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書いて来たぁ…なんでだろうね。日本語って難しいね

「お前どうすんの?」

 夜堂の運転するランサーエボリューションⅥの助手席でフィアは頬杖をついていた。

「どっか行こうよ」

 フィアがそんな突拍子もない提案をしてきた。

 夜堂は明日のスケジューリングを思い出す。

 明日は希子の部活動だけのはずなので、午後からの護衛でいいはず。もし、何かあればそれこそ香代子に連絡を貰えば良いだろう。

 現在、午前三時。

 朝九時までにセーフハウスに着いていれば大丈夫だろう。

「まぁいいか。どこ行くよ?」

「どこにする? 万泪バンレイのところ行こうよ」

 フィアは夜堂と共通の友人である、元中国部構成員、万泪バンレイの経営するフロント企業である雀荘に誘ってきた。

「ん」

 現在地から二十キロほどの場所にある雀荘に車を走らせる。

 住宅地を抜け、午前三時の人通りの無い道路、レーダー探知機からの反応は無く、対向車線にもライトは見えない。

 夜堂はアクセルを踏み込んでゆく、アクセルを踏むと答えてくれる。

 ランサーエボリューションⅥは法廷速度を五十キロオーバーで走り抜ける。

「…最高」

 時速百二十キロで走り抜けると、雀荘までは残り五キロも無い。

「もうすぐ着くぜ」

 フィアに一言掛け、コーナーを責める。

 ここ最近の私用で走らせることが出来なかった反動で、いつも以上に速度を求めている。

 雀荘の看板が見えてきた。

 スピードを徐々に落とし、雀荘に乗り付けた。

 バックで駐車場に止め、サイドブレーキを引いた。

「降りろ~」

 フィアに降りるよう言って、夜堂は早々に降りた。

 フィアが車から降りて、背筋を伸ばしている。

 夜堂は車のカギを閉めて、雀荘の入り口へと向かった。

 夜堂は扉を引く、後ろに居るフィアを先に入れ扉を閉めた。

「来たぞ」

 雀荘の中には誰も居らず、カウンターにライトが灯っていた。

 ガラスの触れ合う音と共に、一人の男が姿を現した。

「よぉ? どした?」

 黒いシャツをはだけさせ髪をポマードで撫でつけた姿は凡そ普通とは言い難い。

 先ほどからシャツの隙間からタトゥーが見え隠れしているのが更に拍車をかけている。男の胸板に隠し鬼は求めていない。

「夜も遅くなったし、フィアもいたしな」

 夜堂は万泪にそう言って、カウンターに勝手に座り込んだ。

 万泪は隣にフィアが座るのを待つ。

「夜堂は何飲む? 何時ものか?」

「あぁもちろん。赤だ」

「それは残念。生憎うちは瓶なモノでね、しいて言うならカラメル色かな?」

 万泪がふざける。

「っふ、 うるせぇ 勿体つける前に持ってこい」

「はいはい」

 万泪が気の抜けた返事をする。この店、いや、この二人の何時ものやり取りだ。

「フィアは何飲むの?」

「なぁーにのもぉかしら」

「おぅ、何でも有るぞ。何あるか知らんけど」

「じゃぁ…ビールの赤」

「あいよ」

 万泪がカウンター下のドリンククーラーから、コーラとバドワイザーを取り出して栓を開けた。

「お前らにグラス出すのは勿体ねぇ」

 夜堂の前にはコーラ、フィアの前にはバドワイザーが置かれた。

 万泪は裏から椅子を取ってきた。夜堂達と対面する様に腰掛けた。

「あ、そうだ。ついでと言っては何だが、.45ACPを二箱頼むわ」

 夜堂はついでにと、Fの個人兵装部を兼ねている万泪にデトニクス用の弾丸を注文した。

 万泪はディガンマ市街地工作員武器支給部の係長である。携帯火器の類の補給、及び要請は万泪が担当している。五年程の付き合いで、有り階級も互いに白金。ある程度の自由裁量は許されている。

 とは言え、.45ACP弾を二箱はギリギリである。

「おう、良いぜ、明日には届けるわ。いつもの場所な」

 二つ返事で了承してもらった。明日中にはデトニクス用の弾薬が補給できる。

 そんな話に入れないフィアはカウンターに積まれた灰皿を取って煙草を吸い始めていた。

 煙草の匂いに釣られ、万泪も煙草を取り出した。。

 木の箱を開く。

 万泪は紙巻煙草よりもパイプ煙草を好んでいる。

 愛用の桜材のパイプを取り出した。

「夜堂はやらねぇのか?」

 万泪はパイプを持ち上げながら夜堂に尋ねた。

「やらねぇよ。俺は何時でも非喫煙者だ」

「面白いのになぁ…まぁ気が向いたら言ってくれ。何時でも教えよう」

 万泪は残念そうにしながら、パイプに葉を詰めていった。

 煙草をほぐし、まとめ、ボウルの中に詰めてゆく。

 夜堂は万泪の何時もの動作を見るのが中々に好きだ。友人たちが酒や煙草を楽しんでいる瞬間に立ち会えるのが好きなだけかもしれないが、夜堂は万泪のゆっくりと時間をかけてパイプの準備をする動作を好いている。

 葉の密度が均等になる様に詰める。万泪は葉を上から押し、密度を確認した。均等に詰められているの確かめ、パイプスタンドにパイプを立てかけた。

 酒棚の引き出しから長軸のマッチを取り出した。

 パイプを咥えてマッチを擦った。マッチの先端が燃え、軸に燃え移るのを待つ。軸に火が回るのを確認して、遠火で円を描く様に火を近づけた。

 詰められた葉が赤く変わる。

 マッチを灰皿に放り込んで、パイプを一吸い。

 ボウルの中は吸うたび、赤く光を放つ。

 何度か吹かし、ボウルの中の葉が中心から山を作る様にこんもりと膨らんだ。

「ほいよ」

 夜堂はダンパーと呼ばれるボウルの中の葉を均す道具を手渡した。

 万泪は夜堂からダンパーを受け取り、膨らんだ葉を均す。

 先ほどまでゆらりゆらりと灯っていた火は消え、万泪はマッチを擦りなおした。

 再度火を灯した。

「ふぅー」

 万泪が煙を吐く。

 万泪はやっとパイプを吸い始められる。

「二人とも何か話す事とか無いの? 夜堂くんは万泪の事見つめちゃって、万泪は万泪で優雅にキメてるし、万泪、アンタ普段そんなにしっかり煙草してないじゃない! 何? 夜堂くんあんまり女の子とか連れ込んでる様子無かったし、お店も行ってない…もしかして…ホモの方だったの⁈」

 フィアはだいぶ酔いが回っている様子だった。

 構って貰えない不満から夜堂をホモ扱いである。

 ちなみに夜堂はホモではない。万泪は両刀使いである。

「失礼な、いくら俺でもこんな素っ気ない男は嫌だぜ?」

 万泪が夜堂を指さす。

「んだと~? 俺もお前みたいなむさい男は歓迎できねぇな」

「ほらぁ~ そうやって仲良い~」

「「はっはっはっは」」

「フィア。勘違いするなよ。俺は例え何が有ろうとも万泪を選ぶ事は無い。覚えておけ」

「っはっは そうツンケンするな。お前がもうちょっと可愛げが有れば声を掛けたかもな! はっはっは」

「え~~~~ 女の子ならまだしも、万泪に取られるのは嫌ぁ~」

 フィアはバドワイザーを飲み干してしまった。

 煙草も空になっており、カウンターに突っ伏してしまった。

「お~ぃ フィアぁ?」

 突っ伏して動かなくなったフィアを突いた。

「………」


 動かない。


「寝てねぇか?」

 万泪が動かないフィアの様子を見ながら言った。

「寝てるな。飲ませすぎたか?」

「かもしれん。ココ来る前に何飲んだ? 来た時から若干酔ってただろ?」

「林檎酒少し引っ掛けてたな」

 フィアはアルコールに強い方ではない。むしろ弱い。缶ビール三本ほど飲めば潰れてしまう。

 ビールに比べ度数の高い林檎酒に缶ビールに比べ、量の多い瓶ビール。潰れる条件は整っていた。

「それじゃないか? わからんが寝かせておこう」

 そうだなと。と、同意して夜堂はフィアの肩に上着を掛けた。 




   ‡




 灰が掛かってきたボウルの中を気にしつつ、万泪は先ほどの.45ACP弾について夜堂に問いかけた。

「あ、そういえば何で.45ACP弾なんだ? 白金だから携帯武器の自由はあったとは言え、お前、配給武器しか使ってなかったじゃん」

 夜堂は今まで、Fから配給されるカッパークラスに配給されるブローニング・ハイパワーを使い続けていた。

 急に.45ACP弾を要求してくる夜堂は、万泪にとって酷く不自然に感じた。

「まぁ色々あってな。取り合えずコレを見てくれ」

 コンシールドキャリーのデトニクスを、鼠径部付近そけいぶふきんに装備していたホルスターから取り出した。

 カウンターにデトニクスが置かれる。もちろん銃口は誰も居ない方を向いている。

「ん? ディフェンダーか? いや、デトニクスか? 触っても?」

 夜堂が頷く。

 万泪はデトニクスを手に取り、スライドの刻印を見てデトニクス・コンバットマスターだと確信した。

「デトニクスのコンバットマスターか、初めて選ぶ相棒が変わり者か? お前も変な奴だな」

 小さなデトニクスの弾倉を抜いて、スライドを引き薬室内の弾を抜く。そうしてカウンターにデトニクスを置きなおした。

 夜堂が、一発だけの.45ACP弾をつまむ。手遊びをしながらコーラを一口飲んだ。

「ボスから貰ったんだ」

「お? ボスがか? そりゃ珍しいな」

 ボスは個人に対し、何かを渡す事は稀である。

「……親父の銃らしい」

「………そうだったのか」

 万泪の言葉は続かなかった。

 万泪も夜堂の父、夜堂巾木やどう はばきを知っている。万泪は中国支部の孤児の一人だった。Fの構成員が運営する孤児院出身である。彼は早いうちに構成員、取り分け戦闘員としての素質を期待され十歳の時、Fへと入ったのだ。夜堂の父は当時のFの叔父貴の補佐をしており、行く行くは首領ボスに成るのだろうと言われていた。そんな夜堂の父は当然、中国にも足を伸ばしたこともあり、中国では万泪に会っていた。

 その上、日本に来てからは少しの間だが、夜堂の父の下で指令を受ける身になっていた。

 万泪は夜堂の父が死んだ時の事を思い出していた。

 強く吸いすぎたパイプの濃煙が吐き出された。

「これからは…この銃を俺は使いたいんだよ」

 夜堂はそう言ってコーラを飲み干した。

「おーけー わかった。撃った時は教えろ。銃身バレルは何時でも用意しとくからよ」

 万泪は煙草特有の甘さを含んだ煙を吐いた。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

次話も遅くなると思いますが、お付き合いいただけると幸いです。

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