第55話 ヴァナー戦 version西区域
「さて、じゃ、行くぞ!」
「あ、はい。ごめんなさい、エド。わざわざ私の為に」
「良いんだ。それより、緊張してないよな?」
「う、少し。でも、大丈夫です!」
辺りに注意しながら進んでいくと、とっても高いコンクリートの壁が見えました。なんでしょう、あれ・・・。こんなところにこんなものがあるなんて聞いてないと思うんですけれどね・・・。
って、ああ、此処、攻める場所ですよね? なんで知ってるのか分かりませんが、これを壊せばいいんですね?
「ああ、大丈夫だ。エレナさんからこれ貰ってる」
「? 何ですか? それ」
「爆弾だ。ほら、こうやってな」
エドが投げると、大きな爆発音とともに壁が壊れていきます。ちょ、ちょっと、やり過ぎじゃないでしょうか・・・。これじゃあ警戒されてしまいます・・・。
案の定、人はいません。これじゃあ戦えないですよ・・・。そう思っていたら、エドが急に叫びました。
「おい! 此処に人はいねえのか? それとも、さっきの爆発にビビってるような奴しかいないのか?」
挑発、ですか。こんな事で出てくる人いるのかな、なんて思いましたが、居ました。黒魔族って、喧嘩っ早いんでしたね。
「ティナさん! その家に登れるか?」
「あ、はい」
「じゃあ、上から魔法、頼みます!」
「わ、分かりました!」
いっつもみんなに守って貰ってばかりです・・・。でも、今日はちゃんと頑張るって決めました。なにせ、一緒に行動してるのはエドですから。まだ子供って言うのはあまり関係ないんですけど・・・。だって、私の方が弱いと思いますし? けど、この子はユーリさんとエディさんの大切な子供ですから!
「さて。じゃ、行くか」
エドは大きな剣を構えて戦います。あれは、ええと、グレートソードです! ユーリさんの使っているものよりずっと大きいのに、エドは難なく操って・・・。凄いです。
私も頑張らないと。妖術を使って上から援護していきます。特に、火を起こすのが得意です。その事は、あらかじめちゃんとエドに伝えてありますから、作戦も考えておいてくれているらしいです。
本当は、私の役目なんですけれどね・・・。
私が火の妖術を放つと、一人の人にぶつかりました。あ、今の戦いを始めてから、初めて当たったかもです。その人は暴れて、隣の人へと火が移ります。一石二鳥ですね。やりました!
ちょっと自信が付きました。エドを避けながら、妖術をさっきよりもたくさん撃っていきます。
妖術って、魔法と違うからでしょうか、魔力の消費が少ないみたいです。だから、沢山撃つ事が出来ます。けど、一発の威力があんまり強くないんです。それは、妖術のせいじゃなくて、私が未熟だからです。本当だったら、もっと強いのですが・・・。不甲斐ないです。
「ティナさん、その調子だ!」
「エ、エド・・・。ありがとうございます!」
こんな私を褒めてくれるなんて・・・。ありがとうございます。エドって本当に優しいですね。
エド、余裕が出てきたみたいで、ちょっと笑ってます。不気味ですけれど、楽しそうで、ちょっと羨ましいというか・・・。私、あんなに楽しく戦えないので。必死になっちゃうんです。
エドの振った剣は沢山の人の首を落としていきます。ああいけない、ちょっと吐き気が・・・。やっぱり、あんまり戦いは慣れていないんですね。
前回の戦争の時も大変だったんです。なんだかんだでみんなが守ってくれましたから、其方は問題ないですけれど、精神が持たないですよね・・・。
いけません! 今日は頑張るって決めたんです、こんなところで負けられません! 血なんかに負けてたらユーリさんの足を引っ張ってしまいます!
でも・・・。やっぱり、エド、もうちょっと控えめにしてくれたらよかったのですが。此処まで大袈裟に血を撒く必要、あるんでしょうか。あるんですね。鎧を斬る事は出来ませんから。首を狙うしか有りませんし。
私はエドの合図を見て、大きな妖術を放つ準備をします。エドはトントン、と軽く屋根の上に登ってきました。
「さ、今だ! 撃って!」
「はい! 『悪払之術』!」
魔力量が増えて、もっと楽に出来るようになったんです。ほら、ちゃんと使えてますよ!
次々に兵士が倒れて行きます。ちゃんと出来ました! エドがニッと笑って私の頭を撫でました。
「良く出来てると思うぞ。頑張ってるみたいですね」
「ありがとう、エド」
凄く嬉しい、嬉しいのだけれど・・・。
下から聞こえるのが、黒魔族兵の悲鳴じゃなければ良かったのですが・・・。
「お、援軍だ」
「ん・・・? あ、本当だ・・・」
「じゃ、ちょっと行ってくる。ティナさん、一応気を付けて」
「あ、はい、その・・・。はい」
やっぱり屋根の上にお留守番です。エドは元気ですね・・・。あれだけ人を殺しても。
本当は、辛かったり、するんでしょうか。分かりませんけれど・・・。どうなんでしょう。
それに、最前線に立って、怖くないんでしょうか。ないんでしょうね、楽しそうに戦ってますし。
私には真似出来ません・・・。でも、出来る事をやるのが一番ですよね。
その時、向こうから強い光が来て、私は温かいものに包まれているような感じがしました。太陽の光に包まれてるみたいで・・・。
なのに、兵士たちは叫びながら倒れて行きます。これは、知っています。光属性の魔法です。
南方向・・・。エディさんが使ったのでしょう。とっても強いです。私の使えるものより、ずっと。それと、暖かい。私も、こんな光魔法が使えるようになりたいです。そうしたら、もっと役に立てるのに・・・。ああでも、エディさんと一緒じゃ、エディさんがやるのかもですね・・・。それより上に行きたいです。
と、その時でした。東の方向から、大きな雷の音が鳴り響いて来たのです。私は思わず耳をふさいで蹲りました。
いつの間にか隣に来ていたエドがそっと頭を撫でてくれたので、落ち着きましたけど・・・。ああ、立場が逆です!
何でしょうこれ。ええと、東・・・。きっと、メリーさんとリーサさんですよね? ええと・・・。
ああそうだ。さっきの光魔法。黒魔族ですから、少しは害があるでしょう。そうして慌てて、適当に撃った魔法だったのかもしれません。無事でしょうか・・・。
エドと一緒に遠くを見ていると・・・。ああ!
さっきの雷で驚いたんでしょう。魔物が沢山こっちに向かって来ています!
倒すしかないでしょう。エドを見ると、頷いてました。行くしかありません!
妖術の準備。エドが剣を振っている、タイミングを良く見極めて・・・。
今! エドに当てないようにしたんですけれど、当たってませんよね?
大丈夫そうですね。ちょっとひやひやしました。巻き込んだかと思いました。
エドが上手く避けてくれたのかもしれません。ああ、エドと一緒で良かったです。
魔物多いです・・・。でも、エド強い! これは問題ないのかもしれません。
エドに回復を掛けて、次の妖術に専念。次はどうするか・・・。ちょっと遠くに撃ちましょう。
当てたら嫌なので、こっちの方がいいかもしれません。よし、行けます!
「よっし! ティナさん。父さんの所に行こう!」
「あ、はい!」
凄い・・・。一瞬で倒してしまいました。エドと一緒で本当に良かったです。
早くユーリさんの所に行きましょう。無事ですよね、そのはずです!




