第82話 ボーナス屋、職業を選択する
【職業】の変更はステータス画面で操作できる。
普通、ステータス画面は只の映像で触れることは出来ないが、《職業補正》や《職業レベル補正》があると手で触れられるようになる。
それはさておき、俺は自分の【職業】の欄をタッチして現在選択可能な職業の一覧を表示させた。
▼〈冒険者(Lv56)〉 ▼〈魔法剣士(Lv4)〉 ▼〈農民(Lv4)〉 〈剣士(Lv50)★〉 〈魔法使い(Lv50)★〉 〈高校生(Lv1)〉 〈戦士(Lv1)〉 〈僧侶(Lv1)〉 〈村人(Lv1)〉 〈狩人(Lv1)〉 〈無職(Lv1)〉 〈料理人(Lv1)〉 〈護衛(Lv1)〉 〈教師(Lv1)〉 〈大工(Lv1)〉 〈保育士(Lv1)〉 〈飼育師(Lv1)〉 〈酪農家(Lv1)〉 〈拳士(Lv1)〉 〈鳥使い(Lv1)〉 〈案内人(Lv1)〉 〈魔術師(Lv1)〉New! 〈剣豪(Lv1)〉New! 〈剣闘士(Lv1)〉New! 〈神器使い(Lv1)〉New! 〈勇者(Lv1)〉New!
▼:選択中 ★:レベルMAX
ついに出たよ“勇者”!
昨日まではなかったのに、今見たらハッキリとあった。
まさか、これも神の仕業か?
“神器使い”は、きっとクラウ・ソラスの持ち主になったから増えたんだろう。
選ぶとしたらこの2つのどちらかだろうな。
〈神器使い(Lv1)〉
神器適合率上昇 神器探知 神器取説
〈勇者(Lv1)〉
全能力小上昇 経験値小上昇 仲間と補正共有
お!“神器使い”の補正はステータスアップ系じゃないのか?
“勇者”はレベル1でもさすがに良い補正だな。
俺としては両方欲しい。
“冒険者”は大分上がってきたし、一度外してみるか。
冒険者業務をする時に付け直せばいいさらな!
▼〈魔法剣士(Lv4)〉 ▼〈神器使い(Lv1)〉 ▼〈勇者(Lv1)〉
これでよし!
次は創作したばかりの固有能力を使ってみるか!
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先に結果だけ言えば〈進化する可能性〉はまだ使えなかった。
どうやらこの能力を使うには熟練度のような、見えない系のステータスが影響するようだ。
俺はスペックこそ高いが、戦闘経験がまだ乏しいからそれは仕方ない。
もう少し戦いを経験してから再度チャレンジしてみるか。
〈命無き物の可能性〉の方は普通に使えたから、装備品だけでなく身の回りの物にも手当たり次第に使っておいた。
今はまだレベル1(?)だから効果はまだ目に見えていないが、時間が経てばハッキリと見えてくるはずだ。
さてと、この後はそろそろステラちゃんと約束があるから駐屯地の方に向かうか。
あ!またメールが来た!
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From:隠居中のヌアザ
Sub:またプレゼント
ヌアザだよ♪
久しぶりに地球の様子を覗いてみたら凄く変わってたよ!
それと向こうの神連中、SNS作って楽しんでいたよ!
羨ましかったからコネ使ってこっちに技術提供してもらった♪
という訳で、今度SNSとか作るからそっちもPCとか作っておいてチョ!
技術知識は添付しておいたから、そっちの職人にでもバラ撒いておけよ!
神だって俗物だよ、と思うヌアザより
*添付「〈技術知識(魔法具版PCetc)〉×∞」
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この世界、他の世界と鎖国状態じゃなかったっけ?
あの神、一体何考えてるんだよ!?
その後、またメールが来そうなのでエルナさんに添付されていた知識を渡した。
エルナさんは狂喜した。
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――ファル村西部 王国軍駐屯地――
駐屯地に行くと人目の付きにくい隅の一角に謎の人だかりがあった。
人だかりを作っていたのは全員男だった。
「・・剤は・・か?」
「魅・・・はいくら・?」
「精・・は・・2枚だ。」
怪しい、スッゴク怪しい!
あからさまに素顔を隠しているし、どうみてもいかがわしい物の取引現場にしか見えないぞ。
後でステラちゃんに報告しよう!
「――――来たか、シロウ!」
「来たぜ、ステラちゃん!」
チームステラちゃん作戦本部(笑)に入ると、部屋の中央に置かれたテーブルがあり、その片側にはステラちゃんやフィリスを始めとする側近や指揮官達、そして先日の戦いに参戦した王国軍の代表達がいた。
その中には怪我から復帰したばかりの第一王子もいた。
テーブルを挟んで反対側にはロビンくんや帝国軍の代表達がいた。
「シロウ殿、中央へどうぞ。」
「あれ?帝国側は(正式な)皇子や皇女は不参加なのか?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」
俺以外の全員が無言のまま視線を逸らした。
おい、まさかまだ広場の方で聖剣を抜こうと頑張ってるのか!?
