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16.討魔のマントと魔王との約束

 勉強を終えると、今度は闘技場でサタンと格闘術の鍛錬だ。


「ガハハハ! よくぞここまで来たな! 我が息子よ!!」


 お決まりのセリを吐きながら、

 サタンは闘技場の中心で仁王立ちをしていた。

 彼の叫び声に驚いたのか、外にある森でくつろいでいた鳥たちは一斉にどこかへ飛んで行ってしまった。


 声量だけで小動物を圧倒させるとは……

 さすがは魔王サタン。


「どうも。お父様。いつもと変わらぬ豪快な振る舞いですね」


 活力あふれるサタンに対し、俺の反応はやや脱力としたものだった。

 修業・小休み・勉強・そしてまた修業という繁忙を極めるスケジュールに体が悲鳴を上げているのだろう。


「何じゃその元気のないリアクションは。今からそんなテンションじゃ、また失神してしまうぞ」

「あはは……お手柔らかにお願いします」


 去年は、ひたすら魔獣相手に拳で戦っていたが、

 今年から対戦相手が魔獣からサタンに変わった。

 正直、魔獣よりもしんどい。


 もしかしたら、ウェホウドさんとの修業よりも厳しいかもしれない。

 ウェホウドさんは稀に本気を出すことはあるが、

 基本的には俺の力量に合わせてくれている。


 俺が魔界騎士団のトップに200勝できているのも、ウェホウドさんが手加減してくれているからなのだ。

 しかし、サタンはその加減という物をしてくれない。


 ガハハ! ゾーマよ吾輩を早く超えてみろと言いながら、毎回俺をフルボッコにしてくるのだ。

 いくら俺が超成長のスキルを宿していても、サタンと俺では身体能力に差がありすぎる。


  ただの殴り合いでは、サタンの強さにはまだ届かないのだ。

 まあ、最近は喰らいつけるようになってきたけどな。


「今回から、修業のレベルをもう一段階上げるぞ!」

「え?」

 

 嫌な予感がしてきた。

 ただでさえ、付いてくのがやっとなのに、そこから更に修業のレベルが上がるのか?


「お前ウェホウドに200勝もしたらしいじゃないか。それならもう手加減する必要もないと思ってな。今日から本気でいくぞ!」

「え? 今まで加減してくれてたんですか?」


 手加減してあの強さなのか……

 本気でかかってこられたら本当に命が危ないぞ。

 勇者と戦う前に死んでしまうわ。


「当り前じゃろ。吾輩は魔王じゃが、鬼ではない」


 鬼も魔王も地球じゃ扱いは似たようなものだけどな。


「お前はこの一年間、ウェホウドと剣の「技術」を学び、勉学で「心」を育て、吾輩と「体」を鍛えてきた」

「はい、そうですね。心技体。全て十全に吸収してきたつもりです」


 俺の言葉に、サタンは獰猛な笑みを向けてきた。

 その笑顔に、思わず背筋が凍ってしまう。

 

「では、その心技体を全て吾輩にぶつけるのじゃ」


 そう言うと、サタンは右手から灼熱とした炎を放出させた

 これは、炎属性の中級魔法、ファイヤ・息吹ブレスじゃないか。

 そんな高度な魔法を、我が子に向かって放つなよ!


「危ねえ!!」

 

 俺は慌てて飛翔してくる炎を手で受け止め、打ち消す。


「おお! 流石は『魔法消去者マジック・キャンセラー』。吾輩の本気の一撃を無効化するとは凄いな!!」

「いきなり攻撃しないで下さいよ! 俺が止めて泣きゃ、闘技場が丸焦げになってましたよ」

 

 いや、本当俺が止めてなかったらどうしてたんだこのおっさんは。


「ならお前が吾輩を止めて見せろ。素手だけじゃなく、腰に据えている二つの剣も使ってな」

「剣を使ってもいいのですか?」

 

 俺の問いに、サタンは頷く。


「今回から、修業内容を単純な肉弾戦から実戦形式の戦闘に変える。吾輩も魔法を使うから、お前も剣を使え」


 成る程な……。互いに持てる力全て出しての戦いか。

 こりゃ本当に殺し合いみたいな感じになっちゃうな。

 肉弾戦では腕力的に俺が不利だったが、


 剣があれば、もしかしたらサタンに一矢報いれるかもしれない。

 少なくとも、殴り合いだけの戦闘よりかは勝率が上がるだろう


「わかりました。剣を使います。そっちの方が父様に勝てる確率は上がりますもんね」


 あっはっは。剣さえあればこっちのもんだ!

 ウェホウドさんに鍛えられた俺の華麗なる剣捌きを見せてやるぜ!

