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剣神勇者は女の子と魔王を倒します  作者: 鏡田りりか
第三章  VSレリウーリア
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第59話  テルシュさん

 ああ・・・。テルシュさんが、ものすごく機嫌悪いです。


「あんさんたちねぇ・・・」

「? どうかしましたか、御姉様」

「分かる? 何処を見ても洋モン! 畳すれへんでしょう。こないなん、うちはかなわん」


 え、ああ、家が気に入らなかったのか? 確かに、テルシュさんの居た部屋は畳だったな。長くて、変わった形の部屋だった。ええと、ああ! 和の島の王様が居たような部屋だな。

 テルシュさんは、あの後、ティナが稲荷いなり悪払之術あくばらいのじゅつ十種とくさの大祓おおはらいを成功させたため、元に戻った。周りにいた人もだ。

 それで、とりあえず家に避難しているところだ。客間に居る。


「何言ってるんですか。御姉様、昔、真っ白の壁の大きなお城に住みたいって言ったじゃないですか」

「な、なん言うてるん、ティナ。嘘を言わはったらあかんよ?」

「嘘じゃないですから。実は嬉しいんでしょう? ほら、ユーリさんに、素直にお礼、言って下さい?」

「ち、ちゃうって・・・。ああもう! おおきに! ほな、これで満足やな?」


 か、可愛い・・・。テルシュさん、結構可愛いじゃないか。ナデナデしたい。いや、年上だ。

 テルシュさん、嘘を吐こうとしても尻尾と耳で分かっちゃうんだなぁ。ちなみに、ティナは気づいてると思う。本人は分かってないみたいだけど。


「さて。御姉様、帰らなくても大丈夫ですか?」

「ディオネに言うたるならどもない。ディオネは信頼でけるから」

「そうなんですか」

「結婚したはるさかいしょ? 敬語使うん?」

「・・・」


 確かに・・・。でも、ティナが使いたいと言うなら俺は別にかまわない。大体、メリーは一人称ボクだし、エディはちょっと高飛車なしゃべり方するし、逆にリリィは子供っぽい喋り方をする。もう、誰がどんな風に喋っていてもどうでもいい。個性だしな。


「俺はどうでも構わないぞ。ティナ」

「え、じゃ、じゃあ、このままで。敬語じゃないと、その、何だか、失礼な気がして」

「そういうものかしら? まあ良いけれど。ティナの好きにすれば良いわよ」

「うんうん。ボクらも口調なんて自由だしね~」

「だって、ユーリ様も、他のみんなも、そんなこと全然気にしないもん」


 まあ、そんなこんなで、テルシュさんは家に馴染めそうだ。あとは子供たちか。今はアンジェリカ先生とリビングで勉強中。もうすぐ戻ってくると思う。

 ほら、一回会っているとはいえ、遠目に見ただけ。あの時は喋っても居ないからな。人見知りも居るし。

 さっき、まだテルシュさんが寝てる時に子供たちはテルシュさんの事を見ているし、事情も知っている。けれど、実際会ってみないとやっぱり分からないからな。


「あ、テルシュさん、でしたよね。私、ルナです」

 片手に教本を抱え、ルナが入ってきた。リビングの机の上にドン、と置き、テルシュさんの事を見つめる。


「ああ・・・。やっぱりティナさんそっくり! とっても美しいです」

「ルナちゃん、やね。うれしー言葉をもらってしもたかいな、おおきに。ルナちゃんも可愛らしいよ」

「? ふぇ、あ、あ・・・」


 顔を真っ赤にしてうろたえる姿が堪らなく可愛い・・・。

 って、ん? 一瞬で・・・。ルナ、結構な人見知りなんだけど・・・。ティナに似ているからだろうか。


「あ、テルシュさん、起きていたんですね」

「あ、えぇと、お名前」

「俺はエド。エドワードです。其処のルナ、えと、エルナーネの双子の兄です」

「私はリーサですぅ。あ、メリリーサですよぉ。よろしくお願いしまぁす」

「エドくんに、リーサちゃんやね」


 この二人はそこそこ問題ない。人と馴染むのも早いから。だから、やっぱり。学校に行かせてやれなかったのが残念だ。

 テルシュさんも大丈夫そうだ。まあ、子供たちあれだけ養っているんだ、子供、好きなんだろう。


 さて、問題は残りのあの子。

「あ・・・。起きてたの・・・」

「ああ。ほら、大丈夫だからこっちにおいで」

「う、うん・・・」


 エリーは困った様に、テルシュさんを避けながら俺の隣に座る。俺の影に隠れてそっとテルシュさんを見ているから、まあ、興味はあるんだな。

「テルシュさん、悪いのですが、エリー、極度の人見知りで」

「ち、ちが・・・。う、ま、まあ、そう、なの・・・?」


 ああ、言い方が悪かった。エリーの目は少し潤んでいる。ええと、俺の言葉でじゃないよな?

