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06 アンネリーゼの憂い

久々にこちらに投稿します。

アンネリーゼとフレディの結婚までの道のりと、ちょっと未来を書きました。

2話連続投稿です。先にこちらからお読みください。



「ねぇ。どう思う? カミラ」

「リーゼお姉様……」


 茶の緩いウェーブに紫の瞳を持つ令嬢が、ストレートの淡い金髪につり目の碧眼を持つ令嬢に相談している。

 前者がアンネリーゼ・ダナー男爵令嬢。後者はカミラ・アルベルツ子爵子息夫人。

 今日は、アンネリーゼが相談があると、カミラの居るアルベルツ邸を訪ねていたのだ。


「フレディ。私と結婚しないで、婚約破棄する気かしら……」

「それは……無いと思いますけれど……」

「根拠は?」

「フレディお兄様は、嫌だと思う人と、婚約したりはしないと思います」

「……そうよねぇ……」


 そんな事、アンネリーゼが誰よりもわかっている。

 わかっているからこそ、不安になるのだ。


「カミラ。お腹、大きくなってきたわね」

「えぇ。ここに居るんだって、実感するようになりました」


 そう。年下のカミラは自分より先に結婚しており、現在妊娠中なのだ。

 義理とは言え、姉になる予定の自分より早く、結婚も妊娠も経験している。それがアンネリーゼには羨ましかった。


「……リーゼお姉様。フレディお兄様は、何か考えがあるのではないでしょうか」

「考え?」

「えぇ。まだ、時期じゃ無いと判断したのかもしれません」

「商会で、そんなトラブルもないみたいだけど?」

「商会は関係ないと思います。気持ちの問題というのもあるそうなので、もしかしたら……」

「え……心変わりした相手が居るってこと!?」

「違います!! 無いと思います!! そうではなくて……」

「気持ちね……実は、思い切って聞いたことがあったのだけど……」






 それはつい先日。アンネリーゼは、ストレートの茶髪に緑の瞳を持った、中性的美形の婚約者、フレディに向かって言った。


「ねぇ!! 結婚したくない理由があるならはっきり言って!!」


 キョトンという目でアンネリーゼを見たフレディは、少し困っているような仕草をしてから、重い口を開いた。


「まだ、時期じゃないよ」


 ニッコリと笑って言いきったのだ。






「カミラと同じ言葉よね。けれど、その時期って何って話よ!!」

「そこまでは、お話になりませんか」

「それでこの話は終わりって感じで、仕事に戻っちゃったのよ」

「……何だか、すれ違いが起こりそうな予感です」

「ね? 危ないでしょう!?」


 カミラもさすがに少し危機感を感じた。


「時期じゃないっていう事は、結婚する気はあるって思うのですけど……」

「もぉ~。いつまで待てば良いの?」

「リーゼお姉様。何だか焦ってます?」

「焦ってるわよ~!! この前だってどこぞの令嬢に言われたのだから!!」





 それは、先日パーティーへお呼ばれしたので、会場で一人になった時だった。


「あら~、お一人?」

「はい。ちょうど、ひと段落しまして」

「婚約者がいるのに……随分(はべ)らしてらっしゃること」

「侍らすだなんて……私はお話を聞いているだけですわ」

「まぁ。そうやって、人のものを取るのではなくて?」


 実際アンネリーゼはそんな事をしていない。

 話した相手は皆、アンネリーゼが自分に興味がないとわかった上で、話しているのだ。あくまでも社交をしているだけ。それが、この令嬢には、わかっていなかった。


「……私はそんな事、一度もした事はありませんよ?」

「では、なぜ、婚約者の方と結婚なさらないの? 随分長い、婚約期間ですのね」


 フレディとアンネリーゼは、五年前に婚約している。しかし、一向に結婚の話は出ず、もしかして、偽装婚約ではないかと疑われているのだ。

 親同士で決めた政略である事は重々承知の上で、十五だったアンネリーゼは、それを受け入れたのだ。


「……時期がありますので」

「……ふぅん。そういえば。以前、そんな事を言ってらっしゃった令嬢が、後に婚約破棄された事もありましたね。覚えております?」

「……えぇ」

「貴女は。されないと良いわね? ふふふ……」


 そう言って、令嬢は去って言った。

 アンネリーゼは、その後、すぐにその会場を後にしたのだった。






「って事があったのよ!!」

「それは……嫌な方でしたのね」

「私に近づいて来る女性は、大抵、嫌味が言いたい人なのよ。私も実際、友人て言える女性、居ないんだけどね」


 情報屋として名が売れる度に、アンネリーゼから女性達が離れていったのだ。

 アンネリーゼは、貴族の中でも美人な方だ。家は元々平民で、商会をやっており、そんな中、陞爵を受けた男爵だ。平民出なのに、その美貌も嫉妬の対象だったのだろう。

 そんな女性が、殿方に近づけば、誰でも警戒するに決まっている。

 しかし、当の本人は、自分の美貌がそんな効果を得ている事を知らない。

