第87話 ボーナス屋、初めての迷宮探索 1
――ファル村 地下遺跡B1――
俺は今、村の地下にあるダンジョンにいる!
昨日は鍛冶屋の爺さんやアール、ついでにバカ皇子のお蔭で問題が1つ解決できた。
今朝顔出したら一晩で300近い数の剣が完成していた。
アールのハンマーはチート過ぎだな。
この調子なら明日には予定よりも沢山の武器が用意できそうだ。
ただ、稀にハイスペックな武器が混ざっているのが気がかりだが。
「さ~てと、下までの案内は頼んだぞ。コッコくん?」
『ゴケッ!(ハイ!)』
話は戻って今日の俺はダンジョンで冒険!
同行者はこのダンジョン初攻略を果たしたコッコくん!
そして・・・
「・・・何で俺?」
「勇者様、今日はよろしくお願いします!」
歩くお宝センサーのロルフ、そして村の癒し系シスターのアンナちゃ・・・ん?
何でアンナちゃんが?
「アンナちゃん、何でいるの?」
「お供します!勇者様!」
「どうしても来るのね・・・。」
同行者はコッコくんとロルフの2人だけの筈が、何故かアンナちゃんも来ることになった。
その手には翠色の水晶が嵌っている白い杖が握られている。
鑑定してみると、バカ皇子が造った杖だった。
【翠玉の白杖+28】
【分類】杖
【品質】高品質
【詳細】バカ皇子ヴィルヘルムが妹への愛を込めて製作した杖。
魔法を使う際に使用する物だが、鈍器としても十分に使える。
魔法の消費魔力小減少。
光・風・木属性の効果小上昇。
防御力・精神・回復力微上昇
鑑定結果にまで「バカ皇子」と書かれていた。
「勇者様のお役に立ちたいとお・・殿下に相談したらくれたんです!」
バカ皇子、余計な事を・・・。
アンナちゃん、妙にやる気に満ちている。
きっとバカ皇子が他にも余計な事を言って焚き付けたんだな?
「勇者様の傷は私が癒します!」
これは何を言っても一緒に来る気だな。
昨日はケビンに魔法の訓練をさせたけど、ステータスは上がったのかな?
【名前】アンナ=ファリアス
【年齢】15 【種族】人間
【職業】シスター(Lv6) 魔法使い(Lv10) 農民(Lv7) 【クラス】片思いの少女
【属性】メイン:光 水 風 サブ:火 木 土 雷 空
【魔力】46,000/46,000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv3) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv3) 調合術(Lv2) 鑑定
【加護・補正】魔法耐性(Lv3) 闇属性耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv2) 風属性耐性(Lv2) 女神ブリギッドの加護 職業補正 職業レベル補正
【BP】25
前に見た時よりも成長しているな。
魔法使いのレベルが一番上がっているみたいだ。
「なあ、俺は帰っていいか?」
「ダメ♪」
ロルフは帰りたそうな顔をしているがそうはいくか!
ダンジョンと言えば宝探し!
宝探しにはロルフが必須だ!
「よし!遅くなったけど出発だ!アンナちゃん、とにかく無理はするなよ?敵が出てきたら俺達の後ろに下がって魔法で援護してくれ!」
「ハイ!敵が来たらすぐに(勇者様の)後ろに下がります!」
「コッコくん、ロルフ、出発だ!」
『ゴケッ!(ハイ!)』
「へ~い・・・。」
ロルフ、さっきから気になっていたんだが何でやる気がないんだ?
冒険者業務の時とは別人みたいだぞ?
俺はロルフの様子が気にかかりながらも、ダンジョン探索を開始した。
そうそう、みんなの装備に俺の創作能力《命無き物の可能性》を使っておいた。
どうなるか楽しみだ♪
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――地下遺跡B4――
最初の3階層ほどは途中でステラちゃん達とすれ違うだけで敵とはほとんど遭遇しなかった。
きっとステラっちゃん達が倒しまくっていたんだろう。
そして今は4階、ようやく魔獣の集団と遭遇だ。
「スライム団が現れた!」
「誰に言ってるんだ?」
目の前に文字通りのスライムの軍団が現れた。
その数およそ100!
