100 スイーツ解析
さて屋敷に戻ってカトレア母さんに許可を得てキッチンの一角を借り切る形で作業場とする。
我ながらでかい口を叩いたと思う。店で売ってる商品を再現できる、なんて言い過ぎにも程がある。
だが、俺の特技。エルフになる前からの門馬優斗が元々持っていた特技がひとつだけある。それが『食った味の再現』なのだ。
グリュエラ母さんと二人暮らしだった時、三度の食事は全部俺が作っていた。お金がそれほどない家計でたまの外食(サイゼ◯ア等)で覚えた料理をどう再現するかで頭を捻りまくった成果だ。
元々持っていたその能力がエルフになって更に磨かれることになった。
風(樹木)の精霊と土の精霊を身体に降ろして食事をするとその料理を構成する食材を分析する事が出来るのだ。使われる農産物・畜産物・海産物・香辛料etc…料理の中の構成・比率まで精霊が教えてくれるようになった。
なので日本で大人気のスイーツ店で売ってる品物を買っては自分で再現しては妹たちに振る舞うなんて事を日々繰り返していたのだ。お店の人たちごめんなさい。
さて、問題は時間だ。この国の農産物を全て把握しているわけじゃないから下処理とか細かい扱い方を間違えると味が台無しになる事も多い。そのトライ&エラーが出来る時間は多分ない。
心してトリーン師匠から預かったスイーツサンプルをひとつひとつ観察し、レシピをメモりながら製法を巻き戻して想像し、口にして成分を分析していく。地球ほどじゃないが魔人国も移民でありながら文化が深いので知らない技術とかも使われているようで分析も一筋縄ではいかない。そこは精霊に訊ねるとこの地の妖精から聞き取りをしてくれてこれこれこういう素材だと教えてくれる。とても助かる。
「このパイ生地は3つ折りを6回でいいのかな?」
「妖精はそうだと言ってます」
「このベリーはどこで取れるのかな?」
「魔人国南西部のイーズン諸島の特産品ですって」
「このジャムは…」
俺の疑問を次々と解決していってくれる風と土の精霊と魔人国内の妖精達。食べるかどうかわからないが完成したら彼女たちにも当然お裾分けだ。
ひとつ解析を完了してはレシピをノートに書き写しそれを忠実に再現してスイーツを作る。味見役には首都のスイーツ名店を全て食べ歩いたと豪語する魔人国防衛隊のピンク…ジュリア女史にお願いしてある。彼女の目の前に次々と一口サイズの試食用スイーツがわんこそばのように並べられていく。皿には付箋がつけられてスイーツの名前が書かれている。ひとつひとつジュリアさんが味をチェックして気になった点があればメモを皿に貼り付けていく。
「うそー⁉︎まんまお店の味そのものじゃない⁉︎本当に買って来たものじゃないのー?」
「まったく同じ食材を用意出来なかったものもあるのでまんまお店の味とは言えないものもあるけどどうかな?味が落ちてたら言ってね」
「美味しーいどれもこれも美味しーい‼︎」
評判は上々だ。カトレア母さんや屋敷のメイドさんたちにも試食してもらう。まったく同じにならない品物をどれだけ近づけていけるかが勝負だ。市場に出回らない素材が手強い。店が直接生産者から仕入れてるケースだ。そういう手に入らない素材は奥の手として土の精霊に頼んで栽培してもらったりしてる。非常にずるい手で申し訳ない。
二週間後。様子を見に来たトリーン師匠にそうして出来上がったサンプルを試食してもらう。
50種一通り食べ尽くすのに30分とかからなかった。
「本当にこれをお主が作ったのか…?店で買ったのではないのか?」
「作りましたよ。ちょっと高位エルフの秘技を使いましたけどね。わたしにもかなりの勉強になりました。ありがとうございます」
パティシエとしてのスキルが格段に上がった気がする。この世界にパラメーターがあったらぜひ見てみたい。
「あらためてお願いするのだ。それぞれを毎月200個づつ納入してほしいのだ」
一月千個‼︎完全に本職並ですね‼︎ようがす‼︎
「それから前回作ってもらったしょっぱいお菓子、あれも追加で200セットくれ‼︎」
「しょっぱいお菓子は他にも沢山あります。一通り試食なさりますか?」
「おおう、ぜひ‼︎」
【ボックス】からストックの醤油せんべい、塩せんべい、海苔巻き、えびせん、ポテトチップスなどなどを出して師匠に差し出す。ポテチは大人気だった。
繰り返すようだが師匠の注文品は原価以外料金は頂かない。カトレア母さんたちにも屋敷用のスイーツをお願いされたが上級市民はそれなりの国費で存在を補填されてるのだからお店で買ってもらおう。でないと参考にした名店の経営者たちに申し訳ない。
ま、でも家族に作ってとせがまれたらもちろん作りますけどね。
これでトリーン師匠に【転移門】の謎を根掘り葉掘り聞けるぞ。
ストック切れで更新がしばらく止まります。気長にお待ち下さい。




