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第22話  宝物

「きゃーっ!」

「ルナ! 待って!」

「エディ、俺が追うから!」

「ご、ごめん」


 ワンピースを揺らして走るルナを追いかける。俺はルナに追いついて抱き上げた。楽しそうな顔をしている。でも、これ以上はダメだ。

 今、広場にピクニックに来ている。が、ルナは何処までも走っていってしまう。三歳ってこんなに走るのか?


「ルナ。離れたら危ないんだぞ」

「はぁい。ごめんなさい」

「え、ルナ・・・。あぁ、びっくりした」


 三歳の子よりも遅いなんてありえないが、気がついたらずっと遠くまで行っていたのだ。いつも大人しいルナがこんなに活動的になるとは思わなくて・・・。

 ともかく、みんなの居るブルーシートまで戻る。


「あ、大丈夫?」

「ああ。ほら、すわって」

「うん」

「怪我はなさそうだね。よかった」


 エドがルナにジュースを渡した。ルナは「ありがと」と言って受け取る。双子だけど、ちゃんと『お兄ちゃん』なんだな。微笑ましい光景だ。

 七月という事で少し暑いが、子供たちはピクニックが楽しい様でなによりだ。二歳と六カ月のエリーはいつの間にか三人を追い抜いていた。リーサは三歳三カ月、エドとルナは三歳一カ月だな。


「・・・りんご、みっつ」

「そうだな」

「幾つに、切る?」

「そうだな・・・。八個、だな」


 エリーの方が明らかに大きい。それは、単に大きさもあるし、能力的な事でも。やっぱり倍くらいで成長している気がする。

 そんな事を考えていると、メリーが俺にジュースを手渡した。


「暑いでしょ、飲んで」

「ああ、ありがとう」

「みんな大きくなってきたね~。楽しみだよ」

「そうだな」


 そう、本当に大きくなってきた。だから、そろそろやっても良いんじゃないかと思っているんだよな。メリーもエディもリリィもずっと楽しみにしているから。


「なあ。そろそろ冒険、行ってみるか?」

『い、行きたい!』



 次の日、俺たちはギルドに行った。ら、何故か物凄くざわざわしている。違和感を覚えた俺たちは、ギルドの職員の人に聞いてみた。

「ああ、それが・・・。ドラゴンが出たそうで・・・」


 どうやら、強い人たちが、数日前に大量に魔物が発生した場所に総員討伐に行ったらしく、この場にそのドラゴンを倒せる人が全くいないらしい。そう言えば、父さんも其処に行ったな。しかもそのドラゴンは強めで、向かっていったところで死にに行く様な物。でも、この街まで来るのは時間の問題。さて、どうしよう。


「・・・って言ってる場合じゃないでしょう?! 避難させるとかないんですか?」

「さ、さぁ・・・」

「・・・ったく。メリー、エディ、リリィ。やって見るか?」

『うん』

「え、でも、相当お強いですよ・・・」


 俺たちは小さなバッジを取り出した。それは、後日アルファズール武術学院から送られてきたもの。俺たちが成人武術大会で優勝したことを証明するバッジだ。

 そしてもうひとつ。アルファズール武術学院を卒業したという事を証明したバッジ。青紫色のこのバッジは、Sクラスを卒業した事を表す。昔から、紫というのは高い役職の者に与えられる色なのだ。・・・魔王の色だから、本当はこんな色のバッジを持っていたくはないのだが。

 まだ幾つかのバッジがあるが、今必要なのはこれくらいだろう。


「俺とエディ、リリィはアルファズール武術学院Sクラスの卒業生、俺とメリー、エディは成人武術大会の優勝者です」

「・・・。わ、分かりました。では、行ってらっしゃいませ」



 俺たちは街の外に出た。大きなドラゴンが見える。俺が知っているよりずっと大きい。あれは確かに、普通の人は死にに行く様なものだな。

 俺は赤い柄の剣をシュラリと抜いた。日に当たって綺麗に光る。この剣が、はたしてドラゴンに効くのかどうか。


「メリー、エディ、リリィ。久しぶりの戦いだし、疲れたら休んでくれて構わない」

『了解』

「じゃあ行くぞ。誰か援護として大きな魔法を撃ってくれ」

「私がやるよ」


 メリーが魔力を右手に集めていく。だんだん大きくなってくると、メリーは両手を上にあげる。丁度両手の上に魔力のボールが出来た頃だった。

 それを見て、俺はドラゴンに向かって走りだした。後ろからバリバリと音がするのを聞きながら。

 後ろから「ダークネス!」の声が聞こえた。真黒なボールが凄い早さで飛んでくる。ドラゴンに当たると弾け、ドラゴンの体が黒くなった。明らかに動きが遅くなる。

 闇属性は、ダメージを与えるとともに相手の目を奪う。今、何処に俺が居るのか分からないはずだ。地面を大きく蹴り、剣を振る。


「ナイス!」

「メリーもな! っと」

「あっ、ユーリ! 気をつけて!」


 エディが慌てたように叫ぶ。ドラゴンが俺に向かって爪を振り降ろしていた。俺は後ろに大きく跳んで避ける。エディがほっとしたような表情をして、また表情を結び直す。

 その後も、エディ、リリィが一発ずつ魔法を撃ち、その都度俺が攻撃を入れる。


「結構強いな。まだ倒れないか」

「相当ダメージがあるはずなのに・・・」

「私がもう一回(ダークネス)撃つから、ユーリ、行って!」


 メリーが魔力を集める。目を瞑り、すぅっと息を吸うと、息を止め、かっと目を開けた。紫色の瞳が怪しく光る。これが、黒魔族・・・。身内、しかも嫁だというのに、ゾクッとした。

 その時、リリィが俺に補助魔法を掛けた。俺は剣に少し魔力を込める。補助魔法のおかげで、いつもに増して早く走れる。そして、高く跳ぶことも可能。このまま、ドラゴンを真っ二つにしてやる!


