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第68話  魔王戦 その2

「くっ・・・。本当に強いんだね・・・」

「シミオン、お前、まだ分からないのか?」

「全てを理解しているつもりだ。でも・・・。余計にユリエルくん、君の事が羨ましくって、憎らしいなぁ?」


 シミオンは、空中に足を組んで座っていた。隣にはシャロンちゃんとフェリシアさん。

 確かに、そうなのかもしれない。シミオンが頭が良い。御礼状に、全ての事を理解していて。余計に、俺の事が嫌いに、か・・・。


「じゃあ、そんな事は止めて、こっちに来い!」

「そういう訳にもいかない! 僕は、穢れ過ぎた」

「え・・・?」

「僕の為に、沢山の兵を出した。みんな、死ぬって分かってたのにだ。僕が殺したのと同じ。だから・・・。もう、遅いんだ」


 シャロンちゃんとフェリシアさんが、黙って武器を構える。


「それだったら、ユリエルくんも殺したいし、出来ないなら、ユリエルくんに殺された方が良い」

「・・・。そうか・・・。なら、本気で戦わせてもらう」

「それが良い。さあ、行かせて貰おうか」


 シミオンは、例の杖を此方に向ける。

「これはね・・・。ユリエルくんの鮮紅に対抗して、暗紫って名前にしたんだ」

「暗紫・・・。なるほどな」


 杖に付いている宝石は暗い紫色をしている。柄の部分は青っぽい色をした木で出来ている。

 大きさは五十センチないくらいだろう。けれど、とても強い魔力持っている。大きさは問題じゃない。


「よし、シャロン、フェリシア!」

「了解・・・」

「了解です!」


 そういうと、シャロンちゃんは斧を、フェリシアさんは剣を構え、此方に向かってきた。

 二人だけだったら。おそらく余裕だっただろう。でも、シミオンは、何かの魔法で大量の魔物を出現させた。

 そんな魔法も使えるのか。そう思いつつ、俺はフェリシアさんを相手にする。


「ユリエル・・・。昔はあなたのこと、結構好きだったわよ」

「そりゃどうも。俺も、結構好きでした」

「あらありがとう。随分上手に騙されてくれたみたいでッ!」


 どっちが素だ? 今のが素だったら・・・。嬉しくないな。

 シャロンちゃんはエディとリリィが相手にしている。残りで魔物と戦闘中。


「昔・・・。私、ユリエルと戦いたかったのだけれど、タイミングが無くてね」

「シャロンちゃんとは戦ったはずですね」

「シャロンが勝ったんだっけ?」

「ええ」


 ガチリと剣が組み合わさる。体制が悪いのは俺だけれど、力ではフェリシアさんは劣る。思い切り押し返すと、慌てたようにバインドを解く。

 あまり強くはない。寧ろ、シャロンちゃんの方が強いんじゃないだろうか。


「そう、私は、魔王の適性、なかったから」

「え?」

「何も知らないの・・・。じゃあ教えてあげるわ」


 魔王の子供が、必ず魔王になれるとは限らない。それも、封印されていれば、尚更だ。

 魔王になったというのは、七歳までに、ある武器を持つ事が出来たら、と言われている。

 それが、シャロンちゃんの持つ斧や、シミオンの暗紫だ。


 あの時、魔王が復活した、と言われたのは、シミオンが六歳の時。つまり、シミオンがシャロンちゃん、どちらかに魔王の才能があるという事だ。

 シミオンは何なく杖を持てた。フェリシアさんは・・・。何度試しても。バチリ、と電流の走るような痛みが来る。それは、武器に拒絶されている、という事。いくつか種類があるから、フェリシアさんは、何度も、全部を触ってみた。けれど、ダメだった。

 なのに、シミオンは。迷うことなく杖を見て、これ、と呟くと、それを持って見せたのだとか。

 それから二年。だいぶ大きくなったシャロンちゃんも、迷うことなく斧を選び、持つ事が出来た。


 フィオンは天才の弟と妹を見て、家を飛び出して行った。フェリシアさんは、それが出来なかった。出て言ったところで。何処にも、自分の居場所など無いのだ。何せ、その時。フェリシアさんは、まだ十歳程度だったのだから。


 ある時。父親と母親は死んだ。シャロンちゃんの魔法が暴走したのだ。フェリシアさんは、ますます出ていく事が出来なくなった。大きくなったとはいえ小さい弟と、まだ幼い妹。執事や侍女の悪魔が居るとはいえ、置いて行くなんて、出来なかった。


 魔王の才能がある二人。どちらが魔王になるかと、いつも仲は悪かった。勝った方が魔王。年も上で、当然シミオンが勝っていた。けれど・・・。シミオンは焦っていた。妹の成長が、早すぎるのだ。いつか抜かれる。

 そう思い。シミオンは、有名な学校であるアルファズール武術学院の入学を決めた。


「まあ・・・。私が二人に劣るのは当然なのよ」

「そう、か」

「久しぶりだったの、本当に。魔王の才能を持った子が生まれるなんて。それが、弟と妹だなんて・・・。悔しいけれど、何でか憎めなくて・・・。どうしていいのか分からなかった」


