愛していると言われたい
先月結婚しました。
それはそれは幸せな花嫁。
周りからはきっとそう見えていたでしょう。
「いってらっしゃいませ」
ここ1ヶ月、毎朝欠かさず旦那様に声をかける。
「行ってくる」
毎朝欠かさず答えてくれる。
ただそれだけだ。
そこに頬へのキスや抱擁はない。
上目遣いにじっと見つめ、心を送ってみるが、気づいてはもらえない。
新婚って、もっとウキウキとしたものじゃないの?!
私たちは恋愛結婚のはずだ。たぶん
職場で出会い、仲良くなり、初々しい付き合いを経て結婚した。
なのに、なぜこんなに寂しいのかしら?
先月結婚した。
幸せだ。
妻は毎朝見送ってくれる。
かわいい。
「行ってくる」
そういうといつもじっと見つめてくる。
かわいい。
これ以上ここにいたら仕事にいけなくなるだろう。
かわいい。
結婚して後悔したことがある。
妻に職場で会えなくなったことだ。
時間が合えばいつも昼を共にしていた。
彼女のいない職場は寂しい。
男の職場ではいつも無表情の男が結婚してから、より一層険しい顔をしている姿がよく見られた。
同僚たちはそれをニヤニヤと見ている。
みんな、男が妻と昼を過ごせないのが不満な事を知っているのだ。
その日、妻は不満を爆発させた。
どうして旦那様は何もおっしゃってくださらないの?
私の事を手に入れたら、それで満足なのかしら?
それならば、私はお家を出るわ!
迎えに来て下さるまで帰らないわ!!
そうしてふらっと家を出て、思い出の庭園にやってきた。
そこはいつも仕事の時に二人で休憩をしていた、職場の中庭だった。
いつもの木の影に座り、ぼうっと庭を眺めていた。
「アリシア!」
遠くから自分を呼ぶ声がきこえる。
妻のいない寂しい昼休み、思い出の木陰に向かう。
今は一人の木陰だが、そこで過ごせば妻が近く感じる。
しかし今日は先客がいたようだった。
どうしたものかと思いつつも向かうと、そこにいたのは妻のアリシアだった。
今日はなんて幸せなんだろう!
「ハルト様‥ 」
どうしてここにいらっしゃるの?
どうしてそんなに嬉しそうなの?
どうしていつもと変わらず‥
「ここで会えるなんて嬉しい」
そういうと、アリシアは潤んだ瞳でこちらを見た。
「どうしたんだい?何かあった?」
旦那様に聞かれ俯いた。
「何かですって?ありましたわ。ここ1ヶ月、旦那様が愛を伝えてくださらないんです!」
段々声が大きくなり、最後の頃には泣きながら叫んでしまった。
ハルトは驚いた。
まさか妻がそんな風に思っていたとは考えてもいなかった。
泣いてる姿もかわいい。
ともかく妻はかわいい。正義!!
「すまなかったね。これからは伝えるようにしよう。」
そういうと妻は「毎日です!」と涙目でいい募る。
「ウンウンそうだね、毎日伝えよう。」
かわいい、オレの妻かわいい。
先月結婚した。
それはそれは幸せな夫婦。
周りからもきっとそう見えるだろう。
そうして実際幸せな夫婦なのです。
気が続けば…この二人を軸に旦那様が所属するお仕事仲間などの話も書いていきたい。