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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
戦争編Ⅲ-ファル村大決戦の章-
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第67話 ボーナス屋、村に戻る

 お蔭様でボーナス屋は大変なことになってしまいました。

 何分、未熟な作者が書く文章なので表現が下手だったり違和感を与えてしまうかもしれませんが楽しんで読んでもらえると幸いです。

――ファル村――


 帝国勢とか王国勢とかへの対応はステラちゃん達に一任して俺は村の方に戻ってきた。


 ちなみに、逃げたブラスやダニール達と関わりのある帝国騎士団長(ザック)王国将軍(バート)は念入りに無力化した上でヴァール騎士団が拘束してくれている。


 後で尋問とかする予定だけど、ブラス達に見捨てられているから大した情報は持ってなさそうだ。


 それよりも問題なのはまったく事情が飲めていない帝国や王国、そして公国の連中だ。


 ブラスが去り際に言ったあの言葉、「ここにいる全員が戦死した」がかなりの動揺を生んでしまった。


 最初は近くにいた人にしか聞こえていなかったが、悪い話はどの世界でもあっという間に広がっていき、みんな今後の自分の行く末に不安を抱きまくっていった。


 今はステラちゃんとか・・・・あとバカ皇子が全員の前に立って事情説明を行っている。



「・・・ぶっちゃけ、このまま村の住民にするしかないんじゃないか?」



 なんて呟きつつ、俺は妙に人だかりのある村の広場にやってきた。


 よく見ると、村のあちらこちらに穴が空いている。



「あ、勇者様!!」


「シロウさん!!」



 アンナちゃんとケビンが俺に気付いてやってきた。



「戦いは終わったんですね!」


「ああ、敵の親玉には逃げられたけどな。それより何の騒ぎだ?それとあっちこっちに穴が空いてるけど?」


「え~と、穴は魔獣が襲ってきた時に・・・」


「魔獣が出たのか!?」



 あいつら、ダニールの奴だな!


 戦場以外にも魔獣を放っていたのか!



「うん。けど、魔獣は村長さんや僕達ですぐに倒したから誰もケガはしてません。」


「そうか、それは良かった。」



 まあ、その為にヒューゴ達には村長と一緒に村の防衛を任せていたんだけどな。



「穴の方は分かったけど、この騒ぎはどうしたんだ?穴に誰か落ちたのか?」


「いえ、誰も落ちなかったんですけど・・・・・・。」


「落ちなかったけど何かあったのか?」


「それが・・・変な石が出てきたんです。」


「変な石?」



 “石”というキーワードを聞いた俺はついさっき聞いたばかりの話を頭に思い浮かべた。


 いやいや、まさかそんな都合よく出てこないって!



「宝石みたいに綺麗な石なんですけど、触ると喋るんです。」


「喋る!?」



 確定―――――――――!!


 信じられないけど絶対あの石だ!


 もっと大変な場所にあると思ってたのに、呆気なく出てきたよ!



「とにかく俺にも見せてくれ!」


「はい!」


「こっち!」



 俺は2人と一緒に人垣を抜けた。


 するとそこには何本もの石柱に囲まれた古い台座があった。


 台座の上にはほのかに光る紅い直方体の石が置かれていた。


 サイズは広○苑と同じくらいだ。


 まずは《鑑定》でチェックだ!



【謎の紅く輝く石】

【分類】聖石?

【品質】高品質

【詳細】製作者も素材も不明な石。

 魔獣のオーラを吸収して一部の能力が覚醒している。

 近くにいる生物の成長を促進させる。

 特定の資質を持つ人間が踏むと奇妙な声を上げる。

 1人1日1回、触れるとその人の未来を大雑把に教えてくれる。



 間違いないな。


 これはブラス達が探していた『至宝』の1つ、『戴冠石(リア・ファル)』だ!


 あいつら、目的の物がすぐそこに出てきたのに気付かずに去ったのか。



「あ、シロウ!」


「勇者の兄ちゃん!」


「よう、どうしたんだコレ?」



 近くにヒューゴ達がいたので、俺は事の経緯を聞いた。


 それによると、俺達が戦場で戦っている最中にいきなり地面の下から何体もの魔獣が出てきたらしい。


 その中には戦場で兵達を拘束したあの植物型魔獣の本体も混ざっていたらしい。


 植物型魔獣はケビンが魔法で倒したそうだ。


 それ以外の魔獣、中には中位クラスのドラゴンも複数いたけどヒューゴや村長がザックザック倒していったそうだ。


 ちなみに倒した魔獣は村のおばちゃん達が戦いを終えて帰ってくるステラちゃん達への御馳走の材料になるらしく、今は別の場所でおばちゃん達がザックザック解体しているそうだ。


 想像するとなんだか怖い・・・。



「それでおばちゃん達の姿が少ないのか。その後はどうなったんだ?」


「ああ、その後村中に開いた穴を塞ごうとしたんだけどよ、マイカの奴が穴の中を探検しようと言い出してさ・・・・・・。」


「だって、何だか宝物とかありそうだなって思ったんだもん!」



 マイカ、お前がトラブルの種だったのか。


 まあ、俺も小さい頃は穴を見つけたら探検しようとか言ったりもしてたから気持ちは分からなくもない。


 けど、時と場合を考えたらどうだ?



