第72話 コッコくん、超進化する
僕は開き直った!
勇者様と挨拶して別れた後、僕は色々恥ずかしくなって森へと逃げた。
そこで一通り暴れてスッキリした僕は魔法に関して開き直ることにした。
気にしたら負けだよね♪
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その日の村は早朝から騒がしかった。
いつも僕達にご飯を与えに来てくれるお爺さんも緊張した面もちだ。
『コッココッココ?(コッコ、何があったのか知ってる?)』
『ゴケェゴッケゴケゴケェ~!(テリヤキちゃん、これから戦争が起きるらしいよ!)』
『ココゥ~?(センソウ~?)』
外で仕入れてきた情報をテリヤキちゃんに教えたけど分からないみたいだ。
現在、僕以外の鶏達はみんな『黄金大鶏』に成長して知性も人間に近くなっている。
だけど鶏神様から知識を貰った僕と違って、みんなの知識レベルはあまり高くない。
僕も毎日教えてあげたりしてるけど“戦争”はまだ教えていなかったと思う。
僕はテリヤキちゃんに簡潔に説明した。
『ココッ!ココッコッココ!?(大変じゃない!ここも危ないんじゃないの!?)』
『ゴッゴゴケゴケゴケェッゴ。(うん、もしかしたら攻めてくる人達に唐揚げにされるかもしれないんだよ。)』
『ココ・・・!(そんな・・・!)』
テリヤキちゃんは不安そうに震え始めた。
周りを見れば他のみんなも怖がって震え始めている。
・・・僕も戦おう!
きっと勇者様が守ってくると思うけど頼りっきりになっちゃダメだ!
何の為に僕は今まで特訓してきたと思ってるんだ!
僕も勇者様みたいに戦うんだ!
『ゴケェ!ゴケゴケェ~!!(大丈夫!僕が悪い奴を倒すよ!!)』
『コッコ・・・。(コッコ・・・。)』
テリヤキちゃん達に背を向け、僕は金色の両翼を軽く羽ばたかせながら家を後にした。
外に出てしばらく経つと村の外から大勢の人間の声が聞こえてきた。
戦争が始まったみたいだ!
僕は村の入り口でドンと立って敵を待ちかまえていた。
そしてしばらくすると、地面の下から嫌な予感がしてきた。
『ゴケ!(来る!)』
直後、地面から沢山の蔓が襲いかかってきた。
僕はすぐにそれが魔獣だと気付いた。
『ゴケェ~~!(コッコエッジ!)』
襲いかかる蔓を、僕は両翼で斬っていった。
すると村の内と外、両方から悲鳴が聞こえてきた。
だけど村の中の方はすぐに悲鳴が収まった。
逆に今度は子供たちの歓声が聞こえてきた。
誰が戦っているのかは分からないけど、こっちは大丈夫そうだ。
『ビョォォォォォ!(獲物見つけたぜぇ!)』
『ゴケッ!(敵ッ!)』
少しばかり安堵した直後、空から黒い鳥の魔獣が襲いかかってきた。
僕はすぐに迎撃に出た。
『ゴケェ~~~!!(トサカビーム!!)』
僕の真紅のトサカからビームが発射された。
ビームは魔獣の頭部に命中、吹っ飛んで消えた。
わわっ!血の雨!!
鳥の魔獣が首無しのまま地面に落ちてすぐに遠くから魔獣の気配がしてきた。同時に悲鳴も聞こえてくる。
あの方角は勇者様が戦っている場所、勇者様がピンチかもしれない!
『ゴケゴケェ~~~!!(勇者様を助けに行かないと!!)』
僕の中の野生の勘が勇者様のピンチを教えてくれた。
僕は勇者様が戦っている戦場へ向かって走り出した。
『ゴケェ~~~~~~~~~~~~~~!!(待てえ~~~~~~~~~~~~!!)』
戦場に到着すると思った通り勇者様はピンチだった。
僕を襲った蔓が大勢の人達を縛っていて他の魔獣達が食べようとしている。
あれは人質って奴だ!
そうはさせない!
『ゴケェ~~~~~!!(お前達の相手は僕だ!!)』
僕は襲い掛かる蔓を避けながら天高く跳んだ。
今の僕ならあの魔獣達にだって負ける気はしない!
『ゴケッ!!(覚悟!!)』
最初の標的はあの虫っぽい魔獣だ!
『ゴケェ~~~~~!!(コッコスパイラルダイブ!!)』
魔力を全身に纏い、高速回転しながら魔獣に向かってダイブした。
そして魔獣の頭に突き刺さった!
『ギッ・・・!?(何・・・!?)』
何が起きたのか理解できないまま敵の頭は爆散した。
まずは1匹!
『ゴケェ~~~~~~!!(次の奴かかって来い!!)』
僕は残った(モグラとドラゴンの)2体の魔獣に向かって挑発した。
勇者様、今のうちにそっちの敵を倒してください!
『ゴケェ~~~~~~!!(一緒にかかって来い!!)』
『アンギャァァァァァァ!!(舐めるなニワトリめ!!)』
『ギャオォォォォォォォォォ!!(腹減ったぞぉぉぉぉぉぉ!!)』
片方は明らかに僕を食べる気満々だった。
『ゴケ!!(行く!!)』
無効から攻めてこないから僕から攻めていった。
相手はドラゴンの方だ!
