第71話 コッコくん、進化する
今日からしばらく番外編です。
リクエストを募集した結果、コッコくんのお話を書くことになりました。
「コッコっくん物語全3~4話」をお楽しみください。
僕は何所だかわからない場所で生まれた。
後になって教えてもらったけど、そこは“港町”と呼ばれる場所らしい。
そこで生まれた僕が最初に見たのはたくさんの同類たちだった。
多分、その中には僕の兄弟もいたのかもしれないけど僕には今でも分からない。
生まれてから数日間は狭い家の中でご飯を貰ってそれを食べるだけだった。
そして運命のその日、僕達はその方と運命の出会いをした。
「―――――こちらがこの前産まれたばかりの雛ですぜ!」
「ほう!ではひと箱全部買いますぞい!」
僕はご飯をくれる人から別の人に売られた。
その後、ガタゴトと揺れる家の中で僕達は不安に襲われながら揺れが止まるのをジッと待っていた。
そしてようやく揺れが止まってからしばらく経つと、僕とその方は運命の出会いをした。
「へえ、こっちのヒヨコも黄色いんだな♪」
それが僕達の恩人にして主人、勇者シロウ様との最初の出会いだった。
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勇者様は強くて優しいお方だった。
朝早く会った時はご飯をくれたし、僕達を食べようとする空の敵から何度も助けてくれた。
あと、たくさんお話もしてくれた。
その頃からかな?僕達は人間の言葉がわかるようになったし、頭も凄く良くなっていく気がしてきた。
喋ることはできなかったけど、それでも僕は勇者様のお話が理解できるようになって嬉しかった。
僕も強くなって勇者様の役に立ちたいと思った。
―――――――・・王ヨ・・・ナンジは・・・・・ナルダロウ・・・・・
地面の下から不思議な声が聞こえてきたのはそんなある日だった。
突然、僕の中に不思議な力が流れ込んできて僕の身体はどんどん大きくなっていった。
『ゴケ~~~~~~!!(うお~~~~~~!!)』
次の瞬間、僕は王様になったと悟った!
「・・・・・何だこれ?」
勇者様は何故か呆然としていた。
それもそのはず、僕の目線は勇者様と同じ位の高さになっていた。
僕だけじゃない。僕以外の同類達も大きく成長していた。
僕は直感した。
僕達は勇者様と一緒に戦う仲間になるために生まれてきたんだ。
僕は空を見上げながら誓う。僕は勇者様のお役に立てるように強くなると。
その日から僕の特訓の日々が始まった。
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兄弟の1匹が勇者様達に食べられた。
後で知ったことだけど、兄弟の最後は唐揚げだったらしい。
ある日、何の前触れもなく村長さんに首を締められて連れ去られた後に聞こえたあの断末魔を僕はきっと忘れない。
「コラ!暴れるな!」
『ゴケェ~~~!!(イヤだ~~~!!)』
僕は必死に逃げた!
みんなも必死になって逃げた!
捕まったら最後、僕達に待っているのは唐揚げの未来だけだ。
僕達は生き残る!ご飯になんかされないぞ!
僕達は日々の特訓で培った成果を発揮し、ついに唐揚げになる運命に勝った!
「しょうがねえ、こいつらは繁殖用にするか。」
「それがいいべ!今日は豚肉を加工するべ!」
「んだな!」
僕達は運命に勝ったけど、代わりにお隣の豚さん達が燻製の運命に負けてしまった。
遠くの小屋に豚くん達が連れて行かれる。
バイバイ、豚くん・・・・・・。
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僕に名前が付いた。
名前を付けてくれたのは勇者様だ。
「よ~し!お前の名前は今日からコッコくんだ!」
「コッコくんだ!」
「コッコ!コッコ!」
「強そう~!」
村の子供達も一緒になって喜んでくれた。
この日から僕は鶏の王、コッコになった!
他のみんなも名前を貰ったみたいだ!
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その日の勇者様は何だか悩み事があるようだった。
『ゴケ~~~~~~~~!(勇者様~~~~~~~!)』
「あ、コッコくん!」
僕に気付いてくれた勇者様は何時もの様に笑って答えてくれた。
「元気そうだな?」
『ゴケッ!(ハイ!)』
その後、勇者様はジッと僕の事を見つめていた。
僕に何か付いているのかな?
