〜わたしの鎌倉物語〜
こんにちは、ムサシと申します。ノベルゲーム投稿アプリ「のべるちゃん」にて作品を1つ制作していますが、当方受験生の為一旦のべるちゃんでの創作を休止しました。しかしながら、何も作らない(あるいは何も書かない)というのは精神的に寂しいものがあり、それならばという事でここ・小説家になろうで小説を書いてみようという結論に至りました。小説には元々憧れがありちょろちょろと私的に書いたりはしていたものの、このような形で皆様の目に触れる状態で発表するのはほぼ初めてなので実質的な処女作と言える作品だと思っております。それ故、文の拙さや構成力の無さが際立っていることと存じます。しかしながらこの作品にかけている熱意は我ながら強く、たった1人だけでいいから誰かに愛してもらえるような作品になればこれほど嬉しい事はありません。
ちなみに、タイトルはロックバンド・KEYTALKの「トラベリング」という曲に出てくる歌詞(作詞作曲:首藤義勝氏)から引用させていただきました。タイトルだけでなくストーリーもこの曲から着想を得ました。また、江ノ電の駅や鎌倉高校は実在しますが、登場人物はすべて架空です。実在の人物とは一切関係ありません。
長くなりましたが、どうかこの作品、ならびに私・ムサシをどうぞよろしくお願い致します。それではご覧ください!
ちょっとした都市伝説のような、はたまたそうじゃないような、なんだかとっても不思議なお話。広くて狭い鎌倉にある小さな街の、わたし達のすぐ側にある不思議な話。
■Yugure Drawing■
わたしの名前は山本絵里花、鎌倉高校の2年生。生まれた時からずっとここ鎌倉に住んでいる。もっと言えば、江ノ電の鎌倉高校前駅から歩いて5分くらいのところに木造のボロ家があって、そこに昔から住む山本家の4代目・長女だ。
その鎌倉高校前駅は《関東の駅百選》というものに選ばれていて、地元に住んでいるわたしでさえいつ行っても「綺麗だなぁ…」って感慨深くなってしまう。
真っ直ぐに伸びる単線の線路に小ぢんまりとした可愛いホームがちょこん、とあって、並行する道路の向こうには一面の湘南の海。夏の晴れた日なんかは特に綺麗で、まるで世界的な巨匠が描いた絵画のように鮮やかな《湘南ブルー》に思わず涙が出そうになってしまうものだ。
■Yugure Drawing■
そんなわたしには幼稚園児の頃からずっと気になっている事がある。わたしだけじゃなく妹も弟も、父も母も近所のおじさんもおばさんも誰もが幼い頃から興味を持っている事。それは、《何の前触れもなく住宅街の小高い丘に真っ白なアトリエが突然現れて、そこに住んでいる画家のお爺さんは夕暮れの海の絵だけをひたすら描いている》という、半ば都市伝説のようなオカルトじみた噂だ。
更にそのアトリエは夕陽に照らされると見事なオレンジ色に染まると言うのだけれど、少なくともわたしの家族、友達、近所の人たちはそれを一度たりとも見たことが無い。
ネットの某掲示板に【古都鎌倉にオカルトあり!幽霊?幻覚?白いアトリエと年配画家】との噂が流れたので、物好きなオカルトファンや都市伝説マニアがうちの近所まで来ることが増えたものの(みんな街を汚したりしないので悪い気はしない)、今まで誰ひとりとてそれを見つけた者はいない。「やっぱりデマなんじゃね?」「これがよくある迷信ってヤツだよ、気にするまでもない」「行っても鎌倉観光になるだけ」そんな書き込みも増えてきたように思う。
正直、わたしもここ最近うすぼんやりとそんな事を考えてしまうようになった。まだ子どもとは言え、もう立派な高校生。16年間生きてきて一度も《そんな気配》を感じた事がないからだ。「白いアトリエ…絵描きのお爺さん…」わたしは何かしらの答えを求めるように、小さな声でそう呟きながら今日も夕暮れ時の街を歩いて帰った。
■Yugure Drawing■
それから1週間。夏休み前最後、終業式の日。
「えりか〜!おはよ!」
「おはよう絵里花!」
