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遅いよね




 夜堂はにゲームセンターを引き上げ、希子と希子の友人達と一緒に居た。

 ちなみに不良二人は、ディガンマの下っ端に連れて行かせた。希子には警察に連れて行くと伝えてある。

 

 希子は夜堂をしきりに見て、希子の友人も夜堂の事をチラチラと見ていた。

「夜堂君 さっきはありがとね。でも、なんであそこに夜堂君が居たの?」

「ん? なんでさっきは居たか? ちょうど今日は仕事が無くてな。ちょうどゲームセンターを覗いたらっ…てな」

 夜堂は思い付きの状況説明を言い放った。

 希子は納得したようで、首をコクコクと縦に揺らしていた。

 そして、相変わらず希子の友人はチラチラと夜堂を見ていた。

 護衛に丁度いいと思って希子について来た夜堂だが、希子の友人の視線が少々痛い上に、同年代との接し方がイマイチ分からなかった。

「なぁ、希子。今は何か目的地とか有るのか?」

 話の切り口を探そうと夜堂が希子に喋り掛けた。

「? 私は無いよ」

 夜堂はそこで話が切れてしまうと感じた。

「じゃぁ何処かカフェでも寄るか?」

 話を切らさない為に夜堂はカフェへと希子たちを誘った。

「うん。いいよー みんなは行く?」

 希子は二つ返事で答えて、友人達にカフェへの同行の有無を聞いた。

 希子の友人達は見合って少しして頷き、カフェへの同行の返事をくれた。

「じゃぁ行こっか」

 夜堂はココ周辺のカフェは知らないので、フィアから聞いた紅茶の美味しいカフェへと足を運んだ。

 



   ‡




 夜堂は希子と希子の友人と共に目的のカフェへと訪れていた。

 戸を開けるとカウベルの音がした。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 お決まりの言葉が聞こえて来た。

 カフェのカウンターには髭を蓄えた年配の男性が革製のエプロンを付けて、ポットを手に立っていた。

「四名です」

 夜堂はそう答えると、唯一ある四人掛けのテーブル席へと促された」

 夜堂達は四人掛けのテーブルへと向かい席へと着いた。

 夜堂と希子は向かい合うように座ったため、希子の友人は若干気まずそうな面持ちで夜堂の隣に座った。

 希子が先ほどのことを問いかけてきた。

「あ、そういえばあのまま来て良かったの?」

「ん? あぁ 多分大丈夫だろう。あいつ等は店員がどうにかするだろうし、気にしなくて大丈夫だろうな」

 夜堂は言葉足らずな説明をした。

 希子の友人達が気まずそうな笑いで、夜堂から目をそらした。

 夜堂だけはニコニコとしていた。

 夜堂は少しだけあこがれていた、同年代とのふつう《・・・》の交友ができて機嫌がよかった。

「あ、あぁうん。夜堂君が大丈夫ならいいの? かな?」

 希子は夜堂の様子に仕方がないといった様子で、先ほどのことについて聞くのを諦めた。

 希子はメニュー表から顔を上げた。

「あ、ごめん。ごめん。亥月と玲に言ってなかったよね? 紹介するね。彼が私が中学生の時初めてできた友人であり、最近再会をはたした友人だよ! 夜堂君です!」

 希子の友人…吉原 亥月いつきと三好 あきらに夜堂の事を紹介した。

 夜堂は紹介され、吉原 亥月と三好 玲へと挨拶した。

「改めまして。希子の友人の夜堂と申します。希子と仲良くしてくださって本当にありがとうございます」

 夜堂にあいさつされ、夜堂の隣に座っていた三好がヘコヘコとお辞儀して夜堂へと返事を返した。

「こ、こちらこそ、お世話に? なっております? これからも宜しくお願いします」

 少々疑問符のちらつく返答だったが、夜堂はいつものような、堅苦しくない挨拶を新鮮に感じ先ほど以上にニコニコし始めた。

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」

 一方、このやり取りを吉原 亥月は冷めた目で流し見ていた。

 



