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第27話  VSディラン その1

 メリルは背中にトライデントを背負っていた。まさか、パーティに大きなトライデントなど持っていられるわけがない。では、どうしていたのか? ずっと、魔法で見えなくしていた。それが、はっきりと見えている。何故か、などと考えている暇はない。メリルの容姿がメリーのものとなる。


「え?!」

「ほら、やはり女だったろう?」

「い、一体、何のために・・・」

「そのままだとやり辛そうだったからだ」


 次の瞬間、驚いた様子のメリーに剣を構えて突っ込んで行っていた。俺は慌ててメリーのもとへ駆けつける。あ、間に合わないっ!

「だ、大丈夫! 大丈夫だよ、ユーリ」

 メリーは魔法でバリアを作っていた。メリーが少し魔力の量を増やすと、ディランは後ろに跳んだ。今からメリーがやろうとしていたこと――跳ね返すつもりだった――が分かったのだろう。


 ディランのこのショーテル、一体どうすればいいのだろう。剣と剣を組み合わせた(バインドという)としても、あの形なら俺に当たることだろう。確か、ショーテルは盾を持った相手への攻撃用だからな。一体、どうやって防御を取れば?

 メリーはさっき、自分の周りを四面、透明な壁で覆って全方向からの攻撃に備えた。が、俺はそう言う訳にもいかない。

 とりあえずは・・・。切先を捕らえるようにするか。


「ユーリ、大丈夫?」

「あ、ああ。にしても、厄介な武器だな」

「うん。リリィちゃんがいればいいんだけど・・・」

「呼ぶか? とはいっても・・・」


 リリィは大勢の前に出るのを嫌う。あんな性格なんだが、軽く人見知りで、エディと会いたくなかったのも本当にこの理由が強いとか。

 まあともかく、今リリィを呼んだら。終わった時に人に囲まれたリリィはどうするだろう?


「ごめん、そういうつもりで言ったんじゃないよ。ボクは、それだけは止めておいた方がいいと思う」

「ならそうしよう」

 此処は、俺たちだけで何とかしよう。そっと息を吸い、バスタードソードを握りしめた。



 この様子なら倒せることだろう。俺は振り降ろされたショーテルを受け止める。

 魔法を使う為、少し体力を温存したうえで互角。もしディランのこれが本気でないなら話は別だが、魔法を使えば勝てるだろうし、魔法を諦めて剣でいっても勝てるだろう。

 それに、まだメリルはほとんど戦っていない。ティナと一緒に見てる。迂闊に魔法を撃つと俺に当たりかねないからこれで良い。ちゃんと合図を出してくれるなら別だが、それだとディランにも気づかれる。


 ただ・・・。やはり少し、違和感があった。何かやろうとしては止め、イラついたように顔を歪ませる。本気を出さないと決めたのか、あるいは出せないのか。出せないとしたら、一体何故?

 其処で、あるセリフを思い出した。


『これ、動き辛いんだが、ボスの命令だ、仕方ない』


 動き辛いの意味を、間違えていたのではないかと思ったのだ。もし、全力を出せないようにできたものだとしたら。確かに、動き辛いだろう? やろうと思う事を制限されては、イラつくのも当然。本気だったら勝てるのに、と思う事だろう。


「そのスーツ・・・。能力を制限するものか?」

 答えが返ってくるとは思わない。が、何となく、そう呟いていた。

「ああ。ボスの命令でな」

 だから、あっさり答えが帰ってきて驚いた。


「答えても、いいものなのか?」

「おそらく・・・」


 それに続く言葉は聞きとれなかった。いや、何も言わなかったのかもしれない。

 ディランは動きを止めた。それに合わせ、俺も少し離れたところで止まる。


「でも、何故そんなものを?」

「今日は力を見る為だから、だ」

「何?!」


 という事は、まだ戦うつもりだという事か。これで終わりのつもりは更々ない。寧ろ、これは宣戦布告?! 

 ・・・なるほどな、魔王はどうやら変なところに真面目らしい。きちんと段階を踏ませる気なのだろう。もし敵同士でなければ、気が合うのかも、しれない。


 それなら、俺も代用サブスティテュート魔法を使う事にしよう。真面目な魔王の為にな。一通り話し終わった、とばかりにディランはショーテルを握り直していた。なら、此方から攻撃しても文句は言えないだろう。


「ディーナ、良いな? 太陽サン

「了解です、ユリエルさん」

「頼んだぞ。サブスティテュート・サンシャイン」


 光魔法の上級、日光サンシャイン。光のウォームアップマジックの契約を結んだ光の精霊ディーナと共に撃つ魔法は、ルミアに少し劣るが、光属性は黒魔族に効果的だ。

 光属性と闇属性はよく似ている。闇属性というのは、精神を蝕み、ダメージを与える。そして、光属性は心の中の悪の部分を攻撃する。どちらも、直接肉体を傷付けることはない。

 闇属性というのは、純粋な心を持つ人ほど大きなダメージを受ける。逆に、光属性は悪の心を持つ人ほどダメージを受ける。例えば、本当に純粋な白の心を持つ人にダメージを与えることはできない。そんな人は存在しないが。