「それで?」


「そしたら他のチビ達が探検だとか宝探しだとか騒ぎ出して・・・・・・」


「仕方がないから俺の能力で宝があるか確かめて、無ければ諦めろって話になったんだ。まあ、あの時はまずは無いと思ってたんだけどな。」


「そうか、ロルフの《宝探しの秘技(トレジャーダウジング)》!」



 最近は地味に金目の物を発見するロルフの能力を使った訳か。


 この先は俺にも想像はできるな。



「それで見つかったのか。」


「ああ。」


「丁度、ここの真下にデカい反応があったんだよ。そしたらマイカ達が余計にはしゃいじまって、仕方がないから俺とジャンが穴の中に入ってみたんだけど、穴の先には大きな遺跡?みたいなのがあったんだよ。あっちこっちボロくなってたけどな。」


「けど、穴を出てすぐの所に頑丈そうな扉があって、《鑑定》で調べたら魔法具だってことが分かってさ、鍵穴も取っ手もないから魔法で壊そうとしたんだけどビクともしなかったんだよ。」


「だけど開いたんだな?」


「ああ、諦めて帰ろうとした時に、ウッカリ石に躓いた拍子でヒューゴの手が扉に触れたら呆気なく開いたんだよ。そして中に入ったらあれがあって、後はヒューゴの魔法で地上に運んだんだ。」



 なるほど、俺の推理通りならその扉は「帝国の皇族が触れると開く魔法の扉」だったんだろう。


 つまりヒューゴ達自身が扉を開く鍵だった訳だ。


 だけどそれだと少し妙だな。


 ブラス達の話だと、『至宝』の封印はそう簡単に解けるものじゃないはずだ。


 だからこそ、戦争でバカ皇子を含めた皇族をたくさん殺して無理矢理封印を解こうとしたって言っていた。


 ヒューゴが触れただけで開く程度の封印ならとっくに奴らに『至宝』が奪われているはずだ。


 考えられるとすれば、知らない内にヒューゴとジャンが封印解除の条件を満たしていたってことだ。


 その場合、ヒューゴが『至宝』に適性があったってことになる。


 まあ、これは後でみんなにも相談してみればいいか。



「話は分かった。それで、地上に運んだ後はどうしたんだ?」


「それは私が説明します。2人が運んできたあの台座と紅い石を見たら村の人達も騒ぎ始めて、特に小さい子供達がはしゃいじゃって・・・私の注意も聞かないで紅い石に集まって触りだしたんです。そうしたら、紅い石からいきなり声が聞こえてきたんです。」



 石から声が聞こえてくる。


 ホラーにも聞こえる現象だけどマイカ達は逆だったらしい。


 余計興奮してペタペタと触りだしてオモチャにしたそうだ。


 それを見たアンナちゃんやヒューゴは《鑑定》で調べ、石から聞こえる声が予言だと気付いたそうだ。


 ちなみに、1人1回までだと知ると先に触ったチビッ子達は早々に飽きて銀耀に乗ってどっかに行ったらしい。


 その後は他の村人達も興味本位で触ったりして予言を聞いたりして楽しんでいたらしい。


 それでこの人だかりか。



「そういえば銀耀達は何所に行ったんだ?俺より先に戻っていたはずだろ?」


「あ、そうそう!」



 ヒューゴは重要な事を思い出したかのように声を上げた。



「さっき、銀耀に似たデカい龍が一緒にやってきたら人間に変身して「弁当パ~ティ~だ~♪」とか言ってあっちに行ったぜ!」



 そう言って指差したのは俺達の家がある方向だった。


 あいつら、他人の家を荒したりしてないよな?


 そういえばチビ皇子(ルドルフ)も銀耀に乗ってたけど、今も一緒なのか?


 変なのが伝染しなければいいけど。



「アイツは銀耀の兄さんだからたぶん大丈夫だろ。」


「やっぱ兄弟なのか。」



 しかも龍王なんだけどな。


 まあ、そっちの説明は後ですればいいか。



「それで、お前らはあの石に触ったのか?」


「いえ、私は勇者様にお知らせするのが先だと思ったのでまだ触っていません。」


「俺とケビンもだ。お前らが来るまで村の警備をしてたからな。つーか、村の爺さん婆さんが邪魔で近づけねえって!」


「・・・確かに。」



 石の方を見れば好奇心に動かされた爺さん婆さんが列を成している。


 きっと占い感覚で触ってるんだろうな。



『――――――ムスコ・・ガ・・・カエッテ・・クル――――――』


「おお・・・!!」


「お爺さん・・・!!」


『――――――マゴ・・・ヨメヲ・・・ツレテクル―――――――』


「何!?儂のバカ孫がか!?」



 なんだか喜んでる人が多いな。


 嬉しい予言だけを告げるのか?


