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何かこれじゃない感がしたので題名を変更しました
残る四人のフェイスマスク…Gファミリーの襲撃者ががゆっくりと近づいて来る。
夜堂のデトニクスを構える手が白く変わっていく。
先走った男以外は、手練れの様だ。微動だにせず、拳銃を握る手にも変わりはない。
埒が明かないと、夜堂は思ってしまった。
スラムでの銃撃戦、海賊との戦いは慣れているが、都市で、殺しのプロフェッショナルと戦うのは初めての経験だった。
夜堂が発砲した。
Gファミリーの四人には、夜堂の拳銃発砲の兆候が見えていたのだろう。夜堂が放った弾丸は虚空を切る。
希子の父は、夜堂が発砲した瞬間、体を屈めGファミリーの元へと走って行く。
Gファミリーの襲撃者から、サプレッサー付きの拳銃が向けられる。
希子の父は拳銃を向けた相手に、恐ろしい速度の早撃ちをプレゼントした。
だが、放たれた銃弾は掠るだけにとどまり、Gファミリーの襲撃者は一瞬たじろいたが、希子の父へと拳銃の照準を合わせた。
希子の父は拳銃の狙いから外れようとするが、既にもう一人が横へと回り込もうとしていた。
「クソッ さっさと死ねばいいモノを…」
希子の父は動きを止めず、右へ左へと動き続ける。
Gファミリーの襲撃者は、動き続ける希子の父を拳銃の銃口で追いかける。
だが、希子の父もプロフェッショナルである。
起用に襲撃者の射線から逃れる。ぐるぐると、襲撃者の周りを囲むように走り続けている。希子の父は一瞬動きを止める。
銃声が二回とどろいた。
そこには、一人汗を流して立つ希子の父の姿があった。
希子の父は、襲撃者の射線が重なる様に位置を取り、今か今かと引き金を引こうとする襲撃者を煽った。そして、一瞬動きを止め襲撃者の同士討ちを誘発させた。
二発分の銃声を聞き、思わず視線がそれてしまう。
夜堂と対していた襲撃者は、隙を逃すことは無く、抜身のナイフを突き出して来た。
「…っく」
防刃のコートをナイフが滑る。
己の不注意が招いた事に、冷や汗をかいた。
夜堂のデトニクスが素早く二回発砲《ダブルタップ 》された。
今まで夜堂の動きを読んでいた襲撃者だが、苦し紛れになんの予備動作もさく発砲された弾丸を避ける事は出来なかった。
二人いる襲撃者のうち、夜堂にナイフを突き出した一人は肩に弾丸を受けた。二人目は一人目に隠れ、夜堂の動きが見ていなかった。為に、弾丸を脳天に喰らっていた。
強靭な繊維を使って作られた戦闘服だからか、弾丸は貫通せず勢いを保ったまま襲撃者を吹っ 飛ばした。
二人目は、言わずもがな脳天を弾かれ脳漿をぶちまけた。
「……痛いねぇ」
肩に弾丸を受けた襲撃者が、ぼそりと呟いた。
呟かれたのが女の声だったことに動揺したが、夜堂はすぐに止めを刺しにと襲撃者の元へ向かう。
「うるせぇ…どうせ薬打ってんだろ、痛い訳がねぇ」
襲撃者の眉間へと照準を合わせる。
「カッカッカ 厳しぃね。 薬打ってもちょっとは痛いんだよ」
襲撃者の戯言をバックミュージックに引き金へと力を込めて行く。
銃声が響いた。
夜堂は、急いで希子の父の元へと向かう。
希子の父は、脇腹、太ももから大量に出血していた。
希子の父が始末したと思っていた、襲撃者は死んだも同然だったが薬のおかげでかろうじて動く事が出来たようだ。地に伏していた二人の襲撃者は希子の父を貫いた。
希子の父を撃ち抜きこと切れた襲撃者は夜堂に最後の止めを刺される。