赤や青、白、黄、紫、緑など色のバリエーションは豊富だ。
『『『ピィ~~~~~~~~!!』』』
「鳴き声あるんだ?」
「んなことより攻撃だろ!」
何所から出しているのか分からないスライムの鳴き声に驚きながら戦闘開始した。
最初は剣で真っ二つにしたらゴムみたいに弾けた。
物理攻撃は聞かないかと思ったけど効果はあるらしく、壁や天井を何度かぶつかった後、床の上でゲル状に飛び散った。
その後は剣はやめて魔法で一掃した。
アンナちゃんも俺の後ろから魔法で攻撃して10体ほど倒した。
コッコくんは何体か食べた。
なお、この階層に目ぼしい宝物はなかった。
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――地下遺跡B10――
コッコくんの案内の下で探索は順調に進んでいった。
スライム以降もいろんな魔獣が襲ってきたがどれも俺達の敵ではなく、サクサク倒して下の階層を目指していった。
探索中はロルフの〈宝探しの秘技〉が成果を上げていき、崩れた壁の奥や小型魔獣の巣の中から歴史的価値の高そうな彫刻や古代の金貨、他にも魔法が付与された指輪などを発見していった。
だけど発見したロルフ自信はそんなに嬉しそうな顔はしていなかった。
気になって何度か訊いてみても、「大丈夫」としか答えず、気付けば地下10階に来ていた。
「――――隠し部屋発見!」
俺達は隠し部屋を発見した。
と言っても実際に発見したのは俺ではなくコッコくんで、コッコくんのトサカレーダーが前に来た時には無かった部屋を見つけたのだ。
中に入ると、そこには壁一面に不思議な絵が描かれていた。
「凄いですね勇者様!」
「ああ、これは多分、大昔の歴史を描いた絵だろうな。ほら、下の方に説明文みたいなのが彫られてるぞ!」
「あ、ホントですね!」
「けど、読めるのか?俺らが使っている言葉と全然違うぜ?」
ロルフが壁と睨めっこをしながら訊いてきた。
ロルフの言うとおり、絵の下に掘られている文章は普段ダーナ大陸で使われている言語とは異なる文字で書かれていた。
だけど心配はいらない!
俺にはこの世界に召喚された時に貰った《異世界言語翻訳》という便利なチートがある!
異世界の言語なら古代語だって翻訳可能だ!
「え~と、『――――はエリンを地下の神ビレの血を引くミレーの民に奪われた。』。所々崩れているから全部は読めないな。」
「読めるんですか!?凄いです!!」
「へえ。」
『ゴケゴケェ!(流石勇者様!)』
アンナちゃん達が後ろで歓声を上げてくる。
俺は文章の続きを上に書かれている絵も見ながら読んでいく。
「――――『ミレーの末裔達からは神の血が薄れ、時は人の世に――〈2行ほど崩れている〉――し、エリンは人同士の争いが何度も続いた。』か。あの絵は戦争を表しているんだな。」
「なんだか悲しい絵ですね。」
壁には女性や子供が泣いている絵と、剣や槍で戦う兵士の絵があった。
続きを読もうとすると、また何行も崩れれ読めなくなっている。
絵の方は十字架を持った騎士や僧侶の絵が多くなっている。
あの十字架ってまさか・・・。
あ、急に絵の内容が変わったな。
こっちの説明文はハッキリと読めるぞ。
「――――『ある日、闇が太陽の光を飲み込んで大地から光を奪った。闇の日は何十日も続き、人々の心から生気が少しずつ失われ始めた。そして40日後、突然大地が怒り狂ったかのように揺れ出した。人々は恐れ狂い方々に逃げ始める。すると、人里を囲む山の向こうから1つの禍々しい眼が現れた。』。」
壁の絵には山の向こうから一つ目の巨人、巨人というよりは悪魔みたいな姿の怪物が出てくるシーンが描かれている。
次の絵を見ると、そこは怪獣大戦争みたいな絵になっていた。
「――――『山より現れたのは、嘗て光の神に討たれた筈の邪眼の巨人、魔の神だった。魔の神の邪眼は一瞬にして千の命を奪い、一夜にして100の村が滅んだ。魔の神は巨人や異形の兵を従えエリンの地だけでなく世界を闇で飲み込もうとした。』。うわあ、大虐殺しまくってるな・・・・。」
「・・・怖いですね。」
「けど、これを書いた奴がいるんだから全滅はしなかったって事なんだろ?」
「そうみたいだ。この後すぐに救いの神が出たって書いて・・・え!?」
「勇者様、どうしたんですか?」
「あ、いや・・・・・。」
俺は次の絵を見て驚愕した。
巨人や怪獣が暴れる絵の次に書かれていたのは、巨人や怪獣を倒す“白い龍”と“赤い龍”の絵だった。
おいおい、この白い方のドラゴン、見覚えがあるぞ!