 

「となれば、まずは先手必勝! くらえ、飛ぶ斬撃!」


 目には目を、歯には歯を、

 不意打ちには不意打ちを

 俺は悪役顔負けのゲス顔を浮かべながら

 隙だらけのサタンに斬撃を放った。

 

 二つの斬撃は鋭い斬撃音を奏でながら、一直線にサタンの元へ飛んでいき、見事に命中した。


「……あれ。モロに喰らってたよな。大丈夫か?」


 一応手加減はしておいたが、それでもまともに受ければ致命傷は避けられない。

 サタン、大丈夫かな。


「と、父様―。大丈夫ですか?」

 

 心配になり思わず声をかけるが、その心配は杞憂に終わった。

 サタンは傷一つなく、高笑いを浮かべながらその場で仁王立ちをしていたのだ。

 ば、化け物かよ。何であの攻撃で傷一つついていないんだ。


「良い攻撃だったな。ゾーマよ。このマントがなければ、流石の吾輩もかすり傷くらいはついていたかもしれん」

 

 サタンは羽織っている黒のマントをヒラヒラト俺に見せつけてきた。


「何ですか? そのマント」


 そんなどこにでもありそうなマントで俺の攻撃を防いだっていうのか?

 

「このマントは「討魔のマント」といって、剣聖が初代魔王様に作った伝説のマントじゃ」

「剣聖が??」

「戦争を終わらせた英雄として、魔族はいつしか魔王と呼ばれ政治の中心になっていた。最大の矛を持つ魔族でも、矛だけでは魔界の民を守り切れまい。そう考えた剣聖はこのマントを作り、魔族に無敵の盾を与えてくれたのじゃ」


 そう言ってから、サタンはマントの中心に記されている紋章を見せた。

 

「これは、我がベルゼブブ家の紋章ですね」


 右に魔族の象徴である伝説の竜ルシファー・ドラゴン

 左に剣聖がモデルだと言われている白馬に乗った老騎士

 

 そして、真ん中には、両者が大事に支えている小さな火種が記されている。

  以前、この火種はなんなの?とサタンに訊ねたことがある。


 この火種は、永らく続いていた争いが終わり、ようやく芽吹いた平和のことだとサタンは教えてくれた

 今では灯ったばかりの小さな火でしかないが、これから時間をかけていつかは魔界中に燃え上がる立派な業火にして見せよう。


 そう、初代魔王様と剣聖はともに誓い合ったらしい。

 そして、その意志は歴代の魔王に脈々と受け継がれていき、200年経った今でもその火は消えることなく続いている。


「お前さんにも、いつかは初代様と剣聖の意志を継いでもらいたいものじゃ」


 サタンは小さくそう呟くと、頬の傷をそっと撫でた。

 その顔は以前も見たどこか憂いを帯びた、物悲しい表情だった。


「きっと受け継いで見せます。だって僕はそのために、今頑張っているのですから」


 魔力もない。

 魔法も使えない、文字通り落ちこぼれの俺だが

 それでもサタンは俺を信じてくれているのだ

 その期待に答えるのが親孝行という物だろう。


 俺は生前、その親孝行という物が出来なかった。

 その事を、俺は今でも後悔している。

 前世でやってしまった過ちを、繰り返さぬよう全力で何かをやり遂げたいものだ。


「ハハハ。そうか!」


 俺がそう言うと、サタンは機嫌よさそうに笑った。


「お前さんが約束通り王学の試験を主席で合格できたら、魔王の後継者の証としてこのマントを授けよう」

「え! 本当ですか?」

「ああ。吾輩は嘘をつかん!」


 よっしゃああ! ますます修業に身が入るぜ


「おお。このマントを貰えるのがそんなに嬉しいか」

「はい! 嬉しいですよ!」

「ガハハ!! そうか。ならば、早く強くなって見せろ! ウェホウドに200勝したその剣術を吾輩にも見せて貰おうか!!」


 ガハハと相変わらずの豪快な笑みを浮かべてから、サタンは巨大な氷魔法を放つ。


 氷系統の上級魔法ーー氷山アイス・咆哮インパクト

 先程放たれた中級魔法を全てにおいて上回る、大変危険な魔法だ。


 一流の魔法師が使えば、一撃で山が跡形もなくなるらしい。


「そんな魔法をこんな所で使うなよ……」


 あれ、これ親孝行する前に親に殺されるんじゃね。

 てか、上級魔法とか本来なら冒険者数十人でも手が終えないレベルの魔獣に使う魔法だからね。


「くそ! こうなりゃもうヤケクソだ!」


 何とかその攻撃を打ち消し、俺は両剣から鋭い斬撃を放った

 ちなみに、この対決の勝者は、夕飯になってもリビングに来ない俺とサタンにしびれを切らしたレイナスの怒号だった。

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