そしてバカ皇子は鍛冶屋で鍛冶に熱中?
ダメじゃん!
「ま、まあ・・・一応は皇子殿下がいるので大丈夫でしょう。」
帝国の騎士らしきオッサンが冷や汗を流しながら口を開いた。
ちなみに、ここにいる全員はロビンくんが隠し皇子である事は知っている。
皇帝の女癖は有名なのですぐに納得してくれたようだ。
「そ、そうだな、ロビンがいれば帝国は安泰だろ!」
「ハ・・・ハハハ、全くです!」
「で、ですな・・・!!」
この話はこの辺にしておこう。
「あ、そういえばチビ皇子は?」
「今日はジャンに預けてあるので大丈夫です。」
それなら安心だ。
ルドルフはまともに育ってほしいからな。
間違ってもバカ皇子シリーズの仲間入りだけはしてほしくない。
「――――さて、全員集まったようですので本題に入りましょう。」
進行役らしい初老の騎士がテーブルの上に地図を広げて話し始めた。
地図はダーナ大陸全土を表したもののようだが結構大雑把だった。
「我々が現在いるのはココ、帝国の南部国境近くにあるファル村です。王都クリーオウと帝都タラの位置はココ、両方ともここからだと相当な距離があります。それぞれ行軍で移動となると10日以上の時間がかかります。」
「だが、先日の戦いでは両軍ともかなりの速度で移動したそうだが、あれはどうやったのだ?」
「それは私が説明致します。」
ステラちゃんの疑問に答えたのは、今は村の牢屋に閉じ込めている陰謀好きの将軍の元部下だった男だった。
「――――あれはチャールズ元将軍が雇ったという魔術師達が用意した「大型転移魔法陣」を使ったのです。」
「「大型転移魔法陣?」」
「ハイ!魔力をたくさん消費するらしいですが、予め決めていた場所になら大人数ですぐに移動できる魔方陣です。それを使って自分達は国境を越えてここに来たのです。」
「そのような物が・・・。兄上は御存知でしたか?」
「いや、私も初めて聞いた。そもそも、“空”属性の存在自体、お前から聞くまで知らなかったからな。」
ステラちゃんのお兄さんも驚きを隠せないようだ。
俺もロビンくんにボーナスをあげた時にその事は知っている。
この世界、少なくともダーナ大陸では“時”と“空”の2つの属性の存在は全くと言っていいほど認知されていない。
にも拘らず、大群を瞬間移動させる魔方陣があるという事は、その将軍が雇ったという魔術師達はブラスの仲間
である可能性は高いな。
少なくとも、“空”属性の知識を持っているのは間違いない。
「そういえば、ロビン・・殿下は空属性を持っているのでしたね?」
「ロビンと呼んでいただいて結構です、エドワード殿下。私は皇帝の実子ではありますが、正式な皇族ではありませんので。」
「何を言っておられるのですか!」
「そうですとも!ロビン殿下が帝国の皇子である事は我々も認めております!殿下は帝国の希望なんです!」
「「その通りです!!」」
帝国側の連中、聖人を見るような目でロビンくんを見つめているな。
皇帝やその子供達がアレ過ぎたからロビンくんが眩しく見える・・・というとこか?
「や、やめてください・・・!それよりも、本題を進めていきましょう!」
「そうだな。では、ここにいる者は既に知っているとは思うが改めて言わせてもらう。」
ステラちゃんは顔を引き締め直し、全員にしっかりと聞こえる声で昨晩から今朝にかけて届いた急報の内容を言った。
「―――――昨日、帝都タラと王都クリーオウでクーデターが発生し、乗っ取られた!」
――その頃の広場
バカ皇子3「うお~~~!!」
バカ皇子2「何故抜けない~~~!!」
ジョージ「嘘だ・・・抜けないなんて何かの間違いだ!」
バカ皇女「ホホホホ、今日は調子が悪いみたいですわ。」
ジャン「何やってるんだ?」
ルドルフ「きらきら~~!」
マイカ「ジャン兄ちゃん!カクカクシカジカ!」
ジャン「バカだろ?」
ルドルフ「にぃ~た~!」
ジャン「何だ、ルドルフもやりたいのか?」
ルドルフ「あい♪」
ジャン「ほらよ!」
ルドルフ「う~!」
シュポッ!(抜けた)
リア・ファル『バオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
一同「!!!!!!」
ルドルフ「たぁ~~~♪」
ジャン「・・・凄いな、お前?」
ルドルフ「あい!」
バカ皇子2&3&ジョージ「「「嘘だ~~~~!!」」」
――数分後
ケビン「あ、抜けた!」
リア・ファル『バオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
バカ達「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」