第65話 ボーナス屋、黒幕を尋問する
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『兄上~~~!』
『銀耀~!はい、忘れ物~!』
『わ~!父上特製弁当だ~~!』
なんだかんだで戦闘が集結した戦場に銀耀が龍の姿でやってきた。
銀洸と比べるとかなり可愛いサイズだが、それでも軽く全長50mはある。
後で知ったことだけど、コイツらの一族は基本的に図体がデカイらしい。
今は隠居して神様やっているコイツらの爺さんに至っては全長100kmはあるらしい。
デカ過ぎだろ!
「わ~~~!ギンヨウの兄ちゃんでか~~~!」
「大きい~~~~~~!!」
「ちゃか~~~い!」
「銀耀のお兄さんこんにちは~~!」
よく見れば銀耀の背中にはチビッ子達が大勢乗っている。
って、チビ皇子も乗っていなかったか!?
まあ、とりあえずあいつらは放置しておこう。
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「――――――――さて、聞きたい事は山ほどあるが、まずはお前達の目的から聞かせて貰おうか?」
ステラちゃんは何重にも拘束されているダニール達を睨みつけながら尋問を開始していた。
周りには兵達が厳重にダニール達を見張っている。
あの後、気絶しながらペッタンコになっていたダニール達を装備品を奪った上でで拘束、ブラスは再度〈強制オールリセット〉で魔法を使えないようにした。
「・・・・・・。」
「・・・訊けば話してくれるとでも思ってるのか?」
だが、ダニール達は思いの外余裕だった。
まさか、他にも仲間が近くにいるって言うんじゃないよな?
「私も簡単に話してもらえるとは思ってはいない。本心を言えば我らの祖国に仇なすお前達の首をこの場で切り捨てたい。だが、それで事が片付くとは私も思ってはいない。」
「へえ、暴れん坊王女は随分と賢明な判断もできるようだな?」
「貴様~~!」
ステラちゃんはダニールの胸倉を掴んだ。
そこまで気にしていたのか?
すると、ブラスが溜息を吐きながら口を開いた。
「ハア・・・ダニール、あまり相手を挑発するな。」
「――――――ブラス?」
「第二王女殿下、勝者に対する礼儀として殿下達の質問にお答えしましょう。ただし、我々が話せる範囲でよければですが・・・。」
「おい、良いのか!?」
「・・・問題ない。」
「フゥ、フゥ・・・そうか、では訊こうか。お前達の目的は何だ?国を乗っ取ることか?」
ステラちゃんは息を落ち着かせながらブラスに質問していった。
なんかダニールとアイアスが舌打ちしてるけど無視だ。
「どうやら少しばかり勘違いされているようだが、私達のここでの目的は国の乗っ取りでもなければ大量虐殺でもない。それはあくまで手段と経緯でしかない。」
「なら、何なのだ!?」
「・・・大羽士郎、お前はもう分かっているのだろう?」
不意にその場の視線が俺に集中した。
まあ、確かにさっきの会話で大体予想はできているけどな。
ダニールも思いっきり欲しがってたし。
「俺の持っている剣、だろ?」
「シロウの持っている剣、だと!?確かにダニールがしつこく欲しがっていたが・・・。」
ステラちゃんはすぐに理解できなかったのか、目をパチパチさせながら俺の腰に提げている謎の剣に視線を向けた。
まあ、剣1本の為に陰謀を巡らせているなんて言われてもすぐには理解できないだろうな?
「フッ、すぐには理解できないだろうな。《鑑定》は全員使えるのだろう?なら、その剣に使って調べてみろ。」
ブラスは不敵な笑みを浮かべている。
そういえばパワーアップしてからまだ《鑑定》を使ってなかったな。
見てみるか。
【光の魔剣】
【分類】魔法剣(神器)
【品質】最高品質
【詳細】ダーナ神族の王、銀腕神ヌアザが持っていた魔剣。
ダーナ神族に伝わる『四至宝』の1つである。
刀身から放たれる光は隠れた敵も逃さず追尾し、いかなる者も回避する事は出来ない。
封印から完全に覚醒しておらず、能力はまだ不完全な状態である。
持っていると使用者の身体能力が中上昇する。
回復力が中上昇する。
全状態異常に対する耐性が大上昇する。
攻撃に《浄化》の効果が付与される。
魔法の効果が中上昇する。
魔法の消費魔力が半減する。
光属性が使えるようになる。
空属性が使えるようになる。
火属性が使えるようになる。
おいおい、とんでもなくチートアイテムじゃないか!
というか、この名前知ってるよ!
ゲームや漫画で何度も聞いたことあるよ!
しかもこれだけの効果でまだ不完全だと!?
完全だとどれだけ凄いんだ!?
