第59話 ボーナス屋、敵勇者に勝つ
「弟よ、共に敵勇者を葬るぞ!」
「いいから前を向いてください!!」
バカ皇子がロビンくんの隣を走りながら何か言ってる。
いつも通りの光景に笑みが零れる・・・じゃない!
俺達は前方から迫ってくる勇者率いるムリアスの騎士団に突撃して行った。
「調子に乗るな!《雷霆波》!!」
「ウォォォォォォ!!」
「迷わず突っ込め―――――――!!」
「クソッ!どんな汚い手を使ってやがるんだ!?」
あくまで相手が強いとは認めない男勇者2は懲りずに攻撃を続けてくる。
確かにその辺に倒れている帝国兵や王国兵には驚異的な威力だけど、ドラゴンと戦って鍛えている俺達には防げない攻撃じゃない。
少なくとも、あの男勇者2は俺達でも勝てる相手だ。
【名前】滝嶋 豪樹
【年齢】17 【種族】人間
【職業】高校生(2年) 【クラス】傀儡勇者
【属性】メイン:風 雷 サブ:土 木 水
【魔力】592,000/860,000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv3) 補助魔法(Lv1) 風術(Lv3) 雷術(Lv3) 武術(Lv3)
【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv1) 風属性耐性(Lv2) 雷属性耐性(Lv2) 麻痺無効化 毒無効化 習得能力向上 回復力上昇 異世界言語翻訳 能力強制強化
ステータスを見たら『傀儡勇者』とクラスの欄に載っていた。
どうやらコイツも今回の黒幕に利用されているみたいだな。
迫ってくる他の勇者のステータスも確認したけど、他の3人も同じ『傀儡勇者』となってた。
しかもなんだかドーピングされてるっぽいな?
「豪樹、次は僕がやるから!」
「諭!こいつら何か卑怯な力を使っているぞ!」
「うん!けど、防げない攻撃なら通用するはずだよ!行け、《群れる炎狼》!」
男勇者1の周囲から炎でできた狼が数十匹、いや、百匹以上現れて襲ってきた。
まるで生きているように動くそれには防御隊も対応できないようだ。
なら、あの手だ!
「火に戻れ!」
「え!?」
《火術》で狼の群を全部火に戻したぜ!
召喚された日の初戦闘でフィリスの水魔法を水にしたのと同じ要領だ。
「また汚い手を!」
「な訳ないだろう!」
俺は一気に加速して前に飛び出した。
とりあえず、気絶させてから拘束しよう。
「降参しろ!」
「僕は悪に負けない!《烈火の神罰》!」
「うわっ!《グラビティブラスト》!!」
「うわあ~~~!?」
あ、しまった!
津波みたいな炎を出されたから思わず反撃しちゃった。
「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」
なんだか予想以上に吹っ飛んだな。
男勇者1が放った魔法だけじゃなく、男勇者1と後ろにいた騎士達も吹っ飛んだ!
あれ?
思ったより楽勝か・・・?
あ、男勇者1達に吹っ飛ばした火が・・・消えた?
「ハァ・・ハァ・・・ありがとう、ゆかり。」
「うん。精霊よ、傷つきし者を癒したまえ。」
何だあれ?
女勇者の頭上に人魚みたいなのがいるぞ?
あれが精霊なのか?
「クソォォォォ!何で1人も倒れないんだよ!?《裁きの蒼雷》!!」
「ハハハハ!あの地獄の日々の成果を見るがいい!《ライトニングブラスト》!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一方、バカ皇子は期待以上に大活躍中!
男勇者1を圧倒してるじゃないか!
これでバカじゃなければな・・・・。
「何だこいつ等は!?つ、強すぎる!!」
「奴等の装備、ミスリル製やオリハルコン製も混ざって・・・ぐはっ!!」
「は、話が違う!勇者様、助け・・・うわあ!!」
他のみんなも勝っているようだ。
それにしても、無料ガチャの景品のレア装備各種、大活躍だな?
敵の騎士団が次々に地面に沈んだり宙を舞ったりしている。
「―――――――ハッ!」
「な、また消えたぞ!?」
「うわぁ!!」
ロビンくんも瞬間移動を駆使して敵の数をどんどん減らしている。
チームステラちゃんの方は言うに及ばずだ。
しっかり連携を取って敵を無力化していっている。
「――――――――――《氷結の矢》!」
「うおっ!?」
っと、戦闘中に余所見は命とりだった!
って、足が地面ごと凍ってる~~~~!!
「よくも豪樹と諭に酷い事をしてくれましたわね!」
「いや、お前らのしてきた事の方がよっぽど酷いだろ?」
「黙りなさい!私達は勇者です!勇者に逆らう者は悪と決まっているのです!」
「無茶苦茶な理論だな。お前ら、勇者と言うよりは暴君に近いぜ?」
「それはあなた達です!世界を救おうとしている私達の言葉を無視して自分勝手な戦争をするあなた達こそが暴君ですわ!!」
駄目だな。
こいつら人の話を聞く気なんか全然ないぞ。
自分達が正義だと思い込んでいる。
何をしても自分達は勇者だからで押し通すつもりだ。
「無駄話はここまでですわ!凍り付いて砕け散りなさい!《白き氷雪の千矢》!!」
女勇者2は持っていた弓から文字通り千本の矢を放った。
このままだと俺だけじゃなく他のみんなも氷漬けだ。
仕方ない!
「《爆発》×5!!」
「え!?キャア~~~~~~~!!」
爆発魔法で女勇者2ごと全部吹っ飛ばしてやった。
一気に5発分放ったら凄い威力になったな。
次は精霊使いの女勇者1だ!
