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メイドさんに案内されたのは、さっきとは違う部屋だった。

薄い水色の壁に、白い机と白い棚、そして緑の絨毯が敷かれた広い部屋。

その中には王様と、見知らぬ四人の男性がいた。

私が部屋の中へと足を踏み入れると、扉は静かに閉められた。


「私の執務室へようこそ、異世界の乙女。さあ、こちらへ」

「あ、はい」


王様に促されて、私は王様のいる机の前まで進み出た。

そっか、ここは王様の執務室なんだ。

あんまり来る事はないかもだけど、覚えておこう。


「異世界の乙女、もう体は大丈夫かね? 突然倒れられて、随分気を揉んだが、無事に目が覚めたと聞いて安堵したよ」

「あ……ご、ごめんなさい。ご心配おかけしました。もう、大丈夫です」

「ふむ、そうか。それならば良かった、良かった」


私の返事を聞くと、王様は何度も頷きながら、ホッとしたように胸を撫で下ろした。

本当に心配してくれていたみたい。

見た目はアレだけど、優しい人なんだなぁ。

人を外見で判断しちゃいけないって、今しみじみ感じるよ。


「さて。それでは、本題に入るがね、異世界の乙女。先程も話した通り、異世界人の子供はとても優秀な子供となる。それ故に、異世界人を我が物とし、無理矢理組み敷いても子を産ませようと企む輩も出てくるのだ」

「え!?」


む、無理矢理組み敷いてもって……私、これから貞操の危機に晒されるって事!?

じょ、冗談でしょう!?


「ああ、怯える必要はない、異世界の乙女。そのような事態を防ぐ為に、貴女には護衛をつける。既に候補も絞った。この者達だ」


そう言うと、王様は机の前に、静かに横一列に立ち並ぶ四人の男性を視線で示した。

つられて私も男性達を見る。

う……全員ぶさ……い、いやいや、ダメダメ。

つい今しがた人を外見で判断しちゃいけないって思ったばかりでしょ、私!


「この者達は全員優秀な騎士でな。一人は騎士団長を、一人は副騎士団長を務めている。残りの者もそれぞれ一部隊を率いる隊長だ。身分も実力もあるし、容姿も申し分のない者を選んでおいた。異世界の乙女。この中から好きな者を護衛に指名すると良い。できれば、そのまま伴侶とする事も視野に入れて決めて貰いたい」

「え……ええっ!?」


は、伴侶って……結婚相手!?

こ、この四人の中から結婚相手を決めろって事!?

私は改めて四人をまじまじと見つめた。

四人を一言で言うなら、左から、でっぷり、ゴリラ、もやし、でっぷり。

む……無理……!!

人は見た目で判断しちゃいけないって思ったけど、やっぱり見た目も大事だと思う!!

結婚相手とかなら尚更!!


「あっ、あのっ!! せっかく候補を絞って戴いたのに申し訳ないんですが、結婚相手ともなると、その……い、いろんな人と知り合ってみてから、この人と思える人を見つけたいんですけど……だっ、駄目でしょうか……!?」


私は王様に視線を戻し、かなり必死に訴えた。

すると王様はぱちぱちと目を瞬く。


「なんと……この者達では気に入らぬのか? 初めて会うならまずは外見だろうと、美形を揃えたのだが」

「えっ……い、いえ、その、何て言うか……」


間違ってもここで、美形ってどこがですか、とかは言っちゃいけない。

信じたくないけど、この世界では彼らは美形なんだ……信じたくないけど!!


「えっと、け、結婚て事は一生一緒にいるんだし、外見よりも、中身を重視したいかなって……ハハハ」


はい、嘘です。

外見もある程度は重視したいです、すみません。


「なんと……! 外見よりも中身を重視したいとは、若い女子としては立派な事だ! さすがは異世界の乙女よな!」


私の言葉を聞くと、王様は感心したように声を上げた。

横で立ち並ぶ四人も、微笑みを浮かべて頷いている。

う……ざ、罪悪感が……っ、良心が咎めるからやめて下さいすみません!


「しかし……そうなると、困ったな。護衛の決定は急務だが、交流を図るには、毎日ほぼ一日中側にいる護衛がやはり一番だろうしな……。そう考えると護衛と伴侶候補を別にするのは……うぅむ……」


……はい?

待って王様、今何て?

私は驚愕に目を見開いて、顎に手を当てて考え出す王様を凝視した。


「あ、あのぅ、護衛って、何処かへ出かける時だけとかじゃ? 毎日ほぼ一日中側にいるって、どういう……?」

「む? その言葉の通りだぞ? 城内は他よりは安全だが、絶対という事は残念ながらないからな。護衛は、起床から就寝まで、ほぼ一日中行動を共にするのだ」

「……起床から、就寝まで……」


と、いう事は。

結婚相手は別としても、この四人の誰かを護衛にしたら、毎日朝から晩までこの姿を見続けるって事に……。

えっと……それ、どんな罰ゲーム?

……無理。

無理無理無理無理ぃぃぃ!!


「あ、あのっ、それならやっぱり、護衛と結婚候補者は一緒のほうがいいかと! 異性と毎日ずっと一緒にいる事になるんですもんね!」

「ふむ、やはり貴女もそう思うかね? しかしな……護衛はすぐにでも決めねばならぬし……異世界の乙女よ、そうなるとやはりこの中から」

「そ、そうですね! 私、急いで決めたいと思います!! 護衛って、やっぱり騎士様がなるんですよね!? ならたくさんの騎士様方と交流できるよう取り計らって貰えませんか!?」

「……むぅ……そうか」


王様の発言に嫌な予感を覚えた私はそれを遮って一息に告げた。

王様は一瞬困ったように眉を下げたけど、頷いてくれた。

そして。


「では、騎士団長。至急、各隊の公開演習の予定を組んでくれ。午前に一回、午後に二回。明日から、すぐにだ。急ですまぬが、よろしく頼む」

「は、かしこまりました。ではすぐに。御前を失礼致します」


王様の言葉に頷き返答を返すと、騎士団長は部屋の扉へと向かう。

私は慌てて扉のほうへと振り返って、口を開いた。


「あ、あのっ、私のせいでごめんなさい! よろしくお願いします!!」

「いえ、とんでもございません。どうかお気になさらず。では、失礼致します」


軽く頭を下げた私に首を振ってそう言うと、騎士団長さんは部屋から出て行った。


「では、異世界の乙女よ。明日からの公開演習を見学に行き、一日も早く護衛を、ひいては伴侶候補を決めて欲しい。よろしく頼む」

「は、はい!」


王様に声をかけられ視線を戻すと、私は大きく頷いた。

よぉし……必ず私好みの人を見つけて、仲良くなるぞ~~!!

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