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第66話  シミオン

 シミオンは基本、魔法で戦う。となると、なかなか俺は出番がない。

 VS魔法なら、魔法で対抗した方がいい。向こうが遠距離攻撃なのに、此方が短距離攻撃で近付かなくてはいけない、など、不利に決まっているからだ。


「あうぅっ・・・」

「きゃっ・・・!」


 ルナとティナが吹き飛ばされる。ルナをエドが、ティナを俺が、柱の隙間から外に飛び出さないように抱きとめた。

 にしても・・・。魔法の一発一発の威力は相当大きい。なにせ、波動だけでルナとティナが飛ばされたのだ。当たったら・・・。想像したくないな。

 その代わり、魔力の消費量も多いと思う。シミオンの顔色が、少しだけ、戦闘開始時よりも悪い。魔力の使いすぎによるものだろう。


「ユーリ様、どうすればいい?」

「とにかく、魔力が枯渇するまで何とか持たせる」

「分かったわ。それで、その後は?」

「接近戦に持ち込めば、俺やリーサ、エドの方が強い」

「わかった。ボクたちで何とか防いでみる」


 俺たち接近戦組は、戦闘に参加するタイミングが掴めず、さっきから彼方此方ふらふらしている。

 入ろうかな、あ、ダメだ、みたいな。数歩進んで、また戻って。右に行って、左に行って。

 という訳で、体力は減るどころか寧ろ回復した。消費量よりも回復量が上回っていた。それくらい動いていない。

 だって、ほら、近づいて味方の攻撃当たったりしたら、なんというか・・・。馬鹿みたいだろ?


 俺は戦闘の様子を見て、タイミングを見極めていく。

「よし、止めっ!」

『はいっ!』

「行くぞ、エド、リーサ!」

『了解っ!』


 まだ、魔法が使えないと言うほどではないだろう。けれど、もう十分。少しくらいの魔法、俺たちだって避けられる。

 シミオンは慌てた表情で剣を取り出す。ブロードソードだ。けれど、やはり。使い慣れていない。

 その状態で、三人相手は、やはり無理があるらしい。エドの一撃で、シミオンは大きく飛ばされ、天井にぶつかって落ちてきた。やり過ぎだ!


「エド、どんな力で・・・」

「え? 死なない程度にやったけど、ダメだったか?」

「・・・。わかったよ」


 良いってことにしておこう。シミオンはふらふらと立ちあがってキッと此方を睨む。

「本当はそろそろ攻めようと思ったけれど、仕方ない。一週間後。アルファズールに攻め込む」


 そう言いつつ、シミオンは魔力を集めていく。俺は急いでリリィとエリーに言う。

「リリィ! エリー! 今すぐ女王様のもとへ!」

「あ、うん、わかった!」


 リリィとエリーは翼を広げると、柱の隙間から空へ飛んで行った。

 残された俺たちは。シミオンの姿をしっかりと見つめ、準備を進める。

 エディとメリーそれからティナで、頑丈なバリアを作る。その後、みんなで一カ所に集まり、離れ離れにならないようにする。特に子供たち。


 そうして、シミオンが魔法を撃った時。

 大爆発とともに、城は崩れ落ちていく。


「みんな、大丈夫かっ?!」

「うん!」

「じゃあ行くぞ!」


 俺の準備していた、ワープの魔法陣に魔力を込める。

 ちょっと俺の魔力だと時間が掛かるから、どうしても、シミオンの魔法が発動するまでに間に合わなかったのだ。その上、俺用に作られているから、俺しか使えない。何故かって、他の悪魔とかが家に行けないよう、ロックを掛けて貰ったのだ。

 ともかく、成功したと思う。俺たちの乗っていた床が落ちていくと同時に、その場から消え去った。



「ユーリ様!」

「なっ、リリィ?! 早すぎるだろ!」

「ちょっと、本当は良くないんだけどね。魔法使っちゃった」


 リリィたちの使う移動魔法は、一度魔界に行き、其処からもう一度こちらに戻ってくるというもの。その時、行きたい場所に降りればいいのだ。

 便利に思えるが、すぐに戻るのは、魔力が歪んだりしてあまりよくない。強力な魔物が発生したりするからな。まあ、クリスタを持って帰るときにも使ったらしいが。


「エリーは魔界、初めてだよね?」

「うん・・・」

「ああそうか。悪い、リリィだけ行かせればよかったか」

「あ、で、でも、ほんのちょっとでも、行けて、よかった、の」

「今度、ゆっくり行こうね?」

「うん!」


 それで、女王様との会話の内容を聞く。

「えっと、ユーリ様が魔王城に行った事と、魔王が一週間後に攻めてくる事はちゃんと言ったよ。一般民は避難させてくれるって」

「・・・。何処に?」

「実は、強力なシェルターがあるんだって」


 ああ・・・。あれな。女王様が、俺にだけにこっそり教えてくれた奴。

 王城に専属魔法使いの中に、空間魔法の使い手が居るらしい。その人は、国の全住民を避難させられるほどの空間を作り出せるらしい。本当は危険だからやりたくないと言っていたが、この際仕方ないという事か。