『ゴケ?(勇者様?)』
「・・・・・・やってみるか。」
勇者様は何もない所に指を指すと、そこに光る板みたいなものが出てきた。
その後も指を左右や上下に動かし、最後にチョンと何かを押す動作をすると突然僕の体が不思議な光に包まれていった。
その光は、勇者様が僕にくれたプレゼントの光だったんだ。
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勇者様にプレゼントを貰った日から僕の生活は戦いの日々になった。
最初の日は勇者様と一緒に近くの森で魔獣退治に出かけた。
『シャァァァァァァ!!(トリ公食われろぉぉぉ!!』
『ゴケェ!!(くらえ!!)』
『シャァォア!?(何!?)』
森には僕達の天敵の蛇野郎もいた。
たまに村に現れる蛇野郎は僕の仲間のテリヤキちゃんやモモちゃん達の産んだ卵を狙ってくる。
その度に追い返してやったけど、二度と来ないように僕が退治してやる!
『ゴケッ!!(止めだ!!)』
『シャァァァァァァァ・・・・!!(ギャァァァァァァ・・・・!!)』
やった!1人(?)で倒した!
後ろで見ていた勇者様も喜んでくれている!
よし!もっと魔獣を退治して勇者様に喜んでもらおう!
その後、僕はどんどん魔獣を倒していった。
『アオ、アォォォォォン!?(な、何だこいつは!?)』
『ゴケェ~~~!!(覚悟~~~!!)』
今は亡き豚さん達の天敵の狼野郎達も倒した。
『ブゥォォォォォォォ!!(俺は止められないぜぇぇぇ!!)』
『ゴケッ!(ジャンプ!)』
突進ばかりしてくるイノシシ野郎も倒した。
『ガオォォォォォ!!(餌ダァァァァァァ!!)』
食欲旺盛な熊野郎も倒してやった。
気づいたら、僕は勇者様よりも大きくなっていた。
力も凄く漲ってくる!
『ゴケッ!!(僕強い!!)』
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勇者様がいない日もコッソリ村を抜け出して魔獣退治をするようになったある日のこと、頑張りすぎて疲れた僕は鶏舎の中で熟睡していると、夢の中で不思議な声が聞こえてきた。
――――――選ばれし者よ・・・・・・
(・・・誰?)
――――――選ばれし者よ・・・我が名は鶏神、汝の時を見届けさせてもらった。久しく見る純なる心を賞し、汝に“智”と“力”を授けよう。
(・・・?)
――――――ククク・・・すぐに分かる。次に会う時まで、それを使いこなせるよう精進するがよい・・・・・。
(え、ちょっ・・・!?)
――――――近い日に、悪しき者が汝らの暮らす地に現れる・・・異世界より喚ばれし勇者を・・・けられるかは汝・・・だ・・・。
(待って!何を言ってるの!?)
不思議な声はそれを最後に聞こえなくなった。
そして夢から目覚めると、僕は魔法が使えるようになっていた。
あの声、地面の下から聞こえてきた声とは全然違う声だったな・・・。
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鶏神様、僕に魔法と知識を与えてくださってありがとうございます。
お陰で僕はすぐに魔法が使えるようになれたし、人間の言葉の読み書きができるようにもなりました。今まで意味が分からなかった単語の意味も理解できるようにもなりました。
僕はあなたに凄く感謝しています。
だけど、だけど・・・!!
『ゴケェ~~~!(コッコトルネード!)』
「うわぁぁぁぁぁ!!」
『ゴケェ~~!(コッコシャイニング!)』
「ぐわっ!?」
何でこんな魔法ばかりなんですか!?
思わず喧嘩を売ってきた甲冑1さんを不満の吐け口にしちゃったじゃないですか!
『ゴケ~~~~~~~~~!!(鶏神様のバカァ~~~~~!!)』
普通に“トルネード”や“シャイニング”でいいじゃないですか!
僕は凄く恥ずかしいです!
「・・・何があったんだ?」
「さあな?」
あ、勇者様に見られた!
は、恥ずかしい!!
コッコくんの1人称は「僕」でした。
とりあえず、今までのお話をコッコくんサイドで振り返ってみました。