 暫く迷っていたが、キュッと目を瞑ると、その場に立ってテルシュさんを恐る恐る見る。


「あ、あの、エリー、なの。よ、よろしく・・・」

「エリーちゃんやね。よろしゅう。わざわざおおきに、頑張ってくれたようで」

「う、ううん」


 エリーはちょっと安心したように表情を和らげた。よかった、大丈夫みたいだ。

 もう一度俺の隣に座る。声を掛けてやろうとして気が付いた。手が、震えている。

 やっぱり、怖かったか。そっと抱き締めて優しく声をかける。


「エリー、大丈夫だ。よく頑張った。偉いな」

「ちゃんと、出来てた・・・?」

「ああ。もちろん」


 アンジェリカ先生の時も、賢音の時も。小さいときからそばにいた人以外は、なかなか上手く馴染めなくて。その都度、時間をかけてゆっくり馴らしてきた。

 ゆっくりと、少し小さめの声で。そうやって話しかけて貰うようにして、一週間あれば、何とか顔は見れるようになる。そうだな、自分から声をかける様になるには、一カ月くらいかかっていたかもしれない。そうでないと、やっぱり、怖いらしい。


 だから、会ってすぐ、こんな風に自己紹介出来るなんて。ほんと凄いと思う。成長した。

 テルシュさんも、それを分かってくれたから。ゆっくり、小さめの声で話してくれたから。まあ、逃げ出さずに何とかなった。


「ほら、アナ、なんで此処にいるのよ」

「で、でも・・・」


 アンジェリカ先生とともにアナが入ってきた。テルシュさんはキョトンとしてそれを見る。

「えぇと、こん方々は・・・」

「此処の家事担当、ホムンクルスのアナスタシアと申します」

「私は子供たちの家庭教師、アンジェリカです」


 一回来てしまえば。アナは大丈夫。ただ、其処までがちょっと大変だ。自分は飽く迄メイド、と思っているらしく、なかなか家族の中に入って来てくれない。クリスタなんかは、俺たちの表情を見てアナを連れて入って来てくれたんだけど、なんてな・・・。

 ああ、ちなみに、アナは割とすぐ元気になった。もう、前と全く変わらない。


「ああ、家政婦はんと家庭教師はんやったんね。初めましいや、かいな、テルシュと申します。ティナん姉どす」


 テルシュさんはぺこりと頭を下げる。アナを置いて、アンジェリカ先生は笑って部屋を出て行った。多分、もうお帰りだろう。

 なんか、大丈夫そうだ。エリーだけちょっと気をつけてやれば。それも、すぐに何とかなりそうだな。



「ユリエルはん、今ええかいな?」

「え、テルシュさ・・・」

「綺麗な部屋やね。おとこん人ん部屋なんに、随分片付いてて」

「え、い、いや、ちょっと待って、テルシュさん?」


 夜。部屋に入ってきたのは薄めの着物を着たテルシュさん。いや、ちょっとまて! どういう事だよ。

 待って、だって、止める人くらい居るだろ?! どうして此処まではいってこれたんだよ。


「そら、妖術で誤魔化せばええに決まってるでしょ?」

「そういう問題じゃなくて。ああもう!」

「なあに、うち、かなん?」

「そうじゃなくてですね・・・。一体どういうつもりですか?」

「そら」


 床に押し倒されていた。下から眺めるテルシュさんの整った顔に、思わずドキリとする。

「あのティナが惚れ込むおとこし、気にならはったやけよ」


 ああ、なんてこった・・・。嫁以外とはやらないって決めている。っていうか、別に、俺は女の子が好きってわけじゃなくてだな・・・。どちらかと言えば向こうから近づいてくるんだ。

 けれど、なんて魅惑的なキスをするんだ・・・。これ以上、もう、触らないで・・・。


「ん・・・。やっぱええなぁ、おとこん人。初めてやけど、他では絶対に経験出来ーひんな、これ」

「な、何をいきなり・・・。止めて下さい」

「なん言うてるん、本番はこれからでしょ?」


 ちょっと、本当に止めて。戻れなくなる。けど、なんて力で押さえつけられてるんだ、抗えない。

 そうこうしているうちに、テルシュさんは俺の手を掴んで自分の胸へと近づけていく。待って、止めて!


「御姉様! まさかと思って見ていれば! 一体何をしていらっしゃるのですか!」

「あ、あらティナ。いつからおいやしたん?」

「ずっと、ですよ。ユーリさん、ごめんなさい」

「いや、助かった。ありがとう」


 テルシュさんは当然妖孤だ。人を惑わすのは得意。とはいっても、嫁が居るのにあんなの・・・。ちょっと落ち込む。

 ティナは仕方ないと言ってくれたけど・・・。ああでも、やっぱり申し訳ない気持ちでいっぱい。


「ティナ、ありがとう。テルシュさん、申し訳ないですが、ユーリは私たちの物なので」

「分かってるって。ちょい魔が差したん、かんにんや」

「まあ、もうやらないなら良いですよ。ボクたちも監視します」

「うぅ・・・」


 うう、テルシュさん、本当に止めてぇ・・・。本当に、ティナに似てるんだから・・・。

 その上妖術なんて使われたら、俺、もう我慢できないかもしれないから・・・。

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