15 「ドリス」24話裏
注意
この話は「ドリス」を読んでいる前提で書いた話です。初見の方は申し訳ございませんが、先に「ドリス」をご覧ください。
真夜中のコンコン事件の真相編です。
この話は絶対書かないとなぁ……けど、書けるかなぁ……とグダグダしながらも何とか書き上げました。
あっちこっち視点が代わりますが、それは聞こえて来た音や声通りにした結果ですので、読みにくい事を先にお詫び申し上げます。
ある邸のある部屋で男二人と女一人が居た。
「ふむ。植物の精霊憑きか。ロザリファには、実に有益な奴もいるんだな」
そう言ったのは、テレシアの国王だった。
現在その国王と、ロザリファ潜入組の三人は、水晶玉を通して話している。
「その者をテレシアへ連れてこい。一応、王族の動向を見るため、第二王子の探りは継続しろ」
「「「はっ!!」」」
そこで、水晶玉の通信が途切れた。
三人は顔を見合わせ、一人の男が女に話しかけた。
「国王には有益な情報はないと言っていたが……どうだ? 第二王子の様子は」
「どうもこうも、クソです」
五歳年上の空間魔法使いの男に対し、フィーネは眉を寄せながら、不貞腐れた様子で答える。
「それじゃあ、有益な情報はない……か」
「過激派側では何やら動きがあるそうです。ですが、あまり詳しくは知らされていないようですね」
「その植物の精霊憑きについては?」
「先日、何者かに、階段から突き落とされたと。炎の精霊憑きの公爵令嬢と一緒に」
「過激派か?」
「その可能性もありますが……聞くところによると、その突き落とした男性は消えたそうです」
今まで黙っていた、四歳年上の催眠の精霊憑きの男が反応した。
「消えた? もしかして……空間魔法使いか?」
「その可能性が高いかと」
「うーん……もしかして、別の国と繋がりが……?」
「繋がっているとしたら……この近くだと、ギラザックが怪しいですね」
「そっちは彼女達の排除か。不味いな。俺らは植物の精霊憑きを連れてこなきゃなんねぇ」
「早急に動いた方が良さそうですね」
その場に居た三人は、目を合わせてうなづいた。
ここは、ボーム男爵邸のエミーリアの部屋。
表向き、エミーリアとして休日を過ごすため、休みの度に帰ってきているのだ。
寮を出る際、いつも第二王子であるバシリウスにはごねられているが、何とか抑えてここまで来ている。
現在、催眠にかかっているボーム家にいる人達は、不審な者達が出入りしているにも関わらず、全く騒ごうとはしない。エミーリアからフィーネに変わっていても、使用人達や養父である男は騒がない。
催眠をかけたのは誰であろう、その不審な者達だからだ。
周りに人がいる間は、常に変身しているフィーネにとっては、束の間の休息がこの邸で過ごすことだった。
フィーネの変身時間は最大二十四時間。定期的に変身を解いて休まなければ、エミーリアに変身することも出来なくなる。
フィーネの精霊ファントムは、中位の精霊のため、ずっとという訳にはいかないのだ。
『フィーネ。辛くないか? エミーリア演じるのも疲れるだろう?』
「大丈夫だよ、ファントム。ちょっと控えめにしていれば良いだけだから、意外と楽」
『いや。あいつらの話聞いているのが苦行だろう。よく付き合えるよな』
「情報収集だもん。辛くても良い情報があれば、聞くって」
『あいつらにそんな情報はないと思う』
「それは……確かに」
思わず本音が出てしまった。
エミーリアが控えめにかわい子ぶれば、彼らはコロッと表情を変え話してくれる。
こいつらの婚約者はカンカンだというのに、直す気がない愚か者達。
ただフィーネは、アンジェリーナ・ブローン公爵令嬢には同情していた。
こんな奴のお守りを任されるなんて、とんだ貧乏くじ引かされた令嬢だなぁ。接しても出来る限り、バシリウスから離すようにしないと
遠くから見ていて、貴族でも鼻にかけないところは、人として好感が持てる。
隣にいるドリス・アルベルツ子爵令嬢も、好感が持てるが、ターゲットだ。
……あまり接しないようにしないと!