 希子はメニュー表を見るのに忙しいらしく、一人でいる夜堂へと三好がしきりに喋りかけていた。

「夜堂さんは同い年だったんですね⁈」

「えぇ、なのでさん《・・》をつけなくて結構ですよ」

「いえいえ、夜堂さんも敬語使わなくても大丈夫です」

「じゃあ、そうですね…私は敬語を辞めます。なので、三好さん。敬語や、さん《・・》をやめましょうか? どうでしょう?」

「え? は、はい。そうしましょう。夜堂さん…じゃない、じゃない。そうしましょう、夜堂くん」

「えぇ。よろしく。三好」

 その後も三好と夜堂は談笑を続けていた。

 

「夜堂~ これと、これ~頼んでいい?」

 メニューを選び終わったらしい希子が夜堂にメニュー表を見せ、選んだモノを頼んでいいかと、聞いてきた。

「あぁ、大丈夫だ。好きに頼んでくれ」

「ん。わかったよ~」

 そういって、希子はマスターへと注文を取り付けた。




 希子の注文した物や、亥月と三好の注文した物がテーブルへと運ばれていた。

 希子と三好はシフォンケーキと紅茶を、亥月はエスプレッソコーヒーを、そして、夜堂は茶葉を聞いて指定した紅茶を手に取っていた。

「夜堂君の紅茶は何か違うの?」

 希子はふと、自分の飲んでいた紅茶と夜堂の紅茶を見比べた。

「あぁ 俺の紅茶か? 俺のはアッサムって言って、味の強いモノだな。一口飲むか?」

 夜堂がそう問いかけると、希子は夜堂の手からティーカップを取り、紅茶を啜った。

 紅茶を啜った希子の表情はクチャっとなってしまった。

「ちょっと、渋い…ストレート? だよね…ミルクティーにしたほうが好みかな…」

「っは ひでぇ顔だなぁ、まぁ俺はストレート派だからなぁ。味の強いコイツが好きなんだ」

 希子の顔を見て噴き出しながら夜堂は語った。

 



