表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

14

 背後から何者かが駆け寄って来るのが分かった。

 夜堂と万泪が警戒するが、足音や息遣いを聞くに特に何かを企てていると言うわけでは無さそうだと、警戒を解いた。

「すみません。夜堂さんと万泪さんですよね?」

「あぁ」

 夜堂は振り返った。

 先ほどの会議に出席していた男が居た。

「初めまして。深山、深山睦郎ふかやま むつろうです」

 そう言って右手を差し出してきた。

 夜堂はその右手を握り返し握手をした。続けて深山は万泪にも握手を求め、二人との挨拶を済ませた。

「六道組の…方ですよね?」

 間違っていてはいけないと、夜堂は確認をした。

「はい。六道組で若中筆頭を拝命しております」

「これは、ご丁寧にどうも、夜堂と申します。ディガンマでは危機管理部、執行部の部長をしております」

 夜堂が深山と同じ様に階級を名乗り、スーツの襟を反して白金のバッジを見せた。

 深山は白金のバッジに肩眉を上げた。

「初めまして。万泪ばんれいと申します。危機管理課の物資管理部の係長をさせていただいております」

 万泪も同じくスーツの襟を反し、銀のバッジを見せた。

 深山はバッジの材質によって所持者の際限を現すシステムを知っていた様だった。

 夜堂は深山の反応を見て先ほどの白嵐会の若中とは違い、仕事をする上で交流を深める必要があると感じた。

「この後食事に行くんですが、深山さんもどうですか?」

 取り合えずと、食事に誘う所から初めてみた。

「おぉ、ありがとうございます。では、ご一緒させてもらいます」

 深山は食事と聞き昂然とした様子になり、三人はホテルの中にある中華料理屋へと意気軒昂と向かった。




   ‡




「いやぁ良いですね!」

 食事の席につき深山は子供の様に嬉しそうな様子で料理を待っていた。

 夜堂と万泪は予想以上の反応に少し驚いていた。

「——おい…あいつ何か…なんだ? やべぇぞ…」

「——だよなぁ…ちょっと、いや、大分変りモンだぞ…」

 二人が小声で話す。

「どうかされました?」

「「いやいや、何でもない」」

 深山に声を掛けられ、二人同時に首を振って否定した。

 特に会話が無い。

 初対面の相手だといくらでも話せる内容があるようだが、距離感と言うモノが邪魔をして中々会話まで発展しないモノである。

 しかも深山は他組織の人間。その関係をダメにしたくはない。

 一体何を話せばいいのか二人は考えあぐねていた。

「すみません」

 深山から話掛けられ、二人は少し挙動不審になった。

「は、はい」

 夜堂が返事をした。

「年齢聞いてませんでしたね」

 何が飛び出してくるか、構えていたが取り越し苦労だった。

 しかし、このタイミングで聞いてくる深山はやはり変わりモノなのかもしれない。

「あ、はい。言ってませんでしたね」

「改めまして、私は今年で十八歳です」

 夜堂は深山がほぼ同い年な事に驚いた。

「おぉ、そうなんですね。私は十七歳です!」

 深山は眉を上げ驚嘆した表情になった。

「二人とも若いねぇ~ 俺は今年で二十一です」

 そう言う万泪は言うほど老けてはいない。

「夜堂さんはタメだったんですね。万泪さんは同い年くらいと思ってました」

「そ、そうですね」

 最初の印象よりどんどんと距離感を詰めてくる。

 二人はすでに押され気味である。

「お二方とも敬語は大丈夫ですよ~]

