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剣神勇者は女の子と魔王を倒します  作者: 鏡田りりか
第一章  アルファズール武術学院
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第15話  成人闘技大会

「それでは、一回戦を始めたいと思います!」

 その声は、全ての人の注目を集めた。すぐに女の人に全ての目線が集まる。



「ねえ、ユリエルは当然、成人闘技大会出るでしょ?」

「ああ、当然だ」


 この学校を卒業すれば、俺たちは成人。大人になる。その前に、成人式があるのは当然のことだ。日付けはアルファズール武術学院卒業式の次の日。

 成人式は基本、通っていた小学校で行う。が、アルファズール武術学院に進学した場合は違う。此処で『最強』を決める大会を行うからだ。ちなみに、この大会は、卒業生で無くても、腕に自信のある十五歳なら、誰でも参加できる。


「楽しみだね。あともうちょっとで卒業かぁ・・・」

「もう一週間も無いんだな」

「・・・ユリエルくんとエディナちゃん、エレナちゃんは良いけど、僕は本当に会えなくなっちゃうね」

「そうですね。ちょっと寂しいです」

「へへ・・・。そう言ってくれると嬉しいよ」

 シミオンは寂しそうに笑った。何でだろう。とても悲しそうだった。



 この成人闘技大会は、種族ごとに分かれ、その中でも武器、魔法に分かれている。人間、獣人、黒魔族、白魔族、巨人、小人の六種族×武器、魔法の二種類で、全部で十二部門に分かれているってことになるな。


「俺たち同士で戦う事になるのは・・・。エディナとエレナか?」

「私じゃ、エディナには勝てないもん。ホムンクルスの使用は認められてないから、自分で戦わないと出し」

「それでも、あの、鏖殺魔法使うんだろ?」

「まあ、そうですけど・・・」


 鏖殺魔法は、エレナの得意な魔法。エレナが教えているから、ホムンクルスも使う訳で。最初に見た人は、おそらく驚く。

 あとは・・・。シミオンとメリッサ、か。


「僕、勝ち抜け出来る気がしない。あの杖が無いと、ちょっと強い、程度だから」

「確かに、ちょっと厳しいかもね~」

「まあ出来る所まで頑張ろう。俺とエディナは当然一位だぞ!」

「分かってるって!」



 そんな話をしてから、一瞬でこの日がやって来てしまった。卒業式より、こっちがメインだからな。

 俺たちは寮の荷物を全てまとめて家に送り、必要そうなものを鞄に入れて持っているだけだ。戦うときは、誰かに預けておけばいい。全員一気には戦わないからな。

 まず最初に行われるのが人間の武器。俺のエントリーする部門だ。当然、俺はシードになる。じゃないと、最初に俺に当たった奴が可哀想でもあるしな。


「ねえ、ユリエル。自信ある?」

「当然だろ。じゃなかった、Sクラスが名乗れない」


 魔王を倒すことなんて、そのまた夢になってしまう、というのは言わないでおく。魔王を倒すなんて、馬鹿げていると言われかねない。

 さて、とりあえず試合を見るか。



「ほら、ユリエルの番だよ、行ってらっしゃい!」

「ああ! 行ってくる」

 準々決勝からの登場。相当な期待が掛かっているらしい。まあ、そりゃそうか。

 この大会、アンジェリカ先生の使っていた、あの魔法を使う。っていうか、大会のフィールドがその仕様になっている。死ぬ事はない。本気で行っても大丈夫。

 俺は舞台に乗ると、そっと目を閉じ、勢い良く開く。目の前が青く見えるかのようだった。


 相手は斧を使う女の子だ。姉さんに重なるが、茶色い髪に目。問題はない。

 この子は、さっきから男の子相手にも圧倒的力の差を見せつけて来ていた。相当の実力者だ。

 が、倒せなくはないな。彼女にも隙はある。大きな武器を持っているとなれば、なおさら。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 俺はそっと鞘から剣を抜く。愛用しているバスタードソードだ。もう、新しくした方が良いだろう。けれど、この大会はこれを使うと決めていた。使い慣れているからこそ、新しい剣より俺の力を発揮できる。


 審判の合図で、女の子が走り出した。まだだ、もっと近くに来るまで、まだ、もう少し・・・。

 ルーズヴェルトが何故強いのか。それは、親から子へと、細かい技術の伝承が行われているからだ。単なる強さだけではない、細かな技術。それがポイントなのだ。

 ルーズヴェルトが最も得意とするのは、力の利用。てこと同じ。同じ力でも、やり方によっては持ち上げられるものの重量が変わってくる。つまり、最大限まで力を利用すれば良い。