 いやぁ、こんなにあっさり倒せるんだな。リリィの補助魔法も強力なんだろうけれど。ただし・・・。

「ああっ!」

「え、どうしたの?」

「美味しいところ潰しちまった・・・。高く売れるっていうのに」

『・・・』


 ちょ、そんな顔するなよ・・・。此処潰すと値段に大きな差が出るんだよ・・・。子供だっているし、高く売りたいだろ? まあいいや。


「とりあえず、街は安全ね。戻りましょ」

「ああ、そうだな」

「ユーリ、かっこよかったよぉ!」

 そ、そうか? メリーの言葉が少し嬉しかった。



「素晴らしいです! 助かりました!」

「でも、俺たちが来なかったら本当にどうするつもりだったんだ?」

「王城についているレーザー銃で撃ち殺そうかと」

『・・・』


 じゃあ俺たち行かなくて良かったじゃん! まあ、三人のリハビリにはよかっただろうけど。あと、金を稼ぐには好都合だった。

 ギルドの人たちは後でドラゴンを売捌いてあとでお金を渡すと言った。


「魔法の腕は落ちていないみたいだよ」

「だな。少しくらい出掛けてみても良いかもな」

「でも、遠くに行くなら、やっぱり子供たちが心配よ」

「分かってる。だから、もうちょっと大きくなったら、武術を教えようかと思うんだけど」

「・・・連れていくの?」

「の為にさ、免許取ろうと思うんだ、車の」


 俺が言うと、三人はえぇー、と乗り気ではなさそうだった。挙句の果てに。

「だって、車って、全員乗れるの?」

「車じゃ野道が走れないわ」

「馬車買った方が良いんじゃ?」

 全然乗り気じゃないな。でも馬車か。ちょっと考えておこう。


 俺たちが帰ると、子供たちは大歓迎してくれた。クリスタでさえ悲しそうな表情をするくらい。

 特にルナ。甘えんぼのくせに、外だと走っていくんだもんな・・・。なんでだろな。



「ひぃっ!」

「エディ、大丈夫か?」

「う、うん。ごめんね」


 今日は少し離れたところで魔物狩り。大量発生しているらしく、それを倒して欲しいという依頼を受けたのだ。

 にしても多いな。どうしてこんなになるんだろう。俺のバスタードソードは真っ赤に染まっている。


「ユーリ、ちょっと、休憩、しても良い?」

 近くの魔物を倒し終えたとき、赤い頬のメリーが言った。

「! ああ、悪い。一回此処で休もうか」


 メリーは学校に行っていなかったから、他のみんなに比べて体力で劣る。それに、エディも疲れているようだ。さっき魔物に襲われていたのを助けたが、普段のエディなら一掃できるレベルだった。


「はぁ。どうしてこんなに魔物が?」

「きっとボスがいるだろうな。魔物が多いところっていうのは、大抵強い魔物がいる」

「そっか。ユーリ、疲れてないの?」

「まあ。俺は毎日走りまわってたからな」

「・・・ふふ、剣士って強いね」


 メリーと話していると、エディが隣に座った。二人で楽しそうに話しているのが気に入らなかったのか? 確かに、これでは平等じゃない。最初の約束が守られていない。


「悪い、エディ」

「え?! いきなりなによ・・・」

「いや・・・。何でもない」

 これっていうのは・・・。どうやって扱えばいいんだ?



「お疲れさまでした。確かに確認いたしました。此方が報酬でございます」

 何とか目的の数を倒し終えた。でも、肝心のボスまで到達できなかったな。今度行ってみようか? いやでも、ただ働きって良い気がしないな。


「どうする? 今度行ってみる?」

「暇だったら、だな」

「そうね・・・。今のところ、奥の方に居るし、此処まで来ることはなさそうだもの」

「家の子供たちが襲われるようなことがあれば別だけど・・・。そんな事があったらきっとユーリ様が飛んでくね」


 えぇ・・・。そんな風に見えるか? 確かに子どもは凄く可愛い。あ、確かに飛んでくだろう。そいつだけじゃなくて周りの魔物全滅させる勢いで飛んで行くかもしれない。あながち間違いじゃないな。


「ただいまー」

「ママ! パパ! おかえり」

「リーサ、ただいま」

「お母様・・・。お帰りなさい」

「ほら、お父様もいるよ? エリー」

『ママ、パパ、おかーりっ!』

「ただいま、エド、ルナ」


 ほら、こうやって子どもたちの顔を見ると、とても幸せな気分になる。そして、この子たちが愛しいメリー、エディ、リリィの子だと思うと、尚更大切に思える。間違いなく、この子たちは俺の宝物だ。

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