 あれでまだ不完全なんだから、完全に覚醒したらどうなるか予想できないな。


 そうだ、少し試してみるか?



「ヒューゴ、ちょっと試したい事があるんだけどいいか?」


「何だ?」


「それは・・・・ゴニョゴヨ・・・!」


「は?何の意味があるんだ?」



 俺は小声でヒューゴに“あること”をするように頼んだ。


 それを聞いたヒューゴは一瞬意味が解らないという顔をしたが、渋々肯いてくれた。


 そして俺とヒューゴは紅い石の置いてある台座の方に向かった。



「あ、勇者様!戦いは終わったのですか?」


「まあな!とりあえずは誰も死なずに終わったぜ。もう少ししたらステラちゃん達が大勢を連れて来るから、予定通り炊き出しの方の手伝いを・・・・」


「おお!流石勇者様ですな!」


「ご苦労様ですぞい!」


「炊き出しの方はお任せくださいですじゃ!」



 ようやく俺の存在に気付いた村の皆さんは戦いが終わった事を知って歓声を上げた。


 というか、村の外で流血沙汰が起きているのを知ってたのに随分と余裕だよな。


 むしろ逞し過ぎる気がする。


 さっきまで魔獣が襲ってたのも嘘のようにみんな明るい。


 前々から思ってたけど、やっぱりこの村の住民は絶対何かあるとしか思えない。



「それで、ちょっとこの石を見せてもらっていいか?」


「どうぞどうぞ!」


「勇者様も予言を?」


「いや、ちょっと試したい事があってな。ヒューゴ、頼む!」


「・・・ホントに何の意味があるんだ?」


「いいからいいから♪」



 紅い石を前に、まだ少し渋っていた。


 だけど何とか納得してもらい、ヒューゴはナイフで指を切ると自分の血を数滴ほど紅い石に零した。


 すると、変化はすぐに現れた。



『オ―――――――――――――――――――――――――――ン!!』


「な、何だ!?」


「やっぱりな!」



 ヒューゴの血を受けた紅い石は俺の剣の時と同じように強い光を放った。


 どこか神々しいその光に、俺も思わず見惚れてしまった。


 あ、婆さん達が拝み始めた!



「な、何なんだ・・・!?」


「落ち着けって!お前の血に反応して石の力が目覚めたんだよ!」


「???」



 ああ、やっぱ先に説明してからの方が良かったかな。


 お!ようやく光が収まったな。


 形は直方体から角柱にになり、表面には不思議な模様が刻まれている。


 というか、少し大きくなったな。



「じゃあ、《鑑定》でチェック♪」



戴冠石(リア・ファル)

【分類】聖石(神器)

【品質】最高品質

【詳細】ダーナ神族に伝わる『四至宝』の1つである。

 別名「運命の石」とも呼ばれ、様々な不思議な力を持っている。

 封印から完全に覚醒しておらず、能力はまだ不完全な状態である。

 近くにいる生物の成長を促進させる。

 王の資質を持つ人間が踏むと奇妙な声を上げる。

 1人1日1回だけ、触れるとその人の近い未来を教えてくれる。

 この石がある土地は聖なる力に護られ、邪悪な力を退けてくれる。

 この石に突き刺す事が出来た武器に加護を与えてくれる。



 思った通りの結果が出たな。


 これが帝国に封印された『四至宝』の覚醒(仮)の姿か。


 俺のクラウ・ソラスと一緒でまだ完全には覚醒しきっていないようだな。



「勇者様、これは一体!?」


「おい、どういう事か説明しろよ!」


「ああ、今から説明するから落ち着けって!」



 石の突然の変化と鑑定情報に戸惑いを隠せないアンナちゃんやヒューゴ達は俺に詰め寄ってきた。


 そろそろ昼時だし、とりあえずは飯でも食いながら話した方がいいよな。


 もうすぐしたらステラちゃんやバカ皇子達が大勢を引き連れて戻ってくるだろうし、今日のランチは何時にもまして賑やかになるな。



「じゃあ、昼飯を食いながら説明するから準備をしようぜ♪」


「おい、誤魔化そうとしてないよな?隠し事は・・・・うっ!」


「どうし・・・・・うわっ!?」



 突然、俺達の鼻に強烈な異臭が流れてきた。


 周りを見れば、村の皆さんも異臭に耐え切れずに手で鼻を塞いでいる。


 何が起きたんだ。


 まさか、早くも敵の毒ガス攻撃か・・・・・!?







 『至宝』、呆気なく見つかりました。

 尋問回でブラスが話した通り封印解除には色々条件があります。ヒューゴはその条件を全て満たしていたので簡単に見つけることができたのです。何が条件だったのかはいずれ判明します。


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