ドリス・アルベルツ子爵令嬢の連れ去り実行日。
フィーネside
今回参加するのはフィーネと空間魔法使いの男のみだ。催眠の精霊憑きの男は、常時邸に居ないと催眠の効きが悪くなる為、お留守番だ。
空間魔法使いの男は天井裏から侵入し、同じ階に部屋があるフィーネは、廊下からドリスの部屋に接近した。
コンコン
ドアをノックし、ドリスが出るのを待つ。
しかし、寝ているようで、すぐには気づかない。
焦る気持ちを抑えながら、またフィーネはノックした。
コンコン
ドアに耳を立てると、中で動きがあったようだが、まだ出てこない。
すると、何者かに後ろから服を掴まれ、空間に引き込まれてしまった。
テレシアの空間魔法使いの男side
その頃、天井裏でも異変が起こっていた。
魔法陣の中から男が天井裏に降り、中を確かめると、こちらにはまずい光景が飛び込んできた。
起きたか……しまった。もう、精霊が見えているのか!?
精霊と話し、ドアの外の様子を精霊に指示したターゲットに、内心焦る。
こりゃ、素早くターゲットを空間に引き込まないと……そう思った直後、何者かが、ナイフを投げてきたのがわかった。
避けると、カンカンカンとリズミカルに刺さる音が響く。
「アイリス! 戻って」
まずい!! ターゲットにも見つかった!! 精霊に見つかるのは不味い!! とりあえず、空間に避難だ!!
すぐに空間に入って姿を消した。
王の影side
今日は影のアイドル! 愛しのアルベルツ家の令嬢、ドリス様の護衛の日!
何と先日、ドリス様が謎の男に、階段から落とされたと言うじゃないか!? 俺達は怒り、相手をぶっ潰すつもりで護衛をしていた。
そんなある日。ドリス様の身の回りに不審な出来事が!
ドリス様の寮の部屋の天井裏に潜んでいた俺は、不審な男が魔法陣から出てくるのを目撃した。
恐らくテレシアの賊だろうと、俺はすぐ様、ナイフを投げた。
カンカンカンとターゲットを外す音がした。
「チィ」と自分しか聞こえない舌打ちをし、またナイフを投げようとすると、男は魔法陣の中へ消える。
恐らく相手に、俺は見えてはいない。俺は、天井裏のさらに中に隠れているからだ。
しかし、何で消える必要が? 俺のせいか?
王の影は疑問に思っていた。
ギラザックの空間魔法使いの男side
ギラザック王の命令で、常にターゲットを監視していた。
すると、ターゲットの部屋に、不審な人物が近づく。
もしかしたら、他国の者が、ターゲットを奪おうとしているかもしれない。
この部屋の主は、上位の植物の精霊憑き。
それではこちら側の計画に狂いが生じる。
なので、慌てて自分の空間に入れたものの……俺、監視だけで戦う力はないんだよ!!
精霊も治癒系だし!!
それに……何で今日に限って、監視役が俺しかいないんだよ〜!!
でも、やらないと……
意を決して、不審な女に対峙した。
フィーネside
フィーネは、空間魔法の中にいることを冷静に把握していた。
外へと続くであろう魔法陣の前で待っていた人物は、フードを深くかぶっていた。
「邪魔、しないで!!」
「こちらのセリフだ!!」
空間魔法使い自体は弱いらしく、あっさりとフィーネは倒して、魔法陣に飛び込んだ。
戻ってくると、すぐにまたノックして、ドリスが出てくるのを待つ。
コンコン
『まずい、精霊がこっちに来る!!』
ファントムの声にすぐに隠れようとすると、また空間魔法使いがフィーネを引っ張った。
テレシアの空間魔法使いの男side
空間に避難していた男が、また天井裏に戻ってきた。
そして足をついた瞬間、またナイフが飛んできたので、手元にあるナイフでそれを落とした。
キィンキィンと音が響く。
やばい! また精霊が見に来る!!
「くそ」っと男が舌打ちをすると、また空間に引っ込んで行った。
王の影side
うーん。俺に気づかれたから、引っ込んだのかなぁ。何かに怯えているような素振りもあったけど。
……うん。 やっぱり俺に恐れをなしたのかな?
ギラザックの空間魔法使いの男side
クソォ!
肉体派だったら、こうはいかないのに!!
