2.Invitation of a travel
また、あの夢を見た。
真っ白な世界に一人で立っている夢。
ただ今日は少しだけ違った。
カラフルな人は、最初からじっと私を見つめていた。
そこからは変わらなくて、また何か言いかけて、夢が覚めて…
いつもと違うなんて、何かの予兆かな?
何も悪いことが起こらないといいけど。
いつものように顔を洗い、着替えて、歯を磨いて、朝ごはんを食べる。
なんてことはないこの行為が、いつもと違った気がする。
そうだ、今日は幼馴染のスティに呼ばれてるんだ。
スティーリア、私の幼馴染、親友。
予言で『いずれ世界を救う勇者になる』と言われた少女。
村で一人ぼっちだった私に話しかけてくれた、唯一無二の親友。
氷を操り、剣で斬りつけ、疾風のごとく魔物を倒す姿から《疾風の氷剣》と呼ばれる子。
今日は、そのスティが私に、話があるらしい。
「ママ、じゃあ私スティのところに行ってくるよ。」
「あら、スティちゃんのところに行くのね。行ってらっしゃい。」
家を出て、周りを見渡すと近くにスティがいた。
「あっ、ゆっちゃん!」
スティが私に気付いてこっちにやって来た。
ゆっちゃんというは私のあだ名だ。
「お、おはようスティ。話って、なに?」
「おはよう、そう焦らないでよ。そこのベンチで話そ。」
近くのベンチを指差し、スティが私の腕を掴んで引っ張った。
ベンチに二人が座ると、妙に真剣な顔でスティが私を見た。
「ゆっちゃん、実はあたし、近々旅に出ないといけないの。」
旅、つまりその間スティがいない。
多分、世界を救う為にもっと力をつける修行の旅だろう。
スティは私が独りになるのを心配してくれてるのかな。
「大丈夫、スティ。私はスティがいなくてもちゃんと出来るから。心配しないで。」
「早とちりしない!あたしが言いたいのはそうじゃないの。」
私の肩を軽くバシリとはたき、スティは呆れ顔を作った。
「私は、その旅にゆっちゃんと行きたいの。やっぱり、一人だと不安だし…」
一人だと不安…
私がいるともっと不安になると思うけど。
弱いし役立たずだし、こうやって自分を卑下するところもうざったいし。
他の人を誘えばいいのに。
例えば弓の腕が立つルキラとか、治癒術の使えるミリカとか…
私なんかがついて行ったって足手まといにしかならないと思うし、すぐへばるし。
でもこんなことを長々と言ってもウザいだけだろうし、言わないでおこう。
足手まといになりたくないし、そうなったら惨めなだけだし……
でもきっと、断ったら悲しむだろうな……
「うん、いいよ。私もついてくよ。」
「ホント!?ありがとう!ゆっちゃんがいれば話し相手に困らないよ。」
話し相手に困らない、か。
でもそれじゃいずれ、足手まといの役立たずになってしまう。
回避とか盾での防御とか逃げ足になら、自信あるけど。
それじゃダメだ、何か攻撃方法がないと。
あいにく私は、魔術も治癒術も全く使えない。
村一番の魔術師・ユミルに全く素質が無いと匙を投げられたくらいだ。
やっぱり捨て駒の盾役にしかなれないのかな。
……死にたくは、ないし。
どうしよう。