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97 スイーツ荒らし

遅くなりましたすみません。

 魔人国首都の商業地区。魔人国は魔王国ほど貧富の差がない社会なので国民総中流というイメージで商店は常に賑わっている。何しろこの国には電力が存在するのだ。文化レベルは魔王国より高い。服飾や料理では観るべきものがある。


 まあ女性だらけの集団なので有無を言わさず服飾店へ直行だ。このお店はカトレアさん御用達らしくぞろぞろと店員総出じゃないかと思われる程の人数が竜車を迎えていた。


「今日はよろしくね」


 一言カトレアさんが声をかけると店は貸し切りになってるようで皆が自由に店内を見て回れるように配慮されていた。うーんこれがセレブの所作か。


 服に関しては以前からみんなの話題には上っていたらしいのだが、とにかく俺の服のバリエーションが足りないらしい。基本革製の冒険者仕様のエルフ服か母ちゃんのお下がりのエルフ服しか着ない俺に家族は常に勿体ないを連発していたのだった。

 自分で言うのもなんだが兄妹の中ではダントツのナイスバディなのだ。タッパもあるのでモデル体型と言われる。服飾好きの屋敷付きのメイドたちは俺にどんな服が似合うか常に激論をかわしているとの噂だ。レン情報だが。


 こんな自分の服に無頓着な俺にも服に関してひとつだけ夢があった。兄妹みんなで同じ服を着てみたい。ペアルック?七人だとどう言うのか知らないがみんなで同じ服を…

 服飾店に入ってポロっと願望を口にしてしまった。カナコがそれを聞き逃さなかった。


「みんな‼︎兄ちゃんの言質を取ったわ‼︎みんなで着れる可愛い服を選ぶのよー‼︎」

「「「「おー‼︎」」」」

「なのじゃー‼︎」


 いやカナコ、可愛い服とは言ってないぞ‼︎俺も着れる服をだな…世界樹ちゃんまで混ざって…まあいいか妹みたいなもんだしな…


 流石に日本の買い物に慣れているカナコが音頭を取ったせいか華美な貴族的衣装とかではなくシンプルでリーズナブルなワンピースが選ばれたようだ。派手な柄が好きなリィカと柄の選択で揉めているようだ。


「その間にユートくんのフォーマルな衣装を合わせましょう」


 そう言うカトレアさんに手を引かれ次々とヤバげな衣装を合わせて行く。これがオススメと手渡されたのはベルバラのオスカ◯様風の騎士服だ。白いパンツスーツが眩しい。ああ、似合いそうだ、と我ながら思う。


「都庁に登庁する時はこれを着ると良いですよ」


 と、カトレアさんがニッコリ。エルフ猟服では失礼なのかも知れない。え、じゃなくて扇情的で庁舎の男性の目の毒?

 うーんその方向への気遣いはなかった。

 すまんこってす。


 結局服飾に無頓着な俺の意見はまるで通らずみんなが好き勝手に俺の服を選んだ。もちろん自分たちの服もだ。お金はカトレアさんが払うと言ったが長男の行持もあるので俺が持ちますと多少のやり取りののち半々の支払いとなった。なんか日本人的なやり取りを異世界でやってる自分がおかしくなる。


 お揃いのワンピースを兄妹みんなで着ている写真を早く撮りたい…


 店舗を出てもう一つの目的『美味いスイーツ店』めぐりを開始する。この国の特色として南方の海に近い地域は暖かくカカオやコーヒー・サトウキビに酷似した農産品や南国系フルーツなどが特産だ。

 つまりスイーツに関する進化がすごいという訳だ。魔大陸や現代日本とはまた違う物が見られるかも知れない。俺はレパートリーを増やしたいのでぜひ立ち寄りたかった場所だった。


 スイーツに関しては目の色が変わるドラゴン娘・リィカはタウンガイドを手にして気になるスイーツ店を全てチェックしていた。50軒くらいあるぞ、今日1日で回るのは無理だろ。季節物もあるしな。今はこの大陸は秋冬のスイーツが溢れていた。


 早速一軒目から攻めていく。猛烈にトロトロな焼き芋の様な穀物だ。日本の焼き芋のクオリティに迫る芋だなこれ。カップに盛られてマッシュポテトの様なスタイルだ。


「「「あまーい」」」

「「「おいしーい」」」

「「「あつあつっ」」」

「のじゃー」


 幼い妹組や世界樹ちゃんにも大好評だ。いいのか世界樹ちゃんそんなの食って?


