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 初めての会場に駐車や入場に手間取ったが、十分に間に合う時刻に到着できた。

 地上十五階までエレベーターで上がって行く。

 今回は外部組織を交えての会議という事もあり、セキュリティの点からFの息がかかった組織ではあるが、Fが直接運営する会場では無く、初めての会場となった。

「しかし、ココ来るの初めてだな」

 万泪がエレベーターから地上が離れてゆくのを見ていた。

「あぁ、そういえば今日は何処の組織が来るんだっけ?」

 夜堂がそう聞くと、万泪は携帯電話を取り出し事前情報を確認した。

 携帯電話を開きメールフォームを確認する。

 今回は希子に関わる人員と希子の通う学校周辺を受け持っている組織が出席するようだった。

 希子の学校周辺を受け持っているのは六道組りくどうぐみ白嵐会びゃくらんかい言う、いわゆる極道組織だ。今回Gの銃の買い占めなども有り、一度情報交換もかねての会議が開催された。

「白嵐と六道だな」

「あ~ あそこか。そういや希子の学校のあたりだもんな」

 そう言っていると、株式会社フローライト様と書かれた立て看板が見えた。

 株式会社フローライトはFが表向きに活動するための企業であり、フローライトは古物売買を生業としている。

 会場に入ると人は未だまばらだった。

 夜堂は席を見回し、自分たちの席を探す。

 ボスである悠久の直属の部下である夜堂は上座に近い席が用意されていた。

 一方、万泪はボス直属と言うわけでは無いので、下座と言うわけでは無かったが、上座とは言えない席が用意されていた。

 しばしの時が過ぎるのを待つ。

 だんだんと席も埋まっていき、残るはボスの悠久の到着を待つのみとなった。

 遅れている訳では無いが、悠久一人が来ていないと言う状況の為、初顔の面々は苛立ちを隠せずにいるようだった。さらに上座に座る若造《夜堂》の事が気になるらしく、ちらちらと夜堂の顔をうかがっていた。

 やがて悠久が到着し、席に着いた。

「始めろ」

 治久がそう一言。

 席の用意されていない、つまりこの会議には雑務要員として参加している男がPCを操作する。

 青一色だったスクリーンに文字が映し出された。

「先ずはこの会議開催の理由は各々調べがついている事だろうから省かせてもらう。第一目標は萩田希子の心身を守る事。第二目標は活発化してきているGへの対抗策だ」

 萩田、その名が出た瞬間六道、白嵐の陣営からどよめきが聞こえた。

 白嵐の陣営の一人、取り分け若い男が手を上げて発言の許可を求めた。

「失礼。白嵐会で若中筆頭をやってます東条と言います。萩田研二の娘ですよね? 今更護衛が居るのでしょうか?」

 東条と名乗る男が問いかける。

 治久は東条へ目もくれず答えた。

「Gの動きが活発化しとる。研二の奴はGに相当恨まれてるはずだ。アイツが襲われた時点でアイツの家族を保護するのは当然だろう」

 治久はそう言いきった。

「ですが、私たちの組には直接の関与は有りませんし、ましてやFの組員でも無いのでしょう?」

「おい、東条…」

 東条は隣に座る中年に止められながらも言い続ける。

「萩田希子の護衛には私個人は協力する気が無いです」

 それを聞いた治久はため息をついて目を瞑ってしまった。

 もう一人ため息をついた人物が居た。

 六道組、若頭 藤田蓮三ふじたれんぞうである。

「おい。白嵐の若いの…お前何を言うとる。組に尽くした奴の家族を守るって話をしてんだ。ましてや俺らはFの協力団体やぞ。何を考えとるんか知らんが、大人しくしとけ。誰もお前の意見は聞いとらん。組に情報届けて、組の意見言うのがお前の仕事やろ。いい加減にしとけや」