 ニコニコと言われ、断る理由も無いので二人は敬語をやめた。

「あぁ、分かった」

「そ、そうだ…な」

「うん。俺も普通に話すね~」

 一言、二言話していると大皿に乗った料理が運ばれてきた。

「おぉ、来た来た」

 深山が並べられた大皿から早速小皿によそっていた。

 夜堂は万泪に耳打ちする。

「——あいつ…俺には計れない何かを持ってるな…」

「——俺にも計れん」

 万泪にも深山は計り知れない存在の様だった。

「どうかしました?」

「「いや、何でもない」」

 二人はそろって首を振った。




   ‡




 深山と二人は食事をするうちに自然と打ち解けて行った。

 帰りはランサーエボリューションⅥに乗せ、六道組まで送るほど打ち解ける事が出来たようだった。

 二人は六道組の裏手から車を発進させ、夜堂のセーフハウスに向かい始めた。

「しかし、深谷のヤツ面白いな」

 夜堂が中華屋の事を思い出し、万泪に話を振った。

「だな。いいやつだよ、あいつの拳銃古いやつらしいから今度新しいの買ってやるわ」

 万泪も深山の事はいたく気に入った様だ。

「しかし、白嵐会はどうするのかね?」

 深谷ともう一人の若手だった東条が出てきた。

 深山と違い、夜堂との関係は良くはないと白嵐会も知っているだろう。いまだに連絡も無く今白嵐会の連中との連携もどう取ればいいのか把握できていない。

 今回の希子の護衛、監視では指令を出すのは阿武隈か悠久になるが、現場での最高責任者は夜堂だ。深谷も同じく六道組の若中を統括する立場にある人間。今回の六道組の現場責任者になるのは深山だろう。二人の間での情報交換は多くなされているが、白嵐会だけ直接連絡の取れない状態で仕事にあたる事になってしまう。

 白嵐会からはいまだに夜堂には連絡は来ておらず明日からどうするか、夜堂は決めあぐねている。 

「結局、白嵐会から謝罪も何も無いからな。アレはそのままあの若いのが送られて来るんじゃないの?」

 万泪が他人事の様に言う。

「ちぇっ、お前は白嵐のと直接会わなくてもいいもんなぁ~」

 夜堂が悪態をつく。

 万泪はあくまで銃火器、武器の供給担当、なので今回の仕事では現場に出る必要はない。

「まぁ元々白嵐自体Fに協力的じゃないもんな」

 連絡や謝罪が無い事などを考えると、やはり白嵐会はFとの関係を良く思っていないのかもしれない。

 もともと白嵐会は土着の組織としてあったが、Fの日本支部が移転するさいにFの下部組織として吸収された組織になる。その際、白嵐会は六道組との対立もありFに強く抵抗してきたが、若い組員が先走りFの構成員を刺してしまったために下部組織にならざるを得なかった組織だ。

 今でもFに対する同族意識は無く、協力をする事を軽く見ているのかもしれなかった。

「仕方ないだろ、他の組織の事は。もともとうちだけでやる予定だったんだ。少し人足にんそくが増えただけ喜ぼうぜ」

「そうだな」


 セーフハウスに着くと、また時間をかけて駐車し、すぐに家の中へ入ってしまった。

「ただいま」

 夜堂は帰ったと知らせたが、返事が無い。

 一瞬何者かがフィアを襲ったかと考えたが、若干汚いいびきが聞こえて来たため、何となくアホらしくなってしまった。

 万泪はすぐさまトイレに駆け込んで行ってしまった。

 夜堂はリビングのソファーで寝ているフィアを起こしにかかった。

「起きろ~」

 少し揺するが反応は薄い。

「化粧くらい落とせ~」

 さらに強く揺するが反応はほぼ無い。

「おきろ~」

「うるさい…   化粧は…して…ない…」

 そう言ってまた寝てしまった。

 夜堂は起きる気が無いと悟った。

「しゃーない」

 今布団を敷いてある部屋が無いので、とりあえず自分の寝室に寝かせに行った。

「意外と重いよな。寝てる人間」

 そう言って腰を叩いているとトイレからベルトを締めていない万泪が出てきた。

「どうしたよ?」

「フィア運んできた」

「ごくろー」

 二人はそのままリビングに戻った。

 夜堂は冷蔵庫からコーラを取り出し、万泪は戸棚からウィスキーを取り出していた。

 氷を用意してコーラとウィスキーを飲み始める。やがて万泪は普段から持ち歩いている小型のパイプで煙をくゆらせ始め、夜堂は二本目のコーラを飲み始めた。

 二人はそのまま寝てしまい、翌日フィアに起こされ怒られる事となってしまった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