『ギャォォォォォ!!(生肉ぅぅぅぅぅ!!)』
『ゴケ!!(遅い!!)』
ドラゴンも攻撃したが簡単に避けた。
今の僕なら余裕でかわせる攻撃だ。
僕は風を纏いながらドラゴンに攻撃を開始した。
『ゴケゴケェ~~~~~~!!(コッコエアロエッジ!!)』
『ギャゴッ!!(痛い!!)』
風の刃を飛ばしてドラゴンの身体を切裂いていく。
だけど致命傷にはならないようだ。
『ゴケェェェェ!!(コッコブレス!!)』
次は口から衝撃波を放ち、ドラゴンは吹っ飛んだ。
死んだかな?
『アンギャァ~~~~!!(無視すんじゃねえぞ!!)』
横からモグラの魔獣が突進してきた。
だけど僕には遅すぎる攻撃だ。
『ゴケッ!!(余裕!!)』
突進を跳んで避け、僕は空から降り注ぐ光を一ヶ所に集めた。
天の光よ!僕に力を!
『ゴケェ~~~~~~~~~!!(ソーラートサカビーーーム!!)』
太陽の力を集め、それをモグラに向かって放った。
爆発が起き、モグラは光の熱でコンガリと焼け焦げた。
『アギャァァァァ・・・・・・・ァ・・・・・・・!(無茶苦茶だぁ・・・・・ぁ・・・・・・!)』
よし、倒したぞ!
『ギャォォォォォォォォ!!(俺の昼飯ィィィィィィィ!!)』
『ゴケッ!?(生きてた!?)』
あのドラゴン、まだやられていなかったんだ。
あ、火を吐いてきた!
『ゴケェ~~~~~!!(コッコフォース!!)』
僕は避けずに炎の中に突っ込んでいった。
光の魔法が僕の体を炎から守ってくれるし力も沸いてくる!
次で終わりだ!
『ゴケェ!!(終わりだ!!)』
『ギャオッ!?(ゴハンッ!?)』
僕は金色の翼でドラゴンの首を斬りおとした。
よし!今度こそ倒したぞ!
『ゴケェ~~~~~~~!!(勝った~~~~~~!!)』
僕は勇者様に聞こえるように勝利の雄叫びを上げた。
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戦争は一応は勇者様達の勝利(?)で終わったみたいだ。
最後の方で巨大なドラゴンが勇者様の前に落ちてきたりもしたけど敵じゃないみたいだ。
『ゴケッ!ゴケゴケェ~~~!!(おい!勇者様から離れろ!!)』
敵じゃないみたいだけど何だかイラッとしたから怒鳴ってやった。
そして勇者様達がいろいろ話をしていると、不意に頭の中にあの声が聞こえてきた。
――――――選ばれし者よ、新たな力を得るのです!
鶏神様!?
その時、目の前に黒い穴が現れて勇者様の敵らしい精霊達が出てきた。
――――――さあ、精霊の力を摂り込むのです!
すると、僕の頭の中にある情報が入ってきた。
え!精霊を食べるの!?
どうやら精霊の力を食べると新しい力が手に入るらしい。
僕は迷った。このまま鶏神様の言うことをこのまま信じていいんだろうか?
魔法の力をくれたのは嬉しいけど、何だか強引な気もしてきた。
僕は精霊たちを見る。
・・・・・・ゴクリ!
精霊達を纏う力が何だか美味しそうなゴハンに見えてきた。
駄目だ、食欲に負けちゃだめだよ僕!!
――――――いいから食べろって!害はないからさ!
鶏神様?口調が変わってませんか!?
――――――え~い、まどろっこしい!!
直後、僕の体が勝手に動き出した。
『ゴケェ~~~~~~!!(僕の身体が~~~~~~~!!)』
『イヤ~~~~!食べないで~~~~~!』
『何なのこのトリ~~~~!?』
『私は美味しくない~~~~!!』
『刺さってる!爪が刺さってる!!』
『ご飯じゃないよ~~~!!』
『ゴケェ~~~~~~~!!(ごめんなさ~~~~~~い!!)』
鶏神様、何勝手に僕の身体を操ってるんですか!!
あ、でも精霊って結構美味しい♪
じゃなくて!
――――――大丈夫です。精霊達は死にません。私が保証しましょう。
また口調が変わってるよ。
この神様、本当は何者なんだろう?
その後、僕は精霊達を食っては吐き捨て、食っては吐き捨てていった。
鶏神様(?)の言った通り、精霊達の力を食べたら今までにないほどの力が沸上がってきた。
そして僕は・・・・・・
『ゴケゴッコ~~~~~~!!(力が漲る~~~~~~!!)』
僕はニワトリから精霊金色王鶏、超鶏に進化を果たした。
何だか分からないけどテンションが上がってきたぞ~~~~~!!
――――――選ばれし者よ、その力で汝の主君を・・・
――――――あれ~?そこで何やってるの~?
鶏神様(仮)の言葉を遮って聞き覚えのある声が頭に聞こえてきた。
この声って、あの巨大なドラゴンの声と同じじゃないか?
――――――シィィィ!!今大事な話をしてるんだから邪魔するなよ!!
鶏神様?
――――――鶏神?キジや鶴じゃなくてニワトリの神様~?
――――――シィィィィ!!あ、選ばれし者よ、さらばだ!!また会おう!!
――――――ねえ、何やってるのラ・・・
声はそこで終わった。
一体何だったんだ?
鶏神様が何者なのかは謎です(笑)
豆知識ですが、日本でも鶏神の民間信仰が東北南部を始めとして日本各地にあります。
あと、鶏は神様の使いとしても有名です。アマテラスやサルタヒコ&ウズメの使いが有名で、神社に鶏をよく見かけるのはその為です。