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お久しブリーフ



 夜堂は万泪のメールの件もあり、昼から会議に出席する予定が出来た。

 早朝から万泪とフィアと共に、夜堂はセーフハウスに車を走らせた。

「会議何時だっけ?」

 万泪が尋ねた。

「たしか…十三時」

 夜堂が答える。

「今十一時じゃん」

 万泪が短く舌打ちをした。

 会議に出席するための移動時間を考えるとあまり準備時間は無かった。

「お二人とも頑張ってねぇ~」

 会議に出席しなくてもいいフィアは気楽そうに爪を見ていた。

「くそぉ~」

 夜堂は悪態をつきつつアクセルをさらに踏み込んだ。




   ‡




 急ぎつつもゆっくりとバックして綺麗に駐車した。

 慌ただしく降りるが、ボディに傷をつけると夜堂が激しく起こるので、こちらも丁寧に降車する。

 後部座席で一足先に降りたフィアがドアのカギを開けたおかげで夜堂と万泪が駆け込んで行った。乱雑に脱ぎ捨てられた靴が転がっていたのをフィアはそっと直しておいた。

 夜堂と万泪は取り合えずと、上半身裸になり、服をソファーに脱ぎ捨てる。

「どっち先にシャワー行く?」

「どっちにするよ⁈」

「じゃぁ俺行く」

 夜堂はそう言ってパンツを脱ぎ棄てシャワールームに駆け込んで行った。

「ぁあーーー くそっ」

 万泪は夜堂に抜け駆けを食らった。

 抜け駆けを食らった万泪は取り合えずと洗面所に行き、髭を剃る。

 夜堂は西洋剃刀で深剃りをするが、万泪は電動シェーバーですぐに剃ってしまうためあっという間に剃り終わる。まだ夜堂はシャワーから出てこない。

 万泪は先にスーツを出すため、クローゼットルームに向かい自分の分と夜堂の分のスーツを取り出して置いた。まだ夜堂はシャワー室から出てこない。

 夜堂が着替えようの下着を用意していない事に気が付き、仕方なしと下着を用意しておいた。

「おい、遅いぞ」

 万泪が痺れを切らして声を掛けた。

「おぉ今上がる」

 夜堂は返事をしながら全裸でシャワー室から出てきた。

「ったく…おら、どけい。俺が入れねぇ」

「すまん すまん」

 タオルで体を拭きながら夜堂は脱衣所の端に寄った。

 万泪がパンツを脱ぎシャワーに入った。

 夜堂も下着を履き、タオルを首にかけ洗面所に向かう。

「あ、すまーんフィアー 湯くれー」

 シェービングフォームを作るためのお湯が無いことに気が付き、フィアに湯を持ってくるよう要求する。夜堂は手間がかかるモノを好んで使う傾向がある。西洋剃刀を使うのもその一端である。

「持って来たわよ」

 フィアが紅茶用の小さなポットを持って洗面所の入り口に立っていた。

「おぉ、そのカップに入れといてくれ」

 フィアは、ハイハイと言いながらブラシの毛先がつかるまでコポコポと音を立てた。

 夜堂は湯の入ったカップでブラシの毛先を湿らせ、軽く湯を掃い、固形石鹸の表面をブラシで撫ぜた。ブラシの毛先で石鹸がこそがれ、ブラシには石鹸が付いている。夜堂はカップなの中では泡立てず、そのままブラシで肌の表面で泡立てる。

 夜堂の顔は白いモコモコの泡が髭を覆っている。

「しかし、あんたパンツ一枚以外に選択肢は無かったわけ?」

 パンツ一枚、ほぼ全裸の夜堂の姿に苦言を呈す。

「別に良いじゃねぇか」

 そう一蹴して話を切ってしまった。

 夜堂はさっさと髭を剃り終えてしまい、もう顔を洗っていた。

「フィア~ ちょっと~」

 ポマードを手に取りながら、夜堂はフィアを呼ぶ。

「なに~ 用が有るなら一回にしてよぉ」

 ぶつぶつと文句を言いながら若干不機嫌なフィアが洗面所を訪れた。先ほど夜堂に一蹴されたのを若干気にしている様だった。

「後ろ合わせてくれ」

 夜堂は後頭部の髪型を整えてくれと要求した。

 今から行く会議はいわゆる役員会議の様なモノだ。なるべくフォーマルな恰好に越した事は無い。夜堂は正装の髪型としてダックテイルを好んで居るが、後頭部で作るIラインを一人で作るのは少々時間がかかるモノだった。 

 その点他人に頼めばすぐに整えられる。

 すでに両サイドの髪は撫でつけられており、残るは後頭部だけだった。

 夜堂はフィアにコームを渡す。

「万泪にでも頼めばいいじゃない、なんで態々」

 フィアは慣れた手つきでIラインを作っていく。

 それもそのはず夜堂のダックテイルはフィアが正装用にと夜堂の髪を整えたのが始まりだ。

 夜堂はフィアが居る時は髪のセットをフィアに頼むようにしている。

 そのどれもを夜堂は語らないのでフィアは知る訳が無かった。

「まぁいいだろ」

 また夜堂は話を濁し、フィアはふくれっ面になった。

「はい、出来た」

 夜堂は光沢のある両サイドの髪を鏡に映し、Iラインが見えるよう合わせ鏡を作る。

「完璧」

 夜堂はパンツ一枚のあられもない姿で不敵に笑った。




   ‡




 夜堂と万泪はスーツを着て革靴を履く。

 玄関にて互いの恰好を確認した。

 夜堂の2ボタンのダークグレーのスーツに縦に一本のラインの入ったネクタイ。

 万泪はストライプに織り込まれたダブルスーツを纏い、黒いシャツに夜堂と同様のラインの入ったネクタイを締めていた。

「じゃ、行ってくる。帰りは大分遅くなるわ。多分飯食って帰るから」

 夜堂はそう言って敷居を跨いだ。

「いってらっしゃい」

 フィアは二人が出て行った後玄関を施錠して二人の脱ぎ散らかした服でも洗濯しようかと、リビングに戻って行った。 


 夜堂は余裕をもってランサーエボリューションⅥを走らせ今日の会議場まで急いだ。

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