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護衛決定 1

リュシンさんは、隊長さんとの試合という形でその実力を見せてくれた。

一言で言うと、凄かった。

素早く剣を振るい打ち合う二人の動きは、目で追うのもやっとで、何故あんなに速く動けるのか不思議になる程だった。

これなら何も問題ない!

私は安堵と喜びを感じながら、そう判断した。

試合は、隊長さんがリュシンさんの首筋に剣を突きつける事で終わった。


「……負けたか」


僅かに悔しさを滲ませて、リュシンさんはぽつりと呟く。

すると隊長さんは苦笑して口を開いた。


「俺は仮にも隊長だからな。そう易々と部下に負けてはやれないよ。……全く、どいつもこいつも剣技の上達に余念がないから、俺は隊長の威厳を保つのにいつも必死だよ」

「……そのうち勝ちます」

「そうか、頑張れ。簡単には勝たせないけどな」


う、なんか、"剣に生きる男の世界"が作られてて、声をかけるのが躊躇われる……!

早くリュシンさんに護衛を頼んでしまいたいのにぃ!

ねぇ二人とも、戻ってきて?

私の存在を思い出して~~!!

私はやきもきしながらも、この空気を断ち切る勇気が持てず、二人の会話が終わるのを、ひたすら待ち続けた。

やがて、二人が私に視線を向けたと同時に私はリュシンさんに駆け寄り、『私の護衛になって下さい!』と、頭を下げたのだった。


★  ☆  ★  ☆  ★


「王様、約束通りご報告に来ました。私の護衛、決まりました!」


私は夕方を待たず、訓練場から戻るその足で、快く護衛を引き受けてくれたリュシンさんを連れ、王様の執務室を訪ねた。

とはいえ、王様は忙しいらしく、訪ねるのは夕方の約束だったから、別室で少し待たされてしまったのだけど。

『申し訳ありませんが少々お待ち下さい』と告げる文官さんは何故か凄く恐縮していた。

リュシンさんとお話して暇は潰せたけれど、次からはちゃんと約束の時間に来る事にしよう。

反省。


「そうか、決まったか。それは良かった。……隠密部隊の、者なのだな? そなた、名は何と申す?」

「は。リュシン・レンベールと申します」

「レンベール! 男爵家の者か。貧乏で、庶民の真似事をして生活している貴族のひとつ……。なんという事だ、そんな者が異世界の乙女の伴侶候補になるとは……!!」


リュシンさんが名乗ると、王様の机の脇に控えていた宰相様が明らかな非難の色を滲ませた声を上げた。

む、何それ。

リュシンさんが貴族だとか初耳だけど、そんな事関係ないじゃない。

私は斜め後ろに立つリュシンさんをちらりと伺い見たが、リュシンさんは平然とした顔をしていた。

……あんなふうに言われて、怒って、ないのかな?

ああでも、相手が宰相様じゃ怒れないのかもしれない。

リュシンさん、表情は平然としてるけど、内心は……。

……よし、ならここは、私が一言物申そう!

私も宰相様に反論できる立場じゃあないだろうけど、私は異世界人だ。

何か言われたら、知らなかったで押し通して誤魔化そう!

題して、"身分? 何それ美味しいの?"作戦だ!


「宰相様、私はその庶民ですが? むしろリュシンさんが貴族だというなら、庶民の私が護衛をして貰うほうがおかしいでしょう」

「な……!? そ、そんな事はありませんぞ異世界の乙女! 異世界での貴女の身分が何であれ、この国、いや、この世界では貴女は稀有な存在! 御身に護衛がつくのは当然です! レ、レンベール、今のは失言だった、許せ!」

「……は」


宰相様を軽く睨みつつ私がそう言うと、宰相様は焦ったように弁解をし、リュシンさんに謝った。

それを受けて、リュシンさんは頷く。

あれ……私、怒られないっぽい?

異世界人って、それなりに強い立場なのかな?

だとしたら心強い武器かも。

あとでリュシンさんに詳しく聞いておこうっと。


「はは、異世界の乙女が相手ではそなたも少々分が悪いな宰相。リュシン・レンベールよ。カストール国国王の名において、そなたを異世界の乙女、アイラの一人目の護衛に任命する。アイラをよろしく頼むぞ」

「は。謹んで拝命致します」


王様は宰相様に軽口を叩くとリュシンさんに向き直り、改まった口調で告げると、リュシンさんは膝まづいて頭を垂れ、返事を返した。

や、やった!

王様が認めたって事は、これでリュシンさんは正式に私の護衛になったんだ!!

しかも伴侶候補だし……イケメンの伴侶候補……ああ、なんて素晴らしい……!!

……って、あれ?

"一人目の護衛"って……何?

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