「――――『生き残った人々は必死に出逃げ回るが巨人はそれを見逃さなかった。幼子が倒れ、巨人に喰われそうになる。その時、天さえも震わせるほどの咆哮が聞こえた。そして、遠方の空より白き神と赤き神が飛んできた。2柱の神は巨人と異形の兵を駆逐し、魔の神と対峙する。魔の神の闇を白き神が光で打消し、赤き神が魔の神の体を炎で焼いていく。』。」
この“白き神”って、勘だけど俺の知っている奴だ。
確か紀元前から生きているとか言ってたから可能性は充分にある。
俺は続きが気になってどんどん読み進めていった。
「――――『だが、魔の神の力は凄まじかった。2柱の神の攻めに耐え抜き、邪眼を持って反撃していく。さらに、魔の神には恐るべき仲間がおり、それらは不気味な鳴き声を上げながら現れた。』。」
ここで次の絵に変わり、2体のドラゴンを巨大な蛇や沢山の羽を生やした真っ赤な人とかが囲んでいた。
「――――『魔の神の仲間は6柱の神々だった。天を飲み込む蛇、闇を吐く黒き蛇、12の羽を持つ赤き堕天使、深淵より来る蛇に化けし神、遥か東方の果てより来る異邦の神、そして地の底の国を統べし神の王。強大すぎる神々の前に、白き神も赤き神も為す術もなく破れようとした。』。文章はここで終わってるな。」
絵と文章は“魔の神”を含めた7柱の神が登場したところで終わっていた。
まるで神話を呼んでいるような感覚、いや、これは神話そのものなのか?
読んでいるだけで只の昔話とは思えなくなるな。
「これで終わりなんですか?」
「中途半端だな。」
「・・・コッコくん、この部屋みたいな隠し部屋は他にはないのか?」
『ゴケゴケェ~。(いえ、知りません。)』
「そうか・・・。」
「つーか、今更だけど鶏が字を書いているの誰も気にしないのか?」
『ゴケ?(え?)』
その後、いくつかコッコくんに質問していき、前に来た時はコッコくんのトサカレーダーはこの部屋を含めて隠し部屋は1つも見つけられなかたっと聞いた。
もしかして、入る度に構造が変化するダンジョンなのか?
『戴冠石』があった場所だ。可能性は否定できないな。
「とにかく、他にもこの部屋みたいな隠し部屋があるかもしれないから注意していこう!コッコくんも頼りにしてるぞ!」
『ゴケッ!(ハイ!)』
「分かりました!」
「へいへい。」
俺達は隠し部屋を後にし、更に下の階層へと潜っていった。
バカ皇子は弟妹に甘いです。
そして隠し部屋に描かれた壁画や文章、今後の重要なキーとなる内容なのです。
感想などお待ちしております。