「今日はゆっくり休んで、だって」

「そうか。ありがとうな」

「ううん、このくらい何でもないもん」


 リリィはそう微笑んだ。

 それにしても、一週間か。あんまり出来る事ないよな・・・。

 シミオン、絶対に改心させる。その為に、必要な事をやっておこう。



「ユリエルくん、これ、本当なの?」

「ああ。悪いけれど、事実だ」

「じゃあ、本当に魔王が来るの?」

「多分な」


 姉さんは黙って視線を落とす。その時、微かに震えている姉さんの手が目に入った。

 怖いのか。そりゃそうだろう。寧ろ、俺が変なのだ。魔王なんて、恐怖の対象でしかないのだろう。


「大丈夫、絶対に、守って見せるから」

「でも・・・。ユリエルくん、死なない、よね・・・?」


 あ、そっちだったのか・・・。姉さん、言うなればユリエル依存症だ。俺が結婚してからは落ち着いたが、それまでは酷くべったりだった。今でも暇があれば遊びに来る。俺の事が大切でたまらない、と言うが目に見えて分かる。

 俺だって、嫁も、子供も、誰も失いたくない。姉さんだって一緒なのだろう。


「心配しなくても、死にはしない」

「ほんと? 約束だよ?」

「ああ、もちろん! だから、安心して」

「・・・。分かった。約束、破らないでね!」


 大丈夫の予定ではある。けれど・・・。ごめん、姉さん。絶対守れる保証はないや。



「エレナ!」

「あ・・・。ユリエルさん、お久しぶりです」

「体調、大丈夫か?」

「ええ。平気ですよ」


 あのあと。アナは目を覚ましてすぐ復活した。けれど、エレナは体調が優れない日が続くようになった。医者はその内良くなる、と言っていたけれど、大丈夫だろうか。


「魔王と戦うんでしょう、聞きました」

「ああ。それで、その・・・。何が何でも、アナを戦場に連れてこないで欲しいんだ」

「え? ああ、そうですか・・・。いや、もう大丈夫ですから、連れて行ってあげて下さい」

「いや、そんなこと言ってもな。ちょっと、これ以上は危ないと思うぞ?」

「え、でも、此処で行きたい行きたいって呟いてるアナスタシア見るのはちょっと・・・」


 ああ、それはそれで来るな。嫌だろう。うーん、今度こそ気を付けて連れていくか。

 分かっている。エレナはもう、元気だ。でも、クリスタの事を忘れた様な気分になるから、わざと。こういう振りをしているのだろう。いや、振りというか・・・。そう思い込んでしまっているのだろう。まだ良くなっていないと。



「ユリエルくん」

「ん、なんだ?」

「俺はね・・・。ユリエルくんなら、絶対に救えるって思ってるから、だから、大丈夫」

「・・・。賢音がそういうなら、間違いはないな!」

「うん! じゃあ、頑張って!」


 賢音は、それだけを言う為にわざわざ家に来てくれたらしい。そのまま家の方向に走っていってしまった。エレナと賢音は、小さな家にホムンクルスたちと住んでいる。

 みんなの幸せを壊したくないから。だから、俺は戦う。それ以外に、理由はない。


「ねえ、ユーリ」

「ん、なんだ?」

「無理はしないで頑張ってよ?」

「分かってるって」

「そういう返事する時が一番心配なのよ」


 エディは小さく溜息を吐く。そのまま、グラスの氷を揺らしてストローに口を付ける。

 俺の、エディとは反対側の隣にメリーが座り、苦笑いしながら言う。


「この、魔王城に行くときだって。一緒に連れて行ってって言ったでしょ」

「あ、ああ、そうだったかもなー」

「ユ、ユーリ・・・。もう! 本気で心配、してるんだよ・・・」


 ああ、メリーが泣き出してしまった。ごめん、ごめん・・・。

 エディも泣きはしないけれど、溜息を吐いて俯いた。

 そうだな。みんな何も言わないから、結構無茶してきた。本当は・・・。みんな、心配していたんだ。黙っていてくれただけだったんだ。


「お願い、もう嫌なの・・・。絶対に無茶しないでよ、お願いっ!」

「私もよ・・・。絶対に無茶しないで。ユーリが居ないと私・・・」


 向こうから、扉を開けては行って来たのはリリィとティナ。

「私も! これ以上辛い思いさせないで! ユール様が無茶するたびに、とっても辛い」

「私が言える事で無いかもしれませんが・・・。毎回、置いて行かれてしまうのではないかって、ドキドキするんです、止めて欲しいです・・・」


 ああ、ほら、俺は・・・。みんなに泣かれるほど心配を掛けていたのか。

 ちゃんと見ないといけない。みんなの事。もっと早くそうしていたら・・・。いや、変わらなかったかもしれない。変われなかったかもしれない。


「ごめん、ごめん・・・。もう、無茶しないよ」

「ほんと・・・?」

「ああ。その代わり、子供たちとアナを頼む」

「任せなさい!」


 こうやって、笑ってくれていた方がずっといい。この笑顔は、何にも代えがたい宝物なのだから。

 失わないように。俺は戦う。

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