 剣が折れないように注意しながら、俺は斧を弾く。後ろを取るつもりだったが、流石準々決勝までも登りつめてきただけあって、反応が早い。また対峙する形になった。

 相手の力を利用できないなら、自分で生み出した力を最大まで生かせばいいだけの話。少し力を抜き、いつも通り、下段で構える。


 女の子がしかけてきた時、剣を振り上げ、振り降ろし、そのまま地面を大きく蹴る。この方法が一番大きく跳べる。剣にはそこそこの重みがあるからな。

 とはいえ、この程度で当たるはずも無く。俺の剣は斧に止められた。後ろ向きに軽く跳ぶ。


「なんだか、舞みたい」

「そうか? 次、行くぞッ!」


 何度も何度も、重なり合う金属の音がする。女の子の息が荒くなってきたな。俺はまだまだ余裕がある。業と、女の子が大きく動かないといけない様に動いているのもあるしな。そろそろ疲れてきただろ?


「っ! あ・・・!」

「悪いな、貰ったぞ!」


 彼女は眼を見開いていた。鮮血の色に驚いたか? 斬られた実感が出るまでに少し時間がいるのかもしれない。

 後ろに回ってお腹のあたりを一刺し。倒れる彼女を受け止めた。が、まあ、すぐに光の様になって消えていく。


「びっくりした・・・。気がついたらもう、斬られてた。痛みは、その後だった」

「貴女も相当強いと思う。名前は?」

「セシル。セシル・ベイズ」

「そうか。また会えたら」

「・・・ありがとうございました」



「楽勝?」

「まあ、な。でも、結構強かったと思う。それに、これからしだいでまだ伸びる」

「へぇ? 同い年だって言うのに、随分上から目線じゃなぁい?」

「な・・・っ! いや、そうじゃなくて・・・」


 エディナはニヤッと笑ってそう言う。が、すぐに次の試合に向いたようだ。

 エディと分かれて他の人を探していると、何処からかリリィが羽を使って飛んできた。羽は小さすぎるし、おそらく魔法で飛んでいるんだろうけれど。


「お疲れ様、御主人様。あの子、結構強かったね」

「だな。セシル・ベイズか・・・。その内名前を聞くかもな」

「何で、知ってるの?」

「なんでって・・・。訊いたからだが」

「女の子にですか? えぇ~?」

「何か問題が、って、エレナ!」


 リリィを見ていて気付かなかったが、後ろにはエレナもシミオンもいた。今の言葉はエレナのものだったのか。まあ、リリィは滅多にそんな事は言わないし。俺の事が好きな割には、自分は飽く迄使い魔、と思っているのか、結構消極的なんだよな。


「エディナちゃんには会った?」

「ああ。なんでだ?」

「・・・他の女の子と何かしないように迎えに行く、って言ってたから」

「馬鹿か、あいつ」

「でも、ユリエルさんは結構モテますし~。修学旅行、凄かったじゃないですか」

「それはエディナも一緒だろ。シミオンもだし」

「まあ、そうなんですけれどね~」


 修学旅行、そりゃあ凄かった。

 部屋に投げ込まれる手紙。壊れそうなほど扉を叩く音。開けて下さいの声。

 俺たちは、布団を被って先生たちが助けに来るのを待つ羽目になった。


「あれは酷かったよな。リリィとか、梓桜、澪桜、奈桜宛もあったし」

「そうなんですよ。この子たちがホムンクルスだって知ってるはずなんですけれどね」

「私たちは、飽く迄エレナお嬢様のホムンクルスです。他の人ものになるつもりは一切ありません」

「って、ね?」


 エレナは苦笑い。相当べったりだよな。何処に行くにもついて行く。・・・見方によったらストーカー?