 東条は少したじろいだ。

 悠久はそんな東条を無視して、プロジェクターの表示を変えるよう言った。

 スクリーンには、国内に流通する重火器の量の予測に、G事務所があるとされる場所での外国人目撃率の急激な上昇について映されていた。

「見ればわかるが、まぁ抗争準備の時と同じような動きをしてる。よって敵対団体、周辺の非友好団体に睨みを効かせる必要がある。それに半グレ使ってくる場合もあるからな、見回り要員も必要だ」

 外国人はアジア系を中心に集められており、万泪の様に孤児院や人間工場出身の人間を呼んだのだろう。治久が言ったように半グレにも注意を向けなければいけない。法改正から殺人、銃火器の使用の罪が重くなり、組織の人間を使った銃火器犯罪を避けていた。さらに過去に殺人や窓割りで使われた銃火器を与え、半グレに罪を被せると言う手法がチラホラとあった。

 このように町の不良がヒットマンになる可能性も考慮しなければならず、こまめな監視が必須となる。

「それで、まぁ、分かるだろうが萩田希子の通う学校はお前らのシマだ」

「わかった。悠久さんの頼みだ。しっかりやられてもらいますわ」

 悠久は藤田の言葉に頷き、スクリーンの表示を変えるよう指示した。

「では、次の話だ」

 悠久が話を変えようとした。

「ちょっと待て。私たちは萩田希子の護衛に同意した覚えはないです!」

 東条が出しゃばってきた。

「さっきから五月蠅いな」

 万泪が東条を黙らせる。

「アンタの独断か知らないが、ここに来てる時点で白嵐会はFに従う意思があるんだろ」

「何だ君は⁈ 口を挟まないでくれ!」

 ついに東条の隣に控えていた中年が東条をはたいた。

「っ⁈」

「東条! お前は少し黙ってろ! お前が参加したいと志願したから連れて来たんだ。お前は何をしに来た⁈」

 中年が東条に声を荒げたのは初めてだった。

 中年と悠久はそれなりに長い付き合いが有り、東条の無礼についても自分が謝りに行って機嫌を取ろうと考えていた。

 だが、万泪との付き合いは無いに等しい。

 たとえFと白嵐会との繋がりが維持されていても万泪が担当する銃火器の供給が不利になるかもしれない。

 元来、気の弱い中年が東条を怒鳴りつけるまでにはコレだけの考えが脳を過っていた。

 東条は流石に押し黙り、下を向いてしまった。

「失礼しました…」

 悠久が謝罪する中年を物珍しそうに一瞥をくれた。

「まぁいい」

 治久が総括し、今後は堂々とFとして希子の学校周辺でパトロール及び、Gへの牽制をする事が命令された。




   ‡




 会議が終わり、中年が悠久と談笑していると一人で居た東条が夜堂と万泪の下へと歩いて来た。

「君が…夜堂ね」

 初対面である筈の夜堂に礼を欠いた言動で疑う様な、品定めをする様な視線を向けてきた。

「何か御用ですか?」

 万泪との会話を切って東条へと向く。

 東条はにやにやとしながらはぐらかした。

「いや…なんでもないよ、これから一緒に仕事にあたる人だからさ、」

 夜堂は表情を変えず、にやにやとする東条のネクタイを掴み引き寄せた。

 突然の事に構える事の出来なかった東条は頭を揺すられた。

「お前何様のつもりだ? いい加減にしとけよ。 いつからお前と俺は対等なんだ?」

 夜堂はネクタイから手を放し、万泪と去って行ってしまった。

「…なっ」

 立ち去る夜堂の後ろ姿に一応持たされた銃を抜きそうになった。

 だが、右手は掴まれており動かせなくなっていた。

 右手を掴んでいるモノを確認した。

 右手を掴んでいたのは六道組の若い男だった。

「君には無理だからやめた方がいいですよ」

 そう言って若い男は夜堂の後ろを追って行った。

 東条はその男を撃ってやろうと激高したが、右手に力は入らず、赤と白に手型の跡がついていた。

「くそ…」

 さんざんに同列、又は格下だと自分の中で決めていた連中にコケにされ、激情の中で東条は何もできず一人去って行った。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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