乙女の夢、更に砕かれる
家へ帰りたい。
ここはどこですか。
最寄りの駅かバス停への道を教えて下さい。
私がそう言うと、ぶさい……個性的な集団は、私を上から下まで眺めると、『一緒に来てくれ』とだけ言って、私を抱きかかえた。
人生初の、お姫様抱っこだった。
ああ、これがイケメンなら……とか思った事は秘密だ。
そうして連れて来られたのは、なんとお城だった。
よく漫画やアニメで出てくる、白亜の城というやつだ。
わぁ、凄~い。
私お城にいる~。
もはや私は放心状態で、現実逃避よろしくそんな事を思っていた。
そのまま、呆然と立ち尽くしていること少し。
それまで微動だにせず、まるで彫像のように端に並んでいた人達が手にした楽器を吹き鳴らすと、私を動物から助けてくれた男性が膝をつく。
そして私の腕を引っ張った。
突然下から引っ張られ、バランスを崩した私は前屈みに倒れてしまった。
「い、痛っ。え、あ、あの……!?」
「ああ、申し訳ない。しかし今から国王陛下と王子殿下がみえられます。どうかそのまま控えていて下さい」
「へ!?」
こ、国王陛下?
王子殿下??
何それ。
口をポカンと開け、個性的な男性を見つめていると、前方から扉の開く音と、二人分の足音が聞こえてきた。
視線を向けたのは、なんとなくだった。
敢えて理由をつけるなら、足音が聞こえて、ここに新たに人が入って来たと理解したからだろうか。
そして、視線を向けた私の目に飛び込んできたのは、金髪碧眼の中年の男性と、同じく金髪碧眼の青年。
それだけなら、確実に萌え要素の詰まった人物だろう。
しかし……中年の男性は、ぽっちゃりどころかでっぷりした体型、そしてぶさ……個性的な容姿。
青年は、痩せてはいるが、ひょろっとしたもやしみたいな体をしていて、やはりぶ……個性的な容姿。
うん……ちょっと待って?
私の斜め前に膝をついている男性は確か、『今から国王陛下と王子殿下がみえられます』って言ってたよね?
その言葉から推察するに、この人達が、国王様と王子様って事……?
……あ、二人とも、正面にあるやたら立派な赤い椅子に座った。
あれって、所謂玉座だよね?
という事は……やっぱり、この二人が国王様と王子様、なんだ……。
そう理解した途端、私の胸には、激しいほどの憤りが沸き上がってきた。
…………何故だ…………!!
信じられない、あり得ない、理不尽だ!!
何これ!?
金髪碧眼で王様や王子様っていったら普通、絶世の美少年とか美中年とかでしょお!?
それが何であれなわけ!?
酷い裏切りだ、許せない!!
謝れ!!
全国の夢見る乙女達に今すぐ土下座して謝れ~~!!!
失望と怒りで顔を赤くしながら個性的な王様と王子様を見つめていると、やがて王様は王子様を振り返り、口を開いた。
「王子よ、どうやら異世界の乙女は私達の美貌を前に言葉も出ないほど見惚れているようだ。あのように顔を赤く染めて……可愛らしいことだな」
…………は!?
ちょ、ちょっと待って、今何て言った!?
「はい、父上。本当に」
王様から放たれた、色々と聞き捨てならない台詞に固まる私をよそに、王子様は微笑みを浮かべ、にこやかに返事を返した。
次回からは、二、三日に一度くらいの更新になりそうです。