「酷い酷い酷い・・・・・私達は良い事をしているのに・・・世界を救おうとしているのに・・・・酷い酷い酷い・・・許さない・・・・悪い奴は絶対に許さない・・・・!」
「・・・・・・・。」
仲間が次々にやられていって何だか病んでいるな。
「精霊達よ、私達の正義を汚す悪を倒すために力を貸して!!」
「・・・・何だありゃ?」
今、戦場の上空にはたくさんの精霊が出現した。
さっきからいる人魚みたいな水色の髪の精霊、両腕が鳥の羽みたいになっている金髪の精霊、毛皮を纏った黒い髪の精霊、全身にバラや茨が絡みついている緑色の髪の精霊、白いドレスを着た全身光ってる白髪の精霊の5体だ。
『あらあら、私達を全員同時に呼ぶなんて契約した日以来ね?』
金髪の(たぶん)風の精霊が面白そうに地上を見下ろしている。
『フフフ、どうやらピンチみたいなのよ?』
水の精霊も困ったフリをしながら答えた。
『ダル~~イ、めんどくさいからあなた達だけでやって~~~~!』
黒髪の(たぶん)土の精霊があからさまに怠そうな格好でボヤいている。
『それより男いないの男~~~?イケメンじゃなくていいからできるだけ童顔の可愛い男はいないの~~?』
緑の髪の(たぶん)木の精霊は戦場にいる男を見ている。
『ねえ、どうでもいいから適当に仕事して帰りたいんだけど~~~?』
白髪の(たぶん)光の精霊は半目で凄くめんどくさそうにしている。
こんなのが精霊なのか?
「おお!勇者様が精霊様を召喚したぞ!」
「ハハハ!帝国や王国の愚か者どもに目に物見せてくれるぞ!!」
おいおい、何だかムリアスの連中が元気になったな。
こいつら、精霊の声が聞こえてないのか?
別の意味で危険そうな精霊ばかりじゃないか!
「―――――――ゆかり、僕も一緒に戦うよ!」
「諭くん!もう大丈夫なの!?」
「まだ痛いけどね。けど、勇者が悪に負けたら世界は終わりだよ!」
男勇者1が復活した。
女勇者1とラブな空気を作ってる。
あ、男勇者1が腰から変な剣を抜いた。
「勇者の剣よ!悪しき敵を討ち滅ぼすために僕に力を与えたまえ!!」
「精霊達よ、罪深き者達に正義の鉄槌を与えたまえ!!」
さっきから思ってたけど、セリフがいちいち恥ずかしいな。
中二病を疑いたくなる。
あ、剣がデカくなって炎や雷を放ってる!
俺も謎の剣で対抗だ!
「くらえ、正義の一撃!!」
「精霊達よ、お願い!!」
『ハ~イ!適当に暴れま~~~す!』
『みんな私の子犬ちゃんにしてあげるわ♪』
『ダリ~から皆殺しにするわ。』
『ちょっと、可愛い男は殺さないでよ!』
『取り合えず無差別攻撃でいいよね?』
おい、最後の精霊とんでもないこと言ったぞ!
口に出してツッコみたいけど、今は男勇者1の剣の方が先だ!
武器だから手加減無しで斬ってやる!
「――――――《雷火天空斬》!!」
「《グラビティスラッシュ》!!あれ?」
俺は全力で《グラビティスラッシュ》を出そうとしたら何だか違う技が出た。
いや、正確には土属性の一撃に他の属性が加わっていた。
魔力の感じからすると“光”と“空”か?
うわ!
剣が凄く伸びた!
バキンッ!!
「嘘だ・・・・・勇者の剣が!!」
勇者の剣は呆気なく斬れた。
・・・脆いな、勇者の剣。
それともこれが複数の属性が融合した時の威力なのか?
よく分からないけど。
『私達を無視しちゃだめよ~~~~♪」
っと、まだ精霊がいたんだった!
何だか空にでかい風や水の球体がある。
あれが直撃したらヤバそうだ。
なら、こっちには上級魔法で精霊ごと倒してやる。
魔力全開放だ!
『え・・・ちょっとこの魔力!?』
『嘘!こんな強い魔力って・・・・・・!?』
『―――――――――――――私先に帰る。』
『『逃げるな!!』
「くらえ!《深緑の螺旋》!!」
戦場に巨大な緑色の竜巻が一本出現した。
ファルの森で盗賊退治した時とは違うチート版の《フォレストトルネード》だ。
って、流石にこれはデカすぎ!!
『『『『『キャァァァァァァァァァァァァァ!!!』』』』』
「ウワァァァァァァァァァァ!!!」
「「イヤァァァァァァァァァァァァ!!」」
精霊どころか勇者達も飲み込んで空に飛ばしてしまった。
あ、騎士団の連中もだ!!
「「うわぁぁぁぁぁ!!??」」
「か、神様~~~~~~~~~!!」
「勇者様~~~!助けて~~~~~!」
なんだかこれで敵を一掃できた・・・・?
味方も巻き込んでいないか確認したけど、全員無事だった。
ちなみに男勇者2の方はバカ皇子によって倒されていた。
「見たか!俺の完全勝利だ!」
「グ・・・・嘘だ・・・・・お、俺は最強の・・・は・・・ずだ!」
バカ皇子は天に剣を掲げて勝利のポーズを取っていた。
うん、強くなってもやっぱりバカ皇子だ。
その後、空から落ちてきた勇者達をみんなで手分けして《浮遊》を使って助けた。
さて、これでムリアス勢は戦う気もなくなったし、あとは黒幕側だな。
その前にバカ皇子、こっちに手を振るな!
バカ皇子活躍しました。
けどバカです。