 ただ、男に近づくふしだらな女としか、本人は認識して居ないのであった。


「私が居ます!! リーゼお姉様!!」

「……カミラ!!」

「まだ居たのか、アンネリーゼ」


 呆れた声が聞こえると、そこにはカミラの旦那、ローレンツが立って居た。


「妻は身重の身なんだから、あまり無理させないで欲しいのだけれど?」

「あら、気分転換も必要ですわ!」

「私は大丈夫ですよ? 少し、動いた方が良いとも言われていますし」

「いいや。もう、二人がお茶会をして結構経つよ? そろそろ……」

「わーかーりーまーしーたー」

「……アンネリーゼ。そういうところが、フレディが結婚しない理由だと思うけど?」

「……好きな人の事を悩んで……何が悪いのよ!!」


 アンネリーゼが駆け足で出て行くと、カミラは静止しようと椅子から立ち上がった。


「リーゼお姉様!!」

「カミラ!! 危ない」


 いきなり動こうとするカミラをローレンツが抱きとめた。


「どうしてそんな事を……」


 カミラが困り顔で、ローレンツを見上げた。


「事実なんだけどなぁ。そういう子どもっぽいところが、伴侶として相応しいか不安になるんだよ」

「今、言うべきではないと思います。それに、きっと勘違いしていますわ。恐らく、私にフレディお兄様の事を相談した事が、よくないと受け取ったと」

「……悪かったよ。折角の休みだったのに、アンネリーゼに取られたから、答えを言った方が早いと思って……」

「お姉様……」


 カミラの心配する声が、部屋に響いた。







「もう!! ローレンツも馬鹿にして!! 皆私を除け者にするんだわ!!」


 アンネリーゼは、孤独に耐えられなくなっていた。

 一人でも良いと思っていたのだが、カミラの存在が、アンネリーゼを変えたのだ。


「私は……幸せになってはいけないのかしら?」


 馬車の中で、ひっそりと涙を流した。


 元々、情報屋になろうと決めたのは、フレディがきっかけだった。

 お互い、商会を経営している家に生まれたからこそ、情報が武器になる事をよく知っていた。

 少しでも助けになればと始めたその行為が、友達を無くす結果になるとは、夢にも思わなかったのだ。

 

「婚約破棄されるなら……もう、行かなくていいわよね」


 カミラと相談したあの日から、アンネリーゼは無気力になり、部屋に閉じこもる日々が続いた。






「あれ?」

「どうした? フレディ」


 今日のパーティーには出席すると、アンネリーゼに事前に聞いていて出席したのだが、姿が見えない。


「アンネリーゼがいない」

「え? 本当だ。どうしたんだ」


 一緒にいたローレンツも、探すが、見つからない。


「とりあえず、挨拶に行こう。それからだ」


 今日の主役に挨拶に行くと、アンネリーゼは、急病で欠席とのことだった。


「私は会いたかったのだが、妻がね。実は、来ないことに喜んでいるんだ。……彼女の真意は違うところにあることが、理解に至らない妻で申し訳ない」


 確かにいつもアンネリーゼといると、しかめっ面の奥方が、今日は晴れ晴れとした笑顔で、客の対応をしている。

 正直、奥方はベック兄弟が苦手なタイプなので、高らかに笑っている姿をみると、少しイラついた。


「しかし……今日の事、伝わっていなかったんだね。大丈夫かな? 妙な噂も出ているよ」

「何でしょう?」

「もうそろそろ、アンネリーゼ嬢が、婚約破棄されると言う噂だよ。妻はいい気味だって言っていたけれど、本当のところどうなんだい?」

「そんな予定はないのですが……」

「そうか。彼女は、勘違いされる(たち)だから、私としては安心したよ。今日は、彼女のところに行ってあげなさい。他の男達も、彼女に会えなくて肩を落としているんだ」


 アンネリーゼの情報は、主に、奥方に関する情報だ。

 奥方が欲しがっているものや、今、流行りのものなどを聞いて、奥方にプレゼントするためだ。

 その見返りに、王城での出来事や、噂。今、どこかの領でこんな動きがあるなど、情報を提供しているのだ。

 

「お言葉に甘えます」

「僕の方も、本日はこれで失礼します」

「いや、忙しい中、来てもらって嬉しかったよ。では、またの機会に」


 主役が離れると、二人は直ぐに、馬車へ向かった。






 その馬車の中で、ローレンツが青い顔になってフレディを見た。


「どうした」

「ごめん。俺のせいかも」

「どう言う事だ?」


 先日、カミラの所に、アンネリーゼが相談に来ていた時の出来事を話した。


「……それは俺のせいでもあるな」

「ごめん。俺も、カミラを独占したいが故にそんな事を……」

「いや。全て俺が悪い。……俺のための行動が、友人を出来にくくしたんだ。俺も結局、臆病だった訳だ」

「どう言う事?」

「結婚する覚悟がなかったと言う事だよ。政略なのに、好きになってくれたんだ。それに答えないでどうする」


 二人を乗せた馬車は、アンネリーゼの家、ダナー男爵家へと向かった。








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