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第32話  行く宛

 俺たちが起きたのは十二時頃だった。太陽が一番高い位置に居る時間だ。

 クリスタとアナは俺たちが起きる前に食べて置いたらしく、椅子が足らないな、なんて思っていたわけだが、大丈夫そうだ。ナディアカティアを二人の椅子に座らせる。


「ところで、二人はこの後どうするんだ?」

「うーん・・・。どうしよう、魔界に行ったら、まずいよね」

「多分。嫌われてるよね。どうしよう」


 ナディアカティアは泣きそうな顔で俯く。と、それを見てリリィが「私のせいで・・・」と呟いて溜息を吐いた。

 ・・・行く場所がないなら、俺の考えを聞いてくれるだろうか?


「なあ、ちょっと聞いてくれ。今は子供たちがまだ小さいから一緒の部屋だが、すぐに別の部屋がいい、となるだろう。それだと、部屋数が足りないんだよ」

「? あ、うん」

「それで。家、建てようと思うんだよ。もっと大きい、城みたいなさ」


 なんで城みたいかというと。

「ねえ、剣神って、凄い人だよね。なのに、お城に住まないの?」

 こういう事を、子供たちが良く訊いてくるのだ。今だって十分大きいのだが。豪邸であることは間違いない。が、王城に行ったことのあるこの子たちにとって、この家は小さいらしい。


「・・・今の家でも十分お城みたいじゃない」

「子供たちがお城みたいな家に住まないのかって訊いてくるんだよ。な?」

『・・・。うん』

「だから、ちょっと外観凝ってさ。お城みたいにしてみないか?」


 これは、相当厳しいと、自分でも分かっている。浮くからな。大きすぎると。まあ、美しい俺の嫁なら、どんな城でも似合うと思うが。これは俺が思ってもダメで、本人の納得が必要になってくるのだ。そういうレベルの問題だ。


「ボクは良いよ。お城に住むとか、みんな夢見ることだよねぇ」

「私も構わないわ。見合う人になれるよう頑張ってみるから」

「私もお城住んでみたいな!」

 一応、婚約中のティナにも訊いてみると、少し顔を赤らめて頷いた。女の子は誰でもお姫様を夢見るのか。


「よし、じゃあ良いな。実は、結構な量の貯金があるんだよ。だから、そっちは心配ない。

 ・・・ってことでナディアカティア。一緒に住むか?」

『迷惑でなければ!』


 よし、決まったな。貯金があるというのは嘘ではない。結構働いたから、ギルドからと王様からと、相当な量の報酬が入っている。

 ・・・。王様、もう、居ないのか。



 王様の葬式は、意外にも小規模で行われた。王女様の希望らしい。信頼できる人のみを呼んだ。

 俺が王女様に声を掛けると、そっと微笑んだ。――余所行き用の、作った笑顔。


「ユリエル様。ありがとうございました、守ろうと、してくれて。これから先も、呼ぶかもしれませんが、よろしくお願いします」

「そんなこと、構いませんよ」

「・・・多少報酬は減ると思いますよ?」

「まさか、俺たちが報酬で動いていると思います?」

「ふふ、思いません! ありがとう、ございます」

 王女様は笑って、それから目に涙を浮かべる。俺はそっと、その場から立ち去った。



「王女様、大丈夫かな」

「ん、ああ・・・。ダメってわけには、いかないんだろうな・・・」

「そうね。王女様、一人になってしまったわけだし」


 リリィとエディと話していると、向こうからメリーが来た。もうドレスからいつものワンピースに戻っている。リリィとエディは着替えが速いのだ。


「何の話してたの?」

「王女様の事よ。大丈夫かしら、って」

「ああ。ボク達より、ずっと強いと思うけど、それでも・・・」


 そう言って、メリーはエディの隣に座った。俺の隣にリリィとエディで、エディの隣にメリーという形だ。

 エディは暫くメリーを見ていたが、急にポツリと呟いた。


「一人称、戻さないの?」

「え? あ、うん。なんか気に入っちゃって」

「あらそう。まあ良いけれど」


 其処で、クリスタが「夕食が出来ました」と入ってきたので、俺たちはダイニングに移動した。子供たちはもうダイニングでクリスタの手伝いをしていたはずだ。自主的に。



 朝、俺と嫁の内の誰かが起きるのは七時頃だ。結婚したてはずいぶん遅かったが、まあ、子供たちもいるわけだし、だんだん早くなって、今はこれくらいだ。

 着替えて下に行くと、大抵キッチンにはクリスタが居る。って言うか、絶対居る。ホムンクルスにも偶に体調が悪い時とかあるわけだが、準備の進み具合で分かる。テーブルと飲み物の準備はアナがやっている。

