05 ロザリファ王の影達
お久しぶりです。
今だに、見に来てくださっている方がいる事に、驚きを隠せません。
ブクマ・評価、ありがとうございます。
※一部ゴッドと書いてあった所をゴットと訂正しました。
ロザリファ王には、優秀な影達が存在する。
そして、王の頼みは絶対。
ある日、ロザリファ王になったアウグストは、影達に指示を出した。
「アルベルツ子爵家邸に行き、その住人達を毎日影から警護せよ」
これは予想通りだ。
王は、親友でもある、ベルンフリート・アルベルツ子爵にある願いをする代わりに、交換条件として出したものだったからだ。
問題は、誰がこんな暇すぎる警護を引き受けるかである。
「俺はパース!」
「俺も」
「右に同じ」
「これじゃ、いつまで経っても決まらねぇな」
「そりゃそうだ。こんな暇すぎる依頼、誰が引き受けるかっての!」
「刺激が欲しいよな」
「警護じゃなくて、情報収集だったら良かったのに~」
「ただ、まだ小さい子どももいるんだろう? 警護なしってのは心配だな」
「じゃあ、お前が行けば?」
「もう二人は欲しい」
「よし! なら、王からの依頼の数で決めよう! 今年のな」
「げぇ!」
「おま……そりゃないよぉ」
結局、王の依頼の数が少なかった二人に決まった。
「最悪~!!」
「っくそ!」
「じゃあ三人共、よろしく~」
こうして決まった三人は、アルベルツ邸へと向かった。
「平和だなぁ……」
何にも起こらない、平和な時間。だが、影達にとってはイラつく時間でもあったのだ。
「お! あれは王の元思い人!」
彼女の名は、アマーリア・アルベルツ。ベルンフリートの奥方であり、かつて、王が慕っていた相手。
金髪に緑の瞳の美人だった。
「確かに……王が思っていただけはあるな」
こちらへ笑顔を向けてきたら、勘違いしそうな程だ。
その笑顔は今、三人の子ども達へ向けられていた。まだ、乳飲み子もいるが、その相手をしつつ、子どもの勉強も見ている。
「すごいなぁ。あんなの、王の侍女ですら出来ねぇよ。あの子のお陰かな?」
アマーリアは、乳飲み子を抱えつつ、一番上の子の勉強を見ていた。
一番大きな女の子は、勉強をしながら、下の妹の面倒を見ていた。
彼女だけが、淡い金髪で、つり目が特徴の顔だった。
「ベルンにそっくりだ」
影達はベルンフリートをベルンと呼ぶほど、慕っていた。
王の親友だが、表向きにはあまり知られていない。
だが彼は、王に頼まれ、騎士団長として騎士団に籍を置き、騎士団の不穏分子を逐一報告してくれている。
ベルンは影達を下に見ることなく対等に人として扱うので、好感を持たれていたのだ。
「きっと、あの子も美人になるな。奥方とは趣が違うが」
彼女達は勉強をやめ、庭に出る準備をしていた。
周りを警戒し、不審人物がいないか確かめたところ、何人か怪しい人物達が居るのに気づいた。
直ぐに、他の影達にこっちに来るよう、合図する。
「どうした?」
潜伏場所に来た影二人に、目で賊がいる方を指示した。
互いに頷き、行動を開始する。
一人は他に異常がないか家の見回りをするが、もう一人は、一緒に来てもらおう。
まずは平民を装い、一人が近づき、もう一人はその様子を隠れて伺うようにした。
「あの……何をなさっているので?」
謎の集団達は、一斉にこちらを見た。
「お前さん、見ない顔だが……もしかして俺らと同じか?」
「同じとは?」
男が顎でアルベルツ邸を促す。
「アルベルツ様の所の、ご家族のファンだろ?」
「は?」
「なんだ……違うのか」
「では、この集まりは……」
「アルベルツ様御一家、非公式ファンクラブのメンバーだ」
ーー ナンダソレハ
「たまたま通りかかったところをふと、屋敷を覗いたら、可愛い精霊達を目撃してしまってな」
「以来、癒されたいと思うがあまり、わざとここを通るようにしていたら、同志がいつの間にか増えちまったってことだ」
「たまに声、かけてくれるんだよな」
「一番上のカミラ様の声に癒されるんだ」
「下のデリア様も、最近ではたどたどしい言葉を話すようになったな」
「まさか、奥方のアマーリア様も気さくに話しかけてくださるとは思わなかった」
この邸は、もう何年も改修工事をしていない。なので、隙間から中が見える部分があり、そこを通って、柵の中から一般市民と話しているようだ。
