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101 北半球の国際情勢

 あれから作ったお菓子を納品出来るように自由にトリーン師匠の研究室に出入り出来るように許可を得た。人見知りが過ぎて山奥に引っ込んだ師匠にしては随分と心を許してくれた気がする。

 しかし注意しなければいけない。トリーン師匠が心を許したのはエルフ女子である俺だ。本当の姿を見られたら多分拒否られる。


 最近の俺は風呂とトイレ以外はずっとエルフ姿だ。ほぼエルフとして生きていると言って過言ではない。だってとても便利なんだもん。空は飛べるし探知は出来るし魔法も使いやすいしエルフサイコー。この姿だと妹たちも抱きついて来てくれるしさ。もうむさい男の身体なんかに戻れないよ。



 研究所に出入りするようになって余りの部屋の荒れ放題に毎回掃除をして帰るようになった。師匠は物がわからなくなるからやめろと言うがが食事をするテーブルくらいは綺麗な方がいいだろう。

 掃除の時に出しっぱなしにしてある研究資料を纏める事もする。チラ見ながら資料の中身を見ると山脈向こうの諸国間の栄枯盛衰が事細かく記録されていた。


「…300年前から記録があるんですか。どうやって調べたんですかこんな古い出来事まで」

「そりゃ見て来たからに決まってるだろ」


 …そうだそうだこの方は伝説のロリババア悪魔だったのだ。500年生きてらっしゃるのだ。普通の人類ではなかろう。

 師匠はこの数百年の東部大陸の人の流れを研究しているようだ。【転移門】が人の暮らしにどう影響を及ぼすかを観察しているのだという。まるで【転移門】の責任を一人で抱えて生きているような、そんな空気を醸し出している。あまり深く問い詰めないほうがよいだろう。

 俺はこの資料が示している異変をあらためて問う。


「この数年で明らかに加速度的に多くの国が統合されているようなんですけど何があったんですか?」

「よくはわからん。国政には疎いんでな。傑出した指導者が現れたか悪魔が現れたかどちらかだろうな」


 関心なさそうに言い捨てる師匠。悪魔⁉︎ 悪魔って⁉︎


「頭のいい力のある悪魔が出現するとあっという間に地域を征服する事はよくある。マサオのようにな」


 まあ、考え方によると親父も悪魔、俺も悪魔って事なんだろう。転移門を潜って来た奴はみんな悪魔だ。


「ちょっと見てきていいすか?山向こうの国々の様子」

「危ないぞ。進んで戦乱に身を投じる事もなかろう?」

「師匠の気になってた山向こうのスイーツも出来たら体験して来たいし」

「再現できるかの⁉︎」

「お店があったらですけどね」


 興味なさげだった師匠が身を乗り出す。よし、わかったと早速山向こうの気になるお店の資料を揃え始めた。こことこことここは必須ね、とかのたまっておられる。スイーツ絡みだと現金な幼女である。


 という訳で師匠のお使いがてら山向こうの国々へ足を運ぶ事となったのである。




 山向こうの国々は正式には『アートリアム諸国群』と名乗っているらしい。多くの獣人社会の複合体である。土地は山脈からの豊富な水源があり肥沃な森林と平原を持ち人々はどの国の国民も飢えて死ぬような事はないという。砂漠の近くの東国連合と南国連盟は共に犬人コボルトの獣人社会だったがこちらは狼人や猫系動物の獣人や鳥類の獣人、いろいろな獣人がコロニーを形成してそれぞれ暮らしていた。そう、戦争を起こす理由が各国にはなかったのだ。


 ところが半年ほど前から北の狼人のコロニーから異変が起こった。飢餓が起こったわけでもないのに急に隣の猿人のコロニーを侵略し始めたのだ。支配者が変わったのだろうか、侵略というよりは疫病が蔓延するかのように戦乱が他のコロニーへと広がっていった。

 原因が思い浮かばない。突如発生した悪の天才が時に野心を抱き世界征服を挑んで来た、としか思えない。


 だが極力手は出さないように言い含められた。特に師匠は時の流れに任せるのが一番だという。エルフとして稀な能力を持っていても所詮一人の冒険者である俺に他国の為に出来ることなんてそうない。まあ、俺もそれは承知している。


 ただ妹たちに危険が迫らないように立ち回るだけである。妹命。妹LOVE。


 さて、この極寒の山脈の頂上から降りて行くのは中々の無茶である。エンシェントエルフの精霊魔法を駆使すれば寒さは何とか凌げるが視界ゼロの山の中を降って行くのは骨が折れる。普通に遭難してもおかしくないぞ。山は降る方が大変だというしね。

 どうしようかと少々悩んでいると師匠が昔下の街との通行に使用していたという転移門を教えてくれた。まあ当然あると思ってはいたんだけど出してくれないかな、とか少し思っていた。とにかくめんどくさがり屋なのだこの師匠は。

 俺はマイ転移銃にこの転移門をマークする。ちなみに転移銃を見るとトリーン師匠はサークライの笑顔を思い出して頭が痛くなるんだそうだ。嫌われ過ぎだろうよっぽどだなサークライ、一体師匠に何やらかしたんだ?今度ちゃんと親父に聞いておこう。



 転移門を潜ってやって来た街は師匠の話だと狼人ライカンスロープのコロニーだったと聞いていた。コロニー間の戦争のきっかけを起こした国だ。発端の国であるからには各国から搾取しているわけだから国内は豊かであろうと想像していた。

 そんな事はまるでなかった。


 思っても見なかったほど荒れ果てていたのだ。

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