 で、ダイニングにはエリーが居る。いつもコーヒーを飲んでいる。アナがエリーのコーヒーを入れる係らしい。エリーは俺たちを見ると「おはよう」と小さく言う。

 この頃他の嫁も起きて来る。クリスタの料理もほぼ完成する。だから、みんなで子供たちを起こしに行く。エリーは起きてるけど。


 そうやって全員起こすと、ナディアカティアが帰ってくる。朝の見回りを行って来たところだ。

 ナディアカティアは王女様に許して貰う条件として、朝・昼・晩の見回りを行う事になった。ナディアは跳ぶのが上手いから上から。カティアは少し苦手なので歩いて。

 そうしてみんなで朝ご飯を食べる。


「・・・ねぇ、お父様」

「ん、エリー? どうしたんだ?」

「・・・。ううん。何でもないの・・・」


 エリーはまた黙って食べ始める。最近こんなことばかりなのだ。一体、エリーはどうしたのだろう。

 エリーとのコミュニケーションは、本当にどうしていいのか分からない。どうしたら、エリーを喜ばせる事が出来るのだろうか。


「お父さん、今日は何する?」

「ん、あ、そうだな。ギルド行くか?」

 みんなが頷くので、今日はギルドに行くことにした。



「あ、ユリエルくん、久しぶりだね」

「姉さん。ほんと、久しぶりだな!」

「あれ、知らない子がいる。・・・まだ増やすんだ」

「ティナです・・・。よろしくお願いします」

「ティナ・・・?! ティナ、って、ラティマーの? どうやって手に入れたの?!」

「私の一目惚れ、ですよ」


 ギルドで姉さんに会った。喋っていると、プルネラさんたちが来た。

「あー、ユリエルくん! 久しぶりだね。結構有名になってるんだよ、知ってる?」

「? さあ・・・?」

「ふふ、次期剣神様は女の子がお好きラシイ」


 ・・・。う、嬉しくない! そんな事で有名になってたんだ。ちょっと恥ずかしい。

 でもまあ、俺が女の子好きなわけじゃないって言うか・・・。だんだん寄ってくるって言うか・・・。別に嫌ではないんだけれどな。


「にしても、凄いね。王女様と面識があるって噂があるよ」

「ああ、まあ。でも、俺たちがもっと強ければ、王様は・・・」

「? 何が?」

「いや、なんでもない」


 王様が死んだこと自体は大騒ぎになって広まったが、それがナディアカティアのせいだという事や、王様の護衛として俺たちが向こうに行っていた事は知らない。ナディアカティアが見回りをやっているのは、その事を広めないための条件だからな。

 と、何だか外が騒がしい事に気が付いた。


「鏖殺魔法其ノ伍 竜暴烈震!」

「わあああああああああああ!」

「私のホムンクルスを馬鹿にしたいなら、私を倒してからにして下さい!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 えっと・・・。よくよく知っている声だ。そしてエディが真っ青な顔をする。「ど、どうして・・・」と呟き、声のした方向を見ていた。それはギルドの裏口だ。すぐに荒々しく扉を開ける、怒った様子の彼女が現れた。


「エレナ」

「あれ、みなさん。もしかして、聞こえました?」

「ええ。い、一体、どうしたの?」


 どうやらギルドで依頼を選んでいると、梓桜の事を馬鹿にした人が現れたらしい。ホムンクルスはまだまだ広まっていないからな。よくあるらしい。だから、それだけだったらまだこんなことにはならなかった。が。その人は止めようとした奈桜を突き飛ばし、泣きそうな澪桜を罵った。

 それに気がついたエレナは怒り(そんなレベルじゃないが)、半ば無理やり裏に連れて行き、鏖殺魔法でボッコボコにした。で、今に至る。


「もう信じられません! 梓桜ちゃんの事を『主人に付いて回るだけの能なし』とか言うんですよ?! 私より梓桜ちゃんの方がずっとずーっと強いのに!」

「え、ええ、分かったから落ち着いて」

「あ、ごめん。・・・ええと、紹介したい子が居るんです。咲桜さくらちゃん、おいで」


 小さな少女が此方に歩いてきた。――途中で転んで、涙目で此処まで到着した。

「あ、あの、何でしょうか?」

「この子、新しいホムンクルス。咲桜ちゃん」

「よ、よろしくお願いしますぅ!」


 結構小さい。リーサ・・・、いや、ルナくらいか? 少女というか、幼女か? 瞳の色は水色と紫。黒い髪はツーサイドアップ。可愛い。シャロンちゃんと並ぶ。

 梓桜が頭を撫でる。咲桜・・・、ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


「咲桜ちゃんか。可愛いな」

「ありがとうございますぅ! ユリエルさん!」

「ユリエル様、ですよ、咲桜」

「あ、すみません。ユリエル様」


 咲桜ちゃんはペコっと頭を下げる。美少女とはいえ、シャロンちゃんとはタイプが違うな。もっと積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくる。自分が可愛いと気付いていないみたいだ。

 エレナは趣味が良いな。みんな違うメイド服がとても似合っている。ボリュームのあるスカートが可愛い。


「あ、そろそろ行かなきゃでした。余計なところで時間を取ってしまいましたから」

「そうか。じゃ、またな」

「はい。アナスタシアとクリスティアネをよろしく頼みますよ」



「お帰りなさいませ」

「ただいま。・・・そういえば、二人はエレナの所に帰らないで良いのか?」

「え? 私たちはもう此処が居場所ですし・・・。考えた事も、ありませんでした」


 クリスタはそういうと黙り込む。アナは首を傾げた。

 そうか。此処を居場所だと思ってくれているなら、それは嬉しい。けど、エレナに会いたいとか、思う事はないのか?


「無いってわけじゃないですけれど・・・。でも、私たちはユリエル様にお仕えする為の存在なのです」

「アナの言う通りです。私たちは、此処に居るのが正解ですから、此処に居ればいいのです」

「そうか・・・。まあいいや。今日は夕食は何だ?」

「今日はクリームシチューです。だんだん寒くなってきましたから」

『やったぁ!』


 子供たちがわぁ、とはしゃぐ。みんな、クリスタのクリームシチューが大好きだ。

 俺は母さんの作ったものが一番好きなのだが・・・。そう言っていても仕方ないしな。

 にしても、エレナのこと、そんな答えが返ってくるとは思わなかった。二人が良いなら、自然に接するのが一番、なのか・・・?

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