改修工事が出来ない原因も、邸に使用人が一人も居ないのも、全て王であるロザリファ王の責任だ。
高所得者(近衛兵)になれそうだった所を、無理無理低所得者(騎士団)に留まってもらったのだから。
よく今まで、この精霊達が攫われなかったと、肝が冷えた。
反対に、この者達が守っていたとも考えられる。
話を聞くと、以前も見知らぬ男が邸に侵入しようとしたそうだ。
見知らぬ男は、柵を登って中に入ろうとした所をファンクラブに見つかった。
そして、男は、ファンクラブ全員に足を引っ張られ、引きずり降ろされ、兵に引き渡されたのである。
「あの時は、御一家は誰も気づかなくて、良かったと思うよ。もし、気づいたら、庭に出てきてくれなくなる!」
「俺らの癒しが!!」
「そう!! この聖域をファンクラブ(非公式)が守るんだ!!」
「おぉ!!」と皆が一致団結している所に、鈴の音の様な、可愛らしい声が聞こえてきた。
「何をなさっているの?」
小さな妹を連れたカミラが顔を出した。
「カミラ様! 新たな仲間が出来まして、喜んでおりました」
紹介を促され、影は咄嗟に本名のゴットフリートから取って、ゴットと名乗った。
「ゴットさん! 初めまして、カミラ・アルベルツです」
「ど……どうも」
「ゴットさんも皆さんも、お仕事お疲れ様です。でも、もう戻らないで大丈夫ですか?」
その言葉に皆「はっ!」とした。
「「「あんた!!」」」
男たちがビクッとしながら、声がする方向へ顔を向けると、そこにはおばさん集団が勢ぞろいしていた。
「いつまでサボってるんだい!! さっさと店に戻りな!!」
「え……でも……」
「もう休憩時間はとっくに過ぎてるよ!」
その言葉に、おじさま方の肩がビクッとなり、蜘蛛の子を散らす様に去って行った。
「カミラ様ー!! また来ますね~」という言葉を残して。
影であるゴットも、一緒になって去るふりをして、仲間と合流した。
「あら? いいの? 旦那様方もゆっくりしていけば良いのに」
その声の主は、この邸のご婦人、アマーリアだった。
「いいんですよ! 奥様!! 結構長い時間、休憩とっておりましたから」
「おばさま! お願いしてもよろしいでしょうか?」
「何でしょう? カミラ様」
「染み抜きの方法を教えて欲しいの」
「お安い御用でございます」
「私も見せて!」
アマーリアも興味津々だ。
「もちろんでございます。我ら、アルベルツ様御一家、公式ファンクラブのメンバーが、お助け申し上げます!!」
ーー ご婦人方は公式だったのか!?
驚く事がいっぱいあるなぁとゴットが思っていると、隣にいた仲間がボソリと囁く声で口を開いた。
「俺さ。ここの仕事、ハズレだと思っていたけど、やって良かった」
「何でだよ? 嫌がっていたじゃないか」
「ここさ。癒しだよな」
「ん?」
「だってさ。あんな綺麗なご婦人と、可愛い子ども達を見れるって、役得じゃね?」
「確かに。影の仕事って、腐ってるなって仕事、多いもんな」
「なんかさ。ここ、人間に戻してくれるんだよな。今まで、忘れてたものがあるっていうか……」
「わかる! 浄化されるっていうか……」
「それ! 心が洗われるよな!!」
そうして、アルベルツ様御一家、非公式ファンクラブに入った影達を筆頭に、この仕事は取り合いになり、しばらくして始まった、王のアルベルツ家へのお忍びにも、率先して手をあげる事になる。
もちろん王も、アルベルツ様御一家、非公式ファンクラブの会員になり、一緒にアルベルツ家を守っていこうと誓い合っていた。
やがて時は流れ、カミラ様がローレンツ・ベックという若者を婿に迎える事をきっかけに、お役御免となる日がついに来てしまったのである。
しかし、王のアルベルツ家通いはやめたくないらしく、王のお忍びは高倍率になった。
それが、一番の修羅場だったのは、言うまでもない。
ここで疑問になったのが、カミラは公式ファンクラブの人から、服の繕い方を学べば良かったじゃんという事ですが、おばさま方が知っているのは、一般的な服についてのみで、ドレスを縫うというプロの技術はさっぱりだったのでした。
勢いで描いてみましたが、ファンクラブは全く考えていなかったので、作者にとっても意外な結果になりました。