 すると店舗の横の壁におかしな物を見つけた。人相書きのようなイラストだ。

 銀色の髪でモノクルがチャームポイントの人族の少女のイラストだ。

 店員さんに聞いてみる。


「なんですこのイラストの人?」

「ああ、季節ごとにやって来てはこの辺りの甘味屋を食い潰していく客でね。金払いはいいがとにかく食い尽くしていくのでこのポスターが貼ってある店には出禁になっているのさ。通称『スイーツ荒らし』と言われている異邦人だ」


 魔人以外の人類は異邦人と呼ばれている。よくよく見てみると行く店行く店にあのイラストが貼ってある。相当食い尽くしてるな『スイーツ荒らし』。既に目的にしていたスイーツ店の目玉商品が在庫切れな店が何軒か見受けられた。

 

「むきぃ〜‼︎」


 目的のスイーツが食べられなかったリィカに我慢の限界が来たようだ。というかあろう事か路上で泣き出した。みんなで必死になだめる。何しろドラゴンだ暴れ出したら止められない。最悪俺が品物を再現して食わせてあげる事も考える。


 すると目の前の店から転がるように人が飛び出て来た。


「むきぃ〜どいつもこいつも出禁出禁って‼︎ 人種差別じゃないの〜⁉︎」


 ヤバい事を口にしながら目に涙を溜めている銀色の髪の少女、というより幼女。右眼にモノクルを着けた人間種。まさかうーん。


「「「スイーツ荒らし⁉︎」」」


 リィカたちが憎しみを込めて叫ぶ。いやいや犯罪者じゃないんだから憎しみをぶつけないで。お兄ちゃん切なくなるよ。

 いや、それよりもだ。

 そばにいた世界樹ちゃんが幼女を見て叫ぶ。


「トリーン‼︎ なんでここにいるのじゃ⁉︎」


 やはりそのようだ。俺も改めて幼女に声をかける。


「すみませんもしかして…トリーン師匠じゃありませんか?」


 俺を見てびくんとする幼女。これは相当な人見知りか?聞いていた通りなのか?人里には滅多に出てこないと聞いたがどういう訳だろう?普段は何処に住んでらっしゃるのか?色々気になる。


「…お主、魔大陸の者じゃな?なぜその精霊と共におる?何が目的じゃ?なぜわしを知っておる?」


 口調が急に老師風になったぞ。ここは礼を尽くそう。


「失礼しました。初めまして、私はトリーン師匠の弟子マサオの長子ユートでございます。以前より師匠のお話ははサークライから聞き及んでおりまして…」

「サ、サークライ⁉︎」


 聞いた途端逃げ出そうとする幼女。何したんだサークライ。


「いやすみません。ここでお会い出来たのも僥倖、ぜひ私たちの屋敷に立ち寄っていただけませんか。おもてなしさせていただきたく思います」

「…い、いや遠慮させて…」

「私の手作りでよろしければ甘味を幾つかご用意させて頂きますが」


 甘味と聞いて動きが止まる幼女。リィカが追い討ちをかける。


「ユート兄はスイーツの天才なのじゃ‼︎ 大抵の店の味は自分で作る事が出来るのじゃぞ‼︎」


 ミーユや世界樹ちゃんも追い討ちをかける。


「ご飯も美味しいんだよー‼︎師匠ーお父さんの師匠なんでしょー?お父さんもいるよーおうちに来てー」

「マ、マサオがおるのか…」


 なんかホッとしたようだ。マサオはサークライよりは信頼されているらしい。


「それではぜひ」


 そう言ってカトレアさんが駐機場から竜車を呼び寄せる。思わぬ賓客を連れて屋敷に戻る事になった。


 トリーン師匠は幼女に見えるが【転移門】を潜って千年単位で生きている悪魔だ。なので小声でカナコたちに歳の事は聞かないように念を押した。

完全にストックがなくなりましたのでしばらくは水曜日のみの更新とさせて頂きます。

筆が遅くてすみません。

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