「スゲエ・・・・・・・!」
「理解できたか?どういう経緯で手に入れたかは知らないが、お前の持つ魔剣クラウ・ソラスを始めとする『四至宝』の回収が私達の目的だ。戦争はその為の手段の1つでしかない。」
「し、信じられない!これは王国に遥か昔から伝えられている伝説の剣・・・・・・!?」
俺だけじゃなくステラちゃん達もビックリしている。
「ステラちゃんも知ってるのか?」
「あ、ああ!フィンジアス王国に住む者なら必ず知っていると言っても過言ではないほど有名な剣だ。私の祖先、つまりフィンジアス王家の始祖が神から授かり、様々な歴史を経て王国の何所かに封印されたと言われている。今では王国でも最もポピュラーな昔話として幼い子供も知っている。まさか、これがその剣だとは・・・・。」
「封印って、普通に武器屋の売れ残りになってたぞ?」
「――――――――何!?」
「売れ残り!?」
俺の言葉にダニールとアイアスが声を上げた。
相当ショックだったのか、金魚みたいに口をパクパクさせている。
まあ、伝説の武器が武器屋で売れ残りになってるとは思わないだろう。
一方、ブラスは俺の話を聞いていろいろ理解できたような顔をした。
「・・・なるほど、私が来るより前に既に封印は解かれていたか。今までの裏工作の多くが無駄になってしまったな。ハハハ、これは愉快な話だ。」
ブラスはこの上なく痛快な気分と言いたげな顔をしながら笑い始めた。
おい、勝手に納得するな!
「チッ!これだと他のも・・・・・!」
「かも知れないが、全てではないだろう。封印された事は伝承として各国に残っている以上、私達がこの世界に来るより前に封印を解かれている可能性は最初からあった。ファリアスの『至宝』の封印が確認されたことで、他のも封印されていると事を前提に我らは各国で動いただけだ。ゴリアスとムリアスはまだ不明だが、少なくともファリアスの『至宝』はまだ封印されているのは間違いない。だからこそ、我らは最初の目標としてこの国を狙ったのだろう?」
「確かにな・・・。」
おい、だから勝手に話を進めるなよ!
だが、これで大体の事情は見えてきたな。
こいつら『創世の蛇』は、この世界に封印されている『四至宝』を手に入れる為に暗躍していた。
話の流れから察すると、ダーナ大陸の四大国に1つずつ『至宝』が封印されていて、そのうち封印が確認されているのが帝国にある『至宝』だけっとことだ。
そして、俺が持っている謎の剣こと『クラウ・ソラス』は王国に封印されていた筈の『至宝』だったってことだ。
けど、封印ってそんな簡単に解けるものなのか?
こういうのって大概、生贄とか特別な鍵が必要なのが定番なんだよな。
あ、もしかして!
「なあ、もしかして『四至宝』の封印を解くのって、各国の王族とかが必要なのか?例えば血とか?」
「ほう、何故そう思う?」
「何故って、俺の剣がさっきパワーアップしたのはステラちゃんの血が剣に零れた直後だし、お前ら皇族とかを襲ったりしてただろ?」
「フッ―――――――――!」
ブラスの奴、更に機嫌が良くなってるな?
これって正解でいいんだよな?
「確かにお前の言うとおり、『四至宝』の封印を解くのには四大国の王家や皇家、大公家の直系の人間の血が必要だ。」
「・・・何だと?」
あ、ステラちゃんショックから復活したな。
「正確にはその中でも『至宝』に対する適性や扱うだけの能力のある者でなければ封印を解く事は出来ない。まあ、仲間の推測では適性が無くても血をひいている複数の人間の血を大量に使えば力ずくで封印を解く事が出来る可能性もあった。」
「なるほどな、それでここにバカ皇子達を集めて殺そうとしたのか。」
「シロウ、どういうことだ?」
「ステラちゃん、多分、帝国の『至宝』が封印されている場所ってファル村だぜ?」
「何!?」
「フフ、気付いたか?」
ステラちゃんが驚く一方で、ブラスは感心したように笑みを浮かべていった。
だってさあ、いくらなんでも皇族とかが一ヶ所に集まりすぎだろ?
バカ皇子やバカ皇子2&3、バカ皇女に人質にされていた皇子2人、それ以外にも村には皇帝の落胤がたくさんいるんだからそう思わない方が可笑しいだろ?