男はフィーネから殴られ、一瞬気絶していた。
そして、起き上がった途端、やけくそになっていた。
また、フィーネを強引に空間へ引き摺り込んだ。
フィーネside
懲りずに空間魔法使いは、フィーネを引き込むと、覚束ない手で攻撃をしようと、腕を振り上げる。
しかし、フィーネの方が上だったのか、懐に入ると、下からアッパーで返した。
「……っぐあ!!」
そして魔法陣が消える前に、フィーネは飛び込んだ。
ギラザックの妨害なのか、何がしたかったのかわからなかったが、とにかく任務を続けた。
声を変えるため、ファントムにお願いする。
コクリとうなづいたファントムが、魔力をフィーネの口に集めた。
すると、フィーネの声はアンジェリーナの声に変わる。
「ドリス?」
フィーネはリーナのフリをして、中に居るドリスに話しかけた。
「その声……リーナ!?」
「うん。何か……胸騒ぎがして、心配で……顔、見せてくれる?」
やった!! 言い切った!!
『あ!』
不安そうにファントムが叫ぶと、何と、ドリスに憑いていた精霊が顔を出した。
『待ちなさい! ちょ……あ!』
精霊の制止を振り切り、フィーネはすぐにその場から走り去る。
管理人に注意しながら、足音を極力立てずにわずかな壁に隠れ、様子を伺うと、ドリスの精霊はもうこちらを見ていなかった。
慌ててエミーリアの部屋へこっそり戻ると、そこには仲間の男が居た。
「どうしてここに!」
「誰かはわからないが襲撃を受けた。何となく、この国の者だと思う」
「こっちは空間魔法使いに妨害された」
「……ギラザックか」
すると、廊下が騒ぎ始めた。
「俺はここから去る。お前はエミーリアに」
仲間の空間魔法使いの男が、魔法陣の中へ消える。
フィーネはファントムに変身をお願いする。
変身時、ファントムは自分自身に魔力を集め、フィーネの身体を覆う様に憑依して変身する。
なので、変身すると、ファントムが消えた様に見えるのだ。
フィーネからエミーリアに変身し、不安そうな顔でドアを開いた。
どうやら、ドリスが兵に不審者が入ったことを知らせたらしい。
しばらく襲撃は難しいか。
でも、ギラザックが命を狙っているのは、確定した。
ドリスが生きていること自体が、あちらには不都合なんだろう。
もし、命が狙われることになったら、こっそり助けることも視野に入れないと。
この時のフィーネは、ただ自分が襲撃者だとバレないかが不安で仕方なかった。
「……私が知っているのは、以上ですね」
あの時の襲撃の裏側について、ドリスに問われたので、フィーネが知っている限りの事を話した。……ドリスの仲良しグループ六人の前で。
「じゃあ、天井裏には、ドリスを守っていた誰かが居たってことか」
「私が当主様に聞きましたところ、王の影の方が居たそうで」
「王の影!?」
「マジか……」
「私が……王の影に?」
「ドリス。落ち着いて! もしかしたら、私にもついて居たかもしれませんわ。階段から落とされたのですから」
「その通りです。アンジェリーナ様にもついておりました」
「あら……当たっちゃいましたわ。……冗談でしたのに」
「では……その場に、王の影とテレシアの賊と、ギラザックの賊が居たと言うことでしょうか? ……物凄い状況でしたのね」
「えぇ。テレシアの賊だった私自身も驚きました」
「裏側ってさ。知ってへぇって思うこともあるけど、知らない方が良かったって思うことも……あると思うんだ」
「トール。怖気付いたな」
「当たり前だろ!? もし、ミリィがその状況ならって思うと……ゾッとする!!」
「トール様……!!」
「まぁ……とりあえず、その後は何にも……なかった訳じゃないが、そんなに混戦した状態はなかったと言うことだな」
「……聞かなきゃ良かった」
「ドリスにとっては、ただの怖い話で終わった方が、幸せだったかもな」
皆、ドリスに、困った顔を向けた。
うまく伝わったかどうかが心配です。
わかっているとは思いますが、王の影は精霊が見えないので、敵が何に怯えているのかがわかっていません。敵が怯えていたのはアイリスで、見つかったら速攻で縛りあげられるため、見つかりたくはないのです。
テレシアの空間魔法使いにも精霊が憑いているのですが、こちらも治癒系の精霊なので、戦闘には全く役立たないのでした。
次回、ワシュー王太子、愕然
ほのぼの回です