 夜堂は時間を見ながら、希子たちの料理を見て一度席を立った。

「ん? 夜堂?」

「支払いよ。支払い」

 右のパンツのポケットを叩きながら、希子に答えた。

 カウンターへと向かい、マスターに話しかけた。

「四人分」

 マスターは夜堂の言葉に少し驚いている。

「お兄さん、彼女さんの分だけじゃないのかい?」

 マスターの言葉に夜堂ははにかんで答える。

「いやぁ、そんな関係じゃ無いです、まぁ取り合えずあのテーブルの分を」

「ほぅ…そうだったのか…四人分と、三千百二十円だね」

 パンツの右ポケットから財布を取り出し、万券が覗くその中からカードを出した。

「カードは大丈夫ですか?」

 マスターは二、三度頷いて、カードを受け取りカードリーダーに差し込んだ。

「じゃ、番号を」

 カードリーダのテンキーに四桁の暗証番号を打ち込んだ。

 マスターはレジスターの表示を見て、カードを抜き、夜堂に返した。

「カードの領収証ね」

 夜堂はカードと領収証を受け取り、支払いを済ませテーブルに戻った。


 希子はケーキと紅茶を食べ終わり、三好と談笑に花を咲かせていた。

 夜堂は邪魔するまいと、静かに椅子についた。

「終わった?」

 支払いの事を聞いてきたのだろう。

「あぁ」

 簡潔に夜堂は答えた。

 全員飲み、食べ終わっていた。

 希子は荷物を手に取り、帰る準備を済ませた。

「じゃ、行こっか」

 希子に反応して、三好と亥月が立ち上がり、財布を取り出して夜堂と同じくマスターのいるカウンターへと向かった。

 亥月と三好がテーブルを指さし、マスターに支払いの値段を聞いた。

「? お代はもう貰ってるよ?」

 マスターは目を丸くして、二人を見た。そして、そのまま夜堂へと目線を移した。

 視線を感じた夜堂がカウンターへと向くと、亥月と三好、マスターが目を丸くして夜堂を見ていた。夜堂も一瞬目を丸くする。

「あ。三好、吉原さん。お代はもうお支払いしてあります。言うのを忘れてましたね」

「え⁈ いえいえ、そんな御いくらでした⁇ 払います!」

 三好が財布を持って夜堂に詰め寄る。

「いいです。いいです」

 夜堂はそう言って、財布を持つ三好の手を下げさせた。

 一方、亥月は少し眉間に皺を寄せて夜堂の下へと詰めてきた。

「俺はまだ アンタに奢られる理由がねぇ」

 亥月は夜堂の肩口に千円札を押し付けた。

「…あぁ」

 夜堂は亥月の千円札を受け取り、ポケットへとしまい込んだ。

 亥月は夜堂に目もくれず、カフェの扉を押し開けて帰って行ってしまった。

 夜堂は少し困った表情で、亥月の背中を視界の端に捉えていた。

「…俺が何か不快にさせてしまったのか?」

 一般人の考えが理解できず、セーフハウスで遊び、夜を過ごした悪い《・・》友人達の姿が過った。

 希子はほんのり寂しそうな表情をしていた夜堂を見て、何故か同じ表情を作ってしまっていた。寂しさを夜堂と共有して、話しかける話題のない今に、三年の間に出来た大きな壁、あるいは谷を想像した。

 何とかして会話の糸口を探し、手繰った。

「あ、そうだ、夜堂君って携帯持ってるよね?」

 先日あったときに連絡先を交換してない事を思い出し、それをダシに話しかけた。

「持ってるぞ。そういえば、この前会ったときに連絡先言ってなかったな」

 夜堂も同じことを考えていたのか、携帯電話を取り出し始めた。

「おっと、その前にいったん店から出よう」

 夜堂は携帯電話を取り出したところで、カフェの入り口近くに居座っている状態に気が付いた。

 希子と三好を出口へ促した。

「さぁさぁ 行って行って」

 希子と三好が一足先に店を出る。

「ごちそうさま」

 夜堂はカウンターの中にいるマスターに一言声を掛け店を後にした。




「夜堂君ってSMSとかやってる?」

「いや、やってないな」

「今時珍しいね」

「まぁな。やる相手が居なかったしな」

 夜堂にとっては何気ななく言った言葉だったが、希子には痛く刺さった。

「まぁいいだろ、メールと電話番号は…どうやって出すんだ…?」

 送信されてくる情報を確認する以外の使用をして来なかった夜堂は、自分からメールアドレスや電話番号を伝える機会など無かった為に、携帯電話の操作法がいまいち理解できていなかった。

「えっとね、電話帳のトップに自分って表示されてるところに書いてあるよ」

 希子が携帯電話の使い方を理解していない夜堂に懇切丁寧に教えてくれた。

「?…?…! できた、できた」

 携帯電話に表示されるメールアドレスと電話番号を希子に見せた。

「うん これだね」

「入力できたか?」

 夜堂が画面を切り替えようとする。

「あ、夜堂くん。私も…」

「三好もか?」

 三好も連絡先を聞いてきた。夜堂は画面を戻し、三好へと見せた。

「あぁ、希子。俺はこのテンキー入力が苦手だから一回メールと電話くれれば登録しとく。そのやり方なら知ってるしな」

「わかったよ~」

 希子は聞きながら夜堂へのメールを打ち、送信した。

 夜堂の携帯電話の通知が鳴った。

「入力終わったか?」

 三好に確認を取り、夜堂はメールを確認した。

「(件名:初送信 本文  )」

 希子から本文無しのメールを受け取り、そのアドレスを電話帳に登録した。

 夜堂がふと携帯電話の右上を見ると、時刻は17時30分を回っていた。

「希子、もう時間が遅いぞ? そろそろ帰らなくていいのか?」

 夜堂に言われ、希子が思い出したように時間を確認した。

「おわっ⁈ もうこんな時間⁇ 家まで18時に着かないじゃん」

「じゃあ、三好もそろそろ帰ったほうが良いだろうし、解散するか」

 三好も時間が遅い事に少し慌てている。

「そうですね。私も遅くなると行けないのでそろそろ帰ります」

「それじゃ」

 夜堂は三好に手を振り、三好は夜堂に手を振り返した。

「ほら、希子。行くぞ」

 夜堂は希子の手を引き、項垂れる希子を帰宅に導いた。




   ‡




 三好は夜堂に手を引かれる希子を見送った。

最後まで読んでいただき有難うございます。

亀更新だとは思いますが、お付き合い下さい。


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