今思えば、ロビンくんがバカ皇子と一緒にダニールに嵌められたのもこれが理由だったんだろうな。
まあ、ヒューゴ達まで村に来たのは奴らにも想定外かもしれないが。
「お前の言うとおり、今ではただの農村になっているが、この一帯の土地にはかつて都市があり、そこに『至宝』の1つが封印されている。本来の計画では今回の戦闘で多くのファリアス皇族の血を流す事で封印が解けるかを試す実験だったが、見ての通り試す前に止められてしまったがな。」
「貴様・・・!」
ステラちゃんは拳を震わせながらブラス達を睨んだ。
今にも殴り飛ばしそうだが無理もないよな。
今の話の通りなら、奴らは王国でも同じ事をしようとしていたってことになる。
つまり、ステラちゃんの兄弟を血祭りに・・・・・・。
これは怒るなと言う方が無理だよな。
「ちなみに、ここに封印されている『至宝』は何なんだ?」
「ブラス、これ以上は話すな!」
「問題ない。知ったところで封印は適性者でなければ解く事はできないし、そもそも今の奴らには宝の持ち腐れでしかない。」
「それで何て言うんだ?」
「ああ、ファリアス帝国に封印されている『四至宝』は『戴冠石』、王を選定し、予言を与える聖石だ。」
リア・ファルか。
これもどっかで聞いたことのある名前だな。
王様を選ぶ石か・・・。
後継者候補が腐るほどいる今の帝国にこそ必要なアイテムだな。
「さて、他に質問は?」
「お前達に他に仲間はいるのか?」
「愚問だな。」
答えたのはブラスではなくアイアスだった。
アイアスはステラちゃんを鼻で笑いながら話していった。
「ムリアスに俺、ファリアスにダニール、フィンジアスにブラスがそれぞれ潜入している以上、残るゴリアスにも誰かがいるのは簡単に想像できることだと思わないか?」
「何だと・・・?」
挑発するような言い方に、ステラちゃんはまたキレそうだ。
周りを見たら兵士達も気が気でいられない様子だ。
「ああ、そういえばもうすぐ帝国の第三皇子がゴリアスに行くそうだが、何も起きなければいいな?」
「「―――――――!」」
フラグ立った!
そして舞台はゴリアス国へ・・・か?
「貴様達、ゴリアスでいっ・・・」
「残念だが時間切れだ。」
ステラちゃんが問い詰めるよりも先に、ブラスが口を開いてステラちゃんの声を遮った。
時間切れだって?
「第二王女殿下、中途半端なところで申し訳ないが、質問の続きはまた別の機会にしてもらおうか。」
「何だと?」
「あ!」
直後、ブラス達の体が光り始めた。
これって、転移の・・・!
「万が一の可能性に備え、一定条件を満たすと私の意志に関係なく《転移》が発動するようになっている。作戦前に仕掛けたトラップだが、大羽士郎、どうやらお前の能力の影響は受けなかったらしい。」
魔法具以外にもそんな切り札があったのかよ!
なんて考えている間にもブラス達の姿は消えかかっていく!
精霊ズの時みたいに銀洸に・・・
『今日のデザートは~、ケイジャーダだよ~~~~♪』
『わ~い♪』
ダメじゃん!!
ケイジャーダって何だよ!?
「ああ、言い忘れた事だが――――――――――」
完全に転移する直前、ブラスは今思い出したかのように俺達に何かを言い始めた。
ああ、今度こそ逃げられたな。
「ムリアスの一団も含め、ここにいる全員は戦死したと、既に各国の首都に通達してある。私達が居なくなった後も、手駒にしていた貴族達が勝手に陰謀を進めていく事だろう。」
「え、またかよ!」
「そういうことだ。精々頑張る事だな!」
「その魔剣、いずれまた別の機会に回収する事になるだろう。その時まで――――に預け――――う。」
そしてブラス達の姿は逃げられた。
くっそ~、折角倒したと思ったのに、フラグだけ置いていきやがって!
というか、この人数全員を死亡扱いにしたって、どうやったらそんな事できるんだ!?
幾らなんでも無理があるだろ!
「クッ・・・・逃げられたか!」
「ステラちゃん、とりあえずこの後はどうするんだ?」
「あ、ああ、そうだな!まずは負傷者を治療し、全員を集めて事情を説明しなければいけないな。この状況だ。兄上もさすがに私の話を聞いてくれるだろう。」
「駄々をこねそうだな?」
「それは・・・・まあ、私が何とかしよう。」
あ、ステラちゃん、今一瞬視線を逸らしたろ!
俺はちゃんと見てたぞ!
「じゃあ、俺も・・・・・」
俺はある方向に視線を向けた。
そこには、ムリアスの騎士団たちと一緒に・・・・・・
『ゴケェ~~~~~!!』
「うわっ!や、やめて―――――――!!??」
「痛い痛い痛い・・・!!」
何故か激怒しているコッコくんに食われかけている捨駒勇者達がいた。
・・・何やってんだ?
四至宝は別名「エリンの秘宝」とも呼ばれています。
クラウ・ソラスは光の剣とされていますが、詳細を記された記録は少ないので創作の可能性も高いそうです。
銀耀のお弁当のデザート「ケイジャーダ」はポルトガルの伝統的な焼き菓子で、チーズタルトみたいなものです。
追記:活動報告にも書きましたが、番外編のリクエストを募集しています。主人公と黒幕以外の登場人物の話を何本か書く予定なのでリクエストをする際は「~~の話が読みたい」といった形でお願いします。