《みゆみゆ》こと西元美由に続いて《ハル》こと真田春香が声を掛けた。2人ともわたしの大事な親友。
「えりかさぁ、夏休みうちらでプール行って花火大会見に行かない?絶対楽しいよ!ね?行くでしょ?」
相変わらずハイテンションだなぁみゆみゆ。
「えー、確かに楽しいだろうけどさ…。まさか同じ日に行くとか言わないよね…?」
わたしは微かに顔を引きつらせた苦笑いで答えた。
「行くなら同じ日でしょ。華のJKたる者、この夏を1秒たりとも無駄にしたくないのであーる!」
……わけがわからない。間髪入れずに、ハルが母が娘をたしなめるような冷静さで 疲れるでしょ、と一言。どうやらみゆみゆは納得しきれていないようだ。
そんな感じでいつものように教室で3人でたわいもない会話をし、それ以外の子とも〇〇のライブに行くだの彼氏とデート行くだの(わたしにはいない、そもそもできる気がしない)、色々話してから体育館に移動した。
エアコンが設置されていないそこはただでさえ蒸し暑く、全校生徒と教職員が集められているのだから尚更だ。わたしは額から結露のように染み出してくる汗をしきりにタオルで拭う。
隣のクラスの副担任が始めの言葉を述べ、続いて校長が壇上に上がる。この瞬間、全校生徒の思いは恐らくひとつだろう。
「はよ終われ」。
案の定、無事に終業式を迎える事ができ嬉しいですやら2学期の始業式でまた皆さんの元気な顔を見たいですやらお決まりの台詞がマイクを通してわたし達の耳に届く。何の面白みも、何の必要性も感じないいつもの校長スピーチかと思っていたが、突如校長は話題を変える。
「私はこの歳ですので機械には疎いですが、皆さんを真似てスマートフォンを購入したんです。」
へえ、あの地味な校長がスマホかあ。
「正直使い方がどうとかアプリがどうとかメールがどうとかよく分からなくて、未だに娘に手取り足取り教わっているのですが…」
娘さん、ご苦労様です。
「そんな娘が特に真剣に教えてくれているのがインターネットの操作方法でして。インターネットに関しては私自身もよく学校のパソコンで資料を調べる為に閲覧していますので多少は慣れていまして、せっかくなのでその新しいスマートフォンで気になっている事を検索してみたんです。」
ほうほう、面白い。そんでそんで?
「何を検索したかと言うと、我が鎌倉高校の近くに存在が噂されている謎のアトリエについてなのですが。」
ざわ…と生徒達からどよめきが漏れる。この高校の生徒なら誰しもが知っている事ではあるが、まさか校長の口からそれが出てくるとは知らず、わたしも結構驚いている。
■Yugure Drawing■
結局、校長は奥さんを連れて噂を頼りに歩き回った挙句アトリエを見つけることができずこっぴどく叱られたそうだ。みんなそれを聞いてどっと笑っていたし、もちろんわたしも面白かったけれど、でもずっと別の事を考えていた。
「探そうとして見つかるものではない」
わたしにはどうも、そんな気がしてならないのだ。
■Yugure Drawing■
放課後、ハル達に藤沢ランチに誘われたので早速教室を出ようとした時、お調子者で愛されキャラのキッチーこと松村政吉が珍しくわたし達に話しかけてきた。
「ちょっと待て山本達!俺、話したい事があるんだ。」
「なになに!?告白!?」
「ち、ちげーよ西元!お前ら全員にどうしても言っておきたい…いや、言わなきゃいけないことがあるんだ」
「どうしたの、急に真剣な顔して…」
もっともなことをハルが言う。
「いや…その…」
「何よ?」
少し怪訝な顔でわたし達3人は声を揃える。
「ランチ……俺もついて行っていいすか?」
第1話 終
連載第1弾作品の第1話が終了しました。最後まで読んでくださった方がもしいらっしゃれば、今ここに心からの感謝の意を表したいと思います。ストーリーも小説家になろうへの投稿も本当の本当にスタートラインに立ったばかりではありますが、この話を書いていて自分自身とても楽しかったです。第2話以降も引き続き頑張っていきたいと思っていますので、皆様ご贔屓のほど宜しくお願いします!
ムサシ