと頑張った時期もあるんだが後半は割とサークライの依頼で単独で飛び回っていたから正直講師陣がどう思っているかわからないのだ。
「妾らは頑張ったから大丈夫じゃ‼︎モグモグ。」
「お兄ちゃんは最強です。絶対最優秀生徒賞取ります‼︎僕知ってるよ。魔王国内で暴れてた【勇者】を追い払ったのユート兄だよね‼︎ そんなこの国の勇者を選ばないわけがないよ‼︎」
…死にかけたのは言ってないんだよなぁ。キラキラした目で見るなレンよ…。
そうだここでみんなに言っておく事があったのだ。
「…みんな。最優秀生徒賞の受賞式前に魔王都に1人ゲストを招待したんだ。」
「「「?」」」
そこにミヤマさんが割って入って一言。
「知ってますよユート様。貴方が聖グローザム王国で暴れて来た事。こちらの商工ギルド網であっという間に魔王国全土に広まりました。また伝説をお作りになられましたね。」
ミヤマさんが新聞を片手に会心の笑みで俺を褒め称える。その新聞…『魔王都日々新聞』の一面を見ると…
『聖王国に魔王の娘現る‼︎ 聖教会聖堂を破壊し勇者に宣戦布告‼︎』
ご丁寧に粉々になった聖堂の上で高笑いする美しいハイエルフのイラストまで。まるで見て来たかのように描かれている。てかまんまじゃねーか。ほんとに見てた誰かが描いたんじゃねえかなこれ⁉︎
妹ズが新聞に群がる。歓喜である。大喜びで記事を声に出して読む。
『魔王の娘は勇者に宣戦布告した。△の月1日魔王国魔王都のギルド学院にて待つ‼︎と』
「なぁにやってんのよ兄さん⁉︎」
「なんでこんな面白い事一人でやって来るんじゃああ兄上‼︎リィカも混ぜてくれよう‼︎」
「やっぱお兄ちゃんカッコいい‼︎ 僕たちの出来ない事を平然とやってのける‼︎そこに痺れる憧れるゥ‼︎」
いや、喜んでるけど△の月1日…ギルド学院の卒業式の日にここに勇者がやって来るんだぞ。
「ふふふ妾ら【魔王の眷族】が返り討ちにしてくれるわ‼︎」
慌てて俺が遮る。
「返り討ちにしちゃダメ‼︎ 妹だから‼︎ 最後の一人だから‼︎ 」
一斉に驚く妹ズ。
判るようにマーサさんとアベリアの事情を説明する。十年前に聖教会に拐われ勇者として洗脳されて育った事。マーサさんにアベリアを取り戻してと頼まれた事。
「だから当日ここに呼び出したんだ。」
「で、兄さん、呼び出してからどうするか決めてるの?」
「…当たって砕けるさ。」
決めてないのである。戦わないで身内の愛で何とかならないかなぁ…とまだ思ってる。
「バカじゃないの⁉︎決めてないの⁉︎どーすんの⁉︎」
俺が腹に穴を空けて死にかけたのをミカさんから聞いているのかカナコが猛烈に俺を責めたてるが、リィカとレンは能天気にうなづく。
「兄上なら心配いらんよな‼︎」
「お兄ちゃんは最強なのです‼︎」
俺はカナコにこれ以上言うなと目配せする。うぐぐと口籠るカナコ。
「まあどうにかなるさ。卒業式には兄妹全員で魔王に会いに行くぞ‼︎」
「「おー‼︎」」
とごまかしたが当日は一発勝負になる。兄ちゃんはやるよ。なるべく死なないように命がけで。