 さて。誰が一番純粋な心を持っていて、誰が一番悪の心を持っているのだろう。

 個人差があり、一概には言えない。が、基本は純粋な心、といえば白魔族、悪の心、といえば黒魔族だ。どちらの魔族も、意識下の、心のずっと奥に、こういったものが眠っている。其処まで、この二つの魔法は到達するのだ。

 だから、ディランにダメージを与えるなら、光属性に限る。


「っ?! あ・・・?」

「お前が魔法を使う事など、ボスに聞いている。甘いな」

『え?!』


 いつの間にか、手には短剣が握られていた。何とか狙ってたであろう胸は外した。が、視界に赤い飛沫が映る。急だったため、完全に避ける事は出来なかった。右肩に走る激痛。この状態では、剣を振る事はもう出来ない。メリルの魔法も、此処まで俺とディランの距離が近く、メリルからの距離が遠ければ厳しいだろう。ああくそ、少し油断したか。

 振り挙げられた短剣、何でだろう、やけに動作がゆっくりに感じられる。それなのに動けないというこの状況。


「あ、諦めないでっ!」

『?! ティナ!』

「ユリエルさん! 大丈夫ですか?!」


 突如視界に移った真っ白の生き物。白狐だった。それは俺を突き飛ばし、着地する前に人の姿に戻った。さっきまでメリルと一緒に居たはずの少女、ティナだ。

 彼女は俺を抱きしめて、キッとディランを睨んだ。


「・・・。私を殺しても、良いんですか?」

「っ! それは・・・」

「ダメなんですよね。殺さず攫う事が条件ですから。でも、この状況。私を殺さず、ユリエルさんを殺せますか?」


 ディランは軽く困ったような表情をすると、溜息を吐いて、一枚の手紙を此方に向かって投げた。その後、床を蹴ると、窓を突き破って消えて行った。此処、四階だが。一体どうするんだろう。

 ティナは安心したように俺から離れ、目に涙を浮かべた。


「よかった・・・。ユリエルさんが、殺されなくて」

「・・・。ありがとうな。助けてくれて。でも、こんな方法。もしかしたら、殺されてたかもしれないんだぞ?」

「それでも良かったんです。私の為に、ユリエルさんが死んじゃったら・・・。私、もう・・・」


 其処にむっとした様子のメリーが乱入してきた。

「あのね・・・。ユーリはボクやエディちゃん、リリィちゃんのだよ? 知ってるよね、既婚者」

「でも、三人もいらっしゃるのですし・・・」

「いやいや、何故そうなるんだ。大体、ティナは子供じゃないのか?」

「何を仰る! 私はもう大人です。一七歳ですよ?」


 そうなの? じゃあ、四つくらい下か? 十分大人だよな。

 え、俺、ずっと子供だと思ってたんだけど・・・。ほら、着物って体型が分かり辛いし・・・。


「って、こんなことを言っている場合じゃありません! ユリエルさん、肩」

「あ、ああ。メリル」

「うん。ええと、治療トリート。これで平気?」

「ああ、大丈夫だ。ありがとな」


 と、其処で王女様が入ってきた。沢山の兵士を引き連れている。

「無事でしたか。で、その乱入者は?」

「・・・。逃げられました」

「そうですか。まあ、仕方ないです。・・・その手紙は?」

「まだ見てません。乱入者からです」


 俺たちは手紙を開く。シンプルに、日付と場所が書かれていた。日付けは三日後。場所は俺とメリーのよく会っていた森をずっと進むとあると言われている城だ。


「え、この城って、本当に存在するのか?」

「します。今は空き家で、魔物の棲み家になっているはずですが・・・」

「あ、そうなんですか」

「人は滅多に来ないですし、内密に会いたい時など利用できますよ」


 ああそう・・・。ってことは、やはり決着? この様子だとまたやられると思うんだけど。どうするか・・・。

 とりあえず、今日はもう遅いから休む事になった。俺たちの分の部屋が用意されているらしい。


 それで部屋を案内して貰っている途中、ふと王女様が口を開いた。

「ところで・・・。ティナは怪我でもなさったのですか?」

「? どうしてでしょうか」

「着物と髪が少し、赤く染まっていますよ」


 元々赤い着物だが。・・・ああ、確かに赤黒くなっている。間違いなく、さっき抱きしめた時に付いた俺の血だ。

「あ、それ、俺のだと思います」

「御怪我をなされたのですか?」

「もう『メリル』に治して貰ったんで、大丈夫ですよ」

「・・・。ふふ、そう、ですか」

 何か、笑われるような要素でも?



 風呂にも入って、さて寝ようか、というところで扉が開いた。入ってきたのはティナ。

 俺たちは少し驚いてティナを中に入れた。彼女は桃色のネグリジェを着ている。


「あ、あの・・・。今から?」

「・・・。軽く、のつもりだったが・・・」

「え、ティナちゃん、やっぱりユーリに気があるんだ」


 んなこと言われても、俺が判断していいのか? エディやリリィの許可がないと・・・。

 じゃあ、一緒に寝よう、というと、ティナはこくりと頷いた。俺とメリルもお預けってことで。

 ティナか・・・。いや、確かに相当可愛いが。いやほら、もし俺がまだ童貞だったとしたら即決だっただろうが、これ以上増やすわけにはいかないだろ?

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