 剣を振りながら教えて呉れたフェリシアさんは、そっと涙を流して、剣を下した。

「私は殺して。でも、約束。シミオンを、普通の男の子にしてあげて欲しいの」

「・・・。それは飲めないな!」

「きゃっ?!」


 俺は、フェリシアさんを地面に転がした。

「一緒に、シミオンを改心させる。フェリシアさんは、殺さない」

「な、なんで・・・」

「一瞬だったとしても。信じてしまった人を嫌いになるのは、とても難しいんですよ?」


 俺はフェリシアさんを立たせ、にっこりと笑いかける。

「いいですか? 今俺は、フェリシアさんを倒しました」

「?」

「フェリシアさんは俺に負けました。なので、俺の言いなりになって下さい」

「は・・・?」

「さあ、シミオンを改心させますよ!」


 フェリシアさんは茫然と俺を見ていたけれど、急に眼に涙を溜めて頷いた。

 結構無理があるんだけど、フェリシアさんはどうやら家族思いらしい。行けると思った。


「じゃ、シャロンちゃんは・・・」

「お姉ちゃん、あとはお兄ちゃんだけ」

「ちゃんとやったわよ、ユーリ」

「シャロンちゃんも仲間だよ!」


 シャロンちゃんを相手にしていたエディとリリィが走ってきた。どうやら、同じような事をしたらしい。

 魔物もほぼ倒し終えている。指揮をしていたディオネからの連絡が来る。


「上手くいったようですね。わたしも其方に向かいます!」


 ディオネはすこし遠くにいるらしい。其処から魔法で状況を確認しつつ、魔法で指示を出す。それ、結構凄いよな。

 まあ、さっきやった事は、半分ディオネから指示だったわけだ。半分くらいは自分で考えてやったが。

 って、もう来た。一体何処に居たんだろう。


 さて。イライラした様子でこちらを見ているシミオンに目を向ける。

「フェリシアー? シャロンー?」

「目が覚めました。正解は此方です」

「お兄ちゃんは、間違ってる」


 シミオンは一瞬焦ったような表情をしたが、すぐに杖を構えて言う。

「じゃあ、後悔しないでね」


 シミオンは真っ黒の球を出現させた。それは、すぐに大きくなり、俺たちを囲んだ。

 黒いドームの中。俺たちは、何が起きたのか分からず辺りを見回す。

 フェリシアさんとシャロンちゃんはしっているらしい。


「このエリア・・・。シミオンのエリアよ、気を付けて」

「お兄ちゃんが、一番強くなれる場所」


 俺たちは武器を構える。シミオンがまた、魔力を集め始めていたからだ。

「さあ、来い」

『?!』


 フェリシアさんの体が宙を舞う。何もなかったのに・・・。

 すぐに分かった。床が、壁が。全てが、此処では敵となるのだ。

 フェリシアさんは肩に少し怪我を負っていたが、ディオネがすぐに治療をしてくれた。


「気を付けろ、何処も安心できないぞ!」

「分かってるわ、ルナ、ティナ、大丈夫?」

「今のところは!」

「大丈夫です!」


 いたるところから、蛇の様な物が飛び出してくる。目は無くて、大きな口だけがある。中には鋭い牙が沢山ある。噛まれたら・・・。死ぬと思う。

 何処からいつ出てくるのか、全く分からない。だから、常に気を付けないといけない。


「僕を倒すどころじゃないね。いいのかい?」


 シミオンは魔法を撃ち始めた。俺たちは慌てて避ける。と、その先にあの蛇!

「危ないっ!」

 エドがグレートソードを振ると、蛇は真っ二つになって消えた。


「よし、避けるだけじゃないみたいだな」

「攻撃しても良いのね?」

「なら大丈夫!」


 出てきた蛇はすぐ倒す。シミオンは焦ったようにそれを見ていた。

 と、どうも、出てくる蛇がだんだん小さくなってきた。もしかして、これ、その内出て来れなくなるんじゃ・・・!


「くっ・・・。仕方ない、僕が戦うしかないか」


 シミオンは暗紫に魔力を注ぐ。と、見る見るうちに形を変え、大きな槍に変化した。

 と、槍から雷が出てきた。俺たちは慌てて左右に逃げる。

 魔法も使える槍か・・・。どうすればいいんだ?


「任せて!」


 アリスが氷の球を作り、槍にぶつけた。というか、今のなんだか変だったぞ? シミオン、避けようと槍を動かしたのに、氷の球は目的地まで追いかけて行ったのだ。

 まあ、それはともかく。シミオンは悔しそうな顔をして槍を見る。凍った槍では、魔法が出せないらしい。


「さあ、どうなんだ、いい加減、負けを認めろ」

「・・・」


 分かっている。シミオンは、自分で戦う訳じゃない。何かを召喚するのが上手い。

 だから、この状態では。シミオンは、戦えない。味方は何もないのだから。


「シミオン! どうなんだ!」

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