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護衛決定 3

そして、やって来ました、魔法部隊の隊舎。

ノックをして、扉を開ける。


「うわぁ……っ!」


途端、目に飛び込んできた光景に、私は感嘆の声を上げた。

部屋の中が、なんと、空だったのだ。

壁は空色。

床はふわふわと揺れる白い雲。

中央にある照明は真っ赤な太陽だし、風が吹いていて、小さな丸い雲に乗って、書類が自動的に運ばれていく。


「す、凄い……! これ、どうなってるんですか?」

「魔法です。魔法で、こう見せているんですよ。本来は普通の部屋です。今日は、昼間の空の景色にしたようですね」

「"今日は"? って事は、いつもは違うんですか?」

「ええ、日替わりで違いますよ。隊員達のその日の気分で、部屋の光景を決めています」

「え」


部屋の扉の前で、やや興奮気味にリュシンさんと話していた私は、突然割り込んできた声に、視線を向けた。

いつの間にか、ひょろりとした男性が近くに立っていた。


「ようこそ、お嬢さん。……リュシン君が一緒という事は、彼に用かな? 生憎、今出ているんだ。今日中には戻ると思うけど……どうする? 中で待つかい?」

「あっ、あの、お邪魔してます! えっと……」


"彼"っていうのが、リュシンさんのお友達かな?

外出してて、今日中には帰るけど、正確な時間はわからないって事か……。

どうしようかな……目的の人がいないのにここにいてもお邪魔になるだけだけど……もうちょっと、この光景を見てたい気もするなぁ。


「そうですか、わかりました。なら、あいつが帰ったら異世界の乙女のお部屋へ来るように伝えて下さい」

「異世界の乙女? ……へぇ、なるほど。この方がそうなのか。……リュシン君は、護衛に選ばれたのかい? そして、彼も護衛にって考えてるという事かな?」

「はい」

「へぇ。……リュシン君は、やはり策士だね? 彼のような者以外近づけたくないという事かな」

「へ?」


リュシンさんが、策士?

彼のような人って、どういう事?


「……。……では、お願いします。行きましょうアイラさん」

「え? は、はい。じゃあ、失礼します」

「はい。さようなら、異世界の乙女」


リュシンさんは男性の言葉には何も返さず、短くそれだけ言うと、くるりと踵を返して歩き出してしまった。

私は男性にペコリと頭を下げると、慌ててその後を追った。


「あの、リュシンさん? 今のって……」

「……何でもありませんよ。アイラさんが気にする程の事ではありません」

「え? そ、そう……なんですか?」

「はい。それより、あの部屋の光景が気に入ったのなら、俺でよければアイラさんのお部屋を似たようにできますよ。さすがに俺一人では、部屋全体は無理ですから、部分的でもよければ」

「えっ本当に? ならお願いします!」

「はい、かしこまりました」


やった、私の部屋でもあの光景が見える!

部分的だとしても絶対綺麗だよね!

ああ楽しみ!


「リュシンさん、早く部屋に帰りましょう!」

「はい」


私は足を速めて、笑顔で部屋への道を進んだ。

その後ろで、リュシンさんが安堵したように息を吐き、苦笑している事など知らずに。

うまく話を逸らし、誤魔化された事に、私が気づく事はなかった。

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