 と、エディナが帰ってきた。さっきまで舞台のすぐ近くで見ていたわけで。


「凄かったよ! 見てた?」

『全く』

「だろうと思ったよ。話してたんでしょ?」

「まあ、そうだな」


 エディナも入って、いつものメンバーで次の試合を見る。

 このメンバーでいられるのが今日で最後なんて、信じられない。もっと一緒にいられたらいいんだが・・・。



「はぁ、はぁ・・・。これは、負けを認めざるを得ない、のかな」

「止めを刺すか?」

「お願いするよ・・・。降参は嫌だから」

「そうか。じゃ」


 剣を引き抜くと、真っ赤な血が溢れだした。ポケットから布を取り出し、剣を拭く。

 決勝も、なんだかあっさりだった。・・・ただ、なんだか手を抜かれていたみたいだった。

 目の前の男の子は、俺の最後の相手。復活し終えたようだな。


「僕はテレンス・シャロット。また会ったら、相手をして」

「ああ。当然だ」

「じゃあね!」


 やっぱり、手を抜いていたんだろうか。さっきまでの戦いと、全然違った。表情も、動きも。一体、どうしたっていうんだろう・・・。

 ともかく、優勝は果たした。俺は、当然優勝を目指していた。そうしたら、やろうと思っている事もあるし・・・。


「ユリエル! おめでと!」

「ああ・・・」

「どうか、したの?」

「いや・・・。手を抜かれた気がして」

「え?」

「いや、何でもない。次はエディナとエレナだな」


 俺が言うと、二人は頷いて微笑む。

「まだだけど・・・。頑張るね!」

「私も、出来る限り頑張ろうと思います」

 それまでの間は、とりあえずは観戦だろう。



「では、行ってきますね」

『頑張って下さい、エレナお嬢様』

「頑張ってね~」

「はい。では!」


 エレナは白衣を揺らして駆けていった。エレナはいつも、白衣を着ている。あれの効果じゃ、対戦には向いてないだろうに・・・。

 洋服には、必ず効果がある。当然だ。材料に魔力が含まれているのだから。魔法の耐性が上がる、といった感じだな。だから、自分に合わせて、何セットか同じものを買い、それを着る。シミオンはローブ。エディナは真っ白のワンピースに桃色の短めのポンチョ。で、エレナが白衣なんだよな。白衣って、錬金とかの効果が上がる様なものじゃなかったか?

 俺? ええと、シャツに細身のズボン、上から薄くて軽いのロングコートだ。動きづらいと困るから、防御より軽さを重視して。


 なんて考えていたら、もう試合が始まっていた。エレナの『鏖殺魔法其ノ漆』である『荒天神風』が吹き荒れている。相手が見えない。エレナも見えない。

「あら・・・。一発目から大胆に行ったね」

「なんも見えない」

「・・・エレナちゃんの魔法はいつ見ても不思議」


 その直後、「落雷サンダーボルト!」の声が響く。風が一気に止んだ。代わりに雷が落ちたが。

 これは・・・。(エレナ自身を含め)俺たちは、エレナを過小評価していたようだ・・・。あの魔法を使って、息の乱れが全くないのだから。


「・・・。ともかく、次は私だね!」

「あ、ああ。頑張ってな!」

「うんっ!」



 当然、優勝はエディナ。エレナも頑張ったが、流石に猛者ぞろいだよな。

 で、今は魔族の魔法部門、決勝戦。シミオンVSメリッサだ。エディナが俺に問う。


「ねえ、どっちが勝つかな。シミオン、勝てると思う?」

 シミオンには勝って欲しい。だが・・・。

「メリッサだろうな」

 そこで、ある事に気が付いた。もう遅いが。

「メリッサ・・・? え、あ、あの子の名前? 何で知ってるの?」

 忘れてたんだよ!


 この大会、名前は出さず、人の区別は番号で行う。優勝、準優勝、それから三位の人呑み、名前を出して貰える。だから、今、メリッサの名前を知っているのは不自然。


「えっと、あー・・・」

「・・・? あ、もう始まっちゃう。ほら、ユリエル!」

「! ああ」

 とりあえず助かったな。



 勝つのはメリッサに決まっている。彼女は相当強い。杖を持っていないシミオンに勝てるようなレベルじゃない。シミオンはちょっと残念そうだった。


「でも凄いよ。準優勝でしょ?」

「うん。どうせだったら優勝したかったな。って言っても仕方ないか」

「これで俺たちは全員終わったな。あとは観戦、か」

「うん! 他の人のも見たい!」

 メリッサは優勝。おそらく、俺たちの考えている事は一緒だろうな。なら・・・。



 表彰式が終わった。俺は会場であるアルファズール武術学院のグラウンドを離れ、校門を出て、表彰状をどうするべきか考えていた。折れないように持ち帰る方法はないものか。

 と、その時、向こうから俺の名前を呼ぶ声がした。振り向かなくても、誰のものかは分かっている。


「ユリエル!」

「メリッサ!」

「私・・・。優勝、出来たよ」

「ああ。凄いな。それと、俺もだ」

「ふふ・・・。これでもう、大人だよ!」


 人目を憚らず、メリッサは魔法を使って俺に抱きつき、そっと口付けをした。

「また、グロスに媚薬を入れてるな?」

「当たり。しかも、ちょっと量が多いんだ。・・・いいよね?」

「そのつもりだった」


 俺たちは走りだした。何人かの、俺を呼ぶような声がした気がする。が、気のせいという事にしておいた。そっとそこに目線を移すと、メリッサは顔を赤らめて笑う。


「ごめんな、暫く会えなくて」

「ううん。大丈夫だよ。会えて嬉しい。今はそれだけ」


 リリィやエディナには申し訳ないな。でも、俺が一番好きなのは、この少女なのだから。

 はい、此処からが本番ってことになります。ええと、今までは・・・。主な登場人物と世界観の説明? です。

 とにかく、ユリエルには魔王を倒して貰わなくちゃいけませんからね、ここからです。

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