夜堂は、二人の襲撃者を確実に始末し、希子の父の元へ駆けつけた。
「お、おい」
「……油断した…前線から…離れすぎたか…」
希子の父が喋るたび、喋りに合わせて脇腹がひどく出血する。
「しゃべるな!」
「今から言う事を覚えろ…希子を守れ、あ、アレは鍵だ…Fが築いた物を開くためのな…そ、して……ガハッ」
肺も傷つけたのか吐血する。
「お……まぁぇも かぁぎぎ」
「おい! おい!」
希子の父は倒れた。
「あ、おっさん死んだ」
夜堂の背後に先ほどまで銃口を突き付けていた女が立っている。
夜堂は背後に立たれては、どうしようも無いと、希子の父を丁寧に地面に寝かし瞼を下した。
後ろを向く。
「何の用だ。どうして銃を向けない?」
女は無手で立っていた。
「銃を向けても意味が無いからね。まぁわかるよ」
襲撃者は覆面を脱いだ。
レイヤーショートの金髪を靡かせた美女が顔を表した。
「ノーメイクは恥ずかしいわね。 この顔、覚えておいてね」
夜堂の顔を両手ではさみ、夜堂の目をジッと見つめた。
「じゃぁね」
金髪美女は手を振り、走って姿をくらました。
黒いコートを着た男が五、六人走って来る。
Fファミリーの構成員だろう。
夜堂は、駆け寄って来た構成員に、希子の父が死んだことを伝えた。
すぐに希子の父の死体はどこかへと移送された。
襲撃者の死体も移送され、今までの戦いの後は見えなくなってしまった。
夜堂は、綺麗に元通りになってしまった道を見て、希子の家へと戻った。
希子の家へと入って、リビングに向かう。
「あぁ 希子。すまない。ちょっと急用ができた。帰らせてもらう」
夜堂は、リビングを出てすぐに玄関へと向かう。
足早に去る夜堂を希子が追いかけた。
「え⁈ ちょ? …うん」
希子は焦りながら去る夜堂の様子を不可解に思いながら見送った。
「? どうしたんだろ? ぅーん 分からん」
希子は疑問に思いつつも、ソレを忘れ中学時代の夜堂を知る友人に夜堂と会った事を伝えまくった。
‡
夜堂の足音が荒く響く。
ボスの部屋へと向かい歩いている。
ボスの部屋の扉をノックする。
「夜堂か? 入れ」
その言葉を聞いて夜堂は扉を開けた。
肩で息をしながら、声を荒げた。
「ボス! 叔父貴! なんで、希子がいる事を伝えてくれなかったんですか⁈ 希子の親父も俺を知ってることも、俺を見つけた本人だって! なんで伝えてくれなかった! おい!」
珍しく怒鳴る夜堂の姿に、阿武隈が驚いた。
公河とボスは、夜堂が激怒することを見越していたのか驚いた様子もなく、静観している。
「……アイツは死んだのか…そうか」
だが、希子の父が死んだのはボスの予想外だったらしい。
「お前は、アイツから聞いたのか? 俺は今日お前にあの日の事を知ってほしかっただけだった…」
夜堂は激情に飲まれる中、死ぬ間際の希子の父の言葉を思い出した。
「カギだとか、守れだとかは言われた」
公河が片眉を上げた。
「そこまでは教えられたか。じゃぁ説明を始める。阿武隈、公河。席外せ」
阿武隈と公河がボスの言うとおりに、部屋から出て行った。
ボスはいつもの定位置である椅子を降り、ソファーに腰を落とした。夜堂にもソファーへとかけるよう促す。
「おう、座れ。話はちょっと長くなるかもしれん」
夜堂は、言葉に甘えソファーへと腰掛けた。
「…ふぅー どこから話すかな、まずは、お前の親父と希子についてだな。話は先代のボスまで遡るな」
(゜∀゜)最後まで読んだんだな!
ありがとう!