ドッキリ
ベンチに座っている彼女が口を開く。
「一人暮らしなの?」
「そうだよ? 家族はいま県外。やめとく?」
「大丈夫。早く入ろう、寒いからさっ」
何だこいつ? 初めて会った男の家に、しかも誰もいないと言っているのにもかかわらず自宅に入るだと?
怪しすぎる。何を考えている?
もしかして、入った瞬間に俺がボコボコニされて、家財道具を持っていかれる感じか?
よ、良しいだろう。返り討ちにしてくれるわ!
警戒心マックスで自宅のカギを開け、中に入る。
「お邪魔しまーす」
発戸さんは普通に靴を脱ぎ、俺の家に入っていく。
「ねぇ、赤間君の部屋って二階?」
「へ? あ、あぁ二階の突き当たり」
発戸さんはそれを聞くと、勝手に階段に向かって歩いて行ってしまった。
ちょ、待ってくれ。
俺は急いで靴を脱ぎ、発戸さんを追いかける。
が、先に階段を上がっているのは発戸さん。
そして、そのすぐ後ろに俺がいる。
つい、発戸さんの太ももに目がいってしまった。
いかんいかん。でも、いや、しかし、これは事故だよね?
自分を正当化し、チラチラと目の前の太ももを鑑賞する。
自分の家に可愛い女の子がやって来た。
これはある意味、大事件だ。もしかしたら、俺はこのままこの階段と同じように、大人の階段も上がってしまうのか!
「ねえ、さっきから何ブツブツ言っているの? 私の太もも見て楽しいの?」
「へっ? お、俺は別に、そんな、所……。ご、ごめん……」
「別に気にしてないよ。減るものでもないし。早く部屋に行こうよ」
何だこいつ。あからさまに不自然だ。
おかしい。絶対におかしい!
俺の部屋に入った発戸さんはきていたコートを脱ぎ、勝手に俺の机に置いてしまった。
そして、ベッドに転がり、枕を抱きしめながら転がっている。
いったい何をしている? 初対面の男の部屋で、何をしている。
もしかして、これが有名なドッキリか! カメラはどこだ?
既に扉の向こうには誰かがスタンバイしているのか?
そんな妄想をしながら、ゆっくりと扉を開くが誰もいない。
おかしい。絶対に何かが変だ!
部屋に戻り、ベッドを見てみると、まだ転がっている発戸さん。
しかし短いスカートからは、チラチラと何かが見えている。
これは言った方がいいのか、それともそのままの方がいいのか。
男として悩む所ですね。
「ねえ、赤間君は小説好きなの?」
俺の部屋には大きな本棚にびっちりとラノベが。
急の来客で隠せなかったが、俺はオタクに属している。
毎年コミケには参加しているし、気になるラノベは全て買っている。
「まーな」
「どれが気に入っているの?」
「んー、最近のお気に入りは『クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました』かな」
「聞いたこと無いね。有名なの?」
「いや、まったく。とある小説を投稿するサイトで見かけたら、書籍化されていたんで、何となく買ってみた」
「他には?」
「後は、転生物とかダークファンタジーとかかな」
発戸さんと話すのが楽しくなってきた。
学校ではこの手の話はしない事にしている。
でも、今は何も隠さないでフルオープン。
しかも、この後別に喧嘩別れしても何も痛くない。
だったらとことん、付き合ってもらうぜ!