目覚めた翌朝
明けましておめでとうございます!
今日からまた頑張ります!
ベッドの上で布団に潜り、グスグスと泣き続ける。
時折メイドさんが控えめに声をかけてくるけれど、一切無視して、私はひたすら泣き続けていた。
それというのも、私は今朝起きたら突然、見知らぬ部屋にいたのだ。
部屋をぐるりと見回し、次いで、窓から、そこに広がる景色を見ても、やはりそこは知らない場所で。
何が起きたのかと混乱して。
けれど。
「ああ、お目覚めでしたか。おはようございます、アイラ様」
背後からそうかけられた声に振り返れば、そこには見知った姿があって。
「お、おはようございます。あの……ここ、どこですか?」
恐る恐るそう尋ねれば。
「ここは、アジャスト・ウルセイル様が所有していらっしゃるお屋敷でございます。お城ではあの思い上がった男達に邪魔をされ、アイラ様と交流を持てないから協力して欲しいとお願いされたので、こちらへお連れしたのですよ」
彼女はーーいつからか私が苦手意識を持つようになったメイドさんは、ニコニコと微笑みながら、そう答えた。
その言葉と笑顔にどうしようもない恐怖が湧き、私は一目散にベッドへ駆け寄り、布団をかぶって籠城した。
彼女はそんな私を見て、
「アイラ様、怯える必要はございません。ウルセイル様は貴女に決して危害は加えないと約束して下さいましたから」
「ウルセイル様はとても素晴らしい方です。アイラ様、ご覧下さい。高級食材をふんだんに使った食事をご用意して下さいましたよ。お城のものに引けを取りません」
「アイラ様、ウルセイル様が素晴らしいドレスをご用意下さっていますよ、お着替えをなさいませんか?」
「アイラ様、アイラ様、大丈夫です。ウルセイル様を深くお知りになれば必ず、あの方を好ましく思われますから」
などと、どうにか私をベッドから出そうと話しかけてきていたけれど、そのうちに、『時間ですので、仕事に行って参ります』と言って、部屋から出ていったようだった。
辺りが静かになったのを見計らい、私はそっとベッドを出て、ゆっくりと部屋の扉を開けてみた。
すると部屋の前には男性が立っていて、開いた扉に気づいたその男性と目が合った。
次の瞬間、私は急いで扉を閉めてベッドでの籠城に戻った。
あれは、見張りだ。
扉からは逃げられない。
窓から見た限り、この部屋は三階にある。
つまり、窓から逃げるのも無理がある。
……他に、逃げ出す方法は思いつかない。
私は布団を握りしめ、顔を強くそこに押しつけた。
目から溢れ出た冷たい雫が静かに染み込んでいく。
「……リュシンさんっ……」
今日は、メイドとしての彼と、1日楽しく過ごすはずだった。
昨夜はその事を楽しみにして、眠りについたのに。
それがどうして、こんな事に……。
瞼の裏に浮かぶ、愛しい人の名を小さく呼びながら、私はいつまでも泣き続けた。