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焦る選考

翌日、朝食を食べ終えた私は、また隠密部隊の隊舎へ向かおうとした。

けれどメイドさんから、『国王陛下がお呼びです』と告げられ、まず王様の執務室へ行く事になった。

執務室に着き中へ入ると、そこには王様と、宰相様がいた。


「おはよう、異世界の乙女。急に呼び出してすまぬな」

「いえ、構いません。おはようございます、王様、宰相様」

「ええ。おはようございます」


王様と宰相様に挨拶をし、王様から用件が告げられるのを待つ。

……お話は、長いのかな。

できるなら短いといいな。

早く隠密部隊の隊舎へ行きたいし。

そんな事を思いながら、王様へじっと視線を送っていると、王様は静かに口を開いた。


「異世界の乙女よ、あれからもう二日が経ったが……護衛は、まだ決まらぬのか? もし……もしだが、やはり隠密部隊からでは適した人物が見つからぬ、というのなら、すぐにでもまた他の隊の公開演習の予定を組むが、どうだろうか?」

「…………え?」


王様から告げられた言葉に、私はぱちくりと目を瞬いた。

……"あれから、もう二日"?

まだ二日、だよね?

"適した人物が見つからない"?

そんな事、全然ないけど?

"また他の隊の公開演習"…………って、暑苦しい日々再び!?

それは嫌ぁぁぁぁぁ!!


「だ、大丈夫です!! ちょうど今日、決めようと思ってましたから!! 仰る通り、もう二日ですしね、ええ!! 今日中には決めますからご心配なく!!」


だからあの苦行の予定なんか組まないで!!

私は拳を握り締め、王様に必死にそう訴えた。

すると王様は安心したように頷いた。


「そうか、それならば良いのだ。では夕方、護衛を連れ、報告に来るようにな。待っておるぞ、異世界の乙女よ」

「は、はい、わかりました!! では失礼します!! また夕方に!!」


王様にそう頷き返すと、私はくるりと体を反転させ、足早に執務室を後にした。

それまで黙していた宰相様が、ゆっくりと王様へと向き直り口を開いたのは、私の姿が扉から消えるのを確認した後だった――。


★  ☆  ★  ☆  ★


「リュシンさんっ! リュシンさんて、強いですか!?」


隠密部隊の隊舎へ着いた私は、真っ直ぐリュシンさんの机に向かい、開口一番にそう尋ねた。

私にと用意された席にも行かず、挨拶もせずにだ。

そんな私を、皆さんは呆気に取られたように見つめていた。

それはリュシンさんも例外じゃなく、ぽかんと口を開けていたが、すぐに小さく呟いた。


「俺が、強いか……?」

「はい! リュシンさん、この部隊の公開演習の時は任務でいなかったでしょう? だから私、貴方が強いかどうか、わからないんです! リュシンさん、強いですか!?」


呟かれた問いに頷くと、私は同じ質問を繰り返した。

私は、焦っていた。

王様からあんな話をされ、それを回避するべく咄嗟に"今日中に決める"と約束してしまった。

ここに来るまでずっと、この二日間話した隠密部隊の皆さんの顔を思い浮かべながら、誰に護衛をお願いしようかと考えた。

何しろ、この護衛は伴侶候補も兼ねている。

ならやっぱり、イケメンな隊員の皆さんの中でもより好みな男性になって欲しい、と、そう考えた時、思い浮かんだ顔は、ただひとつだった。

そう、私の理想の男性、リュシンさんだ。

うん、心は決まった。

リュシンさんに護衛をお願いしよう!

と、そう決意した私だったが……次の瞬間、護衛をお願いするなら一番肝心な事、リュシンさんの戦闘の強さについて知らないという衝撃の事実に思い至った。

他の皆さんなら、公開演習の訓練を見て、素人目にも強いほうなんだろうという事はもうわかっている。

けれどそこに、リュシンさんはいなかった。

それに、リュシンさんは今年入隊したばかりの新人だと言っていた。

もし弱かったら。

王様が弱いリュシンさんを認めず、そしてそんな人物を護衛に選んだ、つまり私に見る目がないって事になって、王様が強制的に護衛を決めるなんて事になったら……!!

まずい、それはまずい!!

確認しなきゃ!!

という風に思考が流れ、焦りに焦った私は入室して早々、こんな質問をした次第である。

しかしリュシンさんは私の言葉に僅かに首を傾げると、隊長さんに視線を向けた。


「公開演習? うちがそんなものをやったんですか、隊長?」

「ああ。お前が帰る前日にな。もっとも、公開する対象はアイラ様お一人だったが」

「アイラさん一人……ああ、なるほど。護衛候補として腕を見る為ですか。……なら、隊長。つき合って下さい」

「ああ、わかった。アイラ様、行きましょう」

「え? 行くって……どこにですか?」


リュシンさんと隊長さんは、揃って立ち上がると、扉に向かう。

私は意味がわからずに首を傾げた。


「訓練場です。俺の腕も、見る必要があるでしょう?」


リュシンさんは私を